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すずめが影響を受けた34作品

「# ふぁぼ毎に自分の世界観に影響与えた作品をバラす」というタグを見つけ、つぶやいたところ、ありがたいことに34のいいねをいただきました。(ふぁぼって懐かしいね)

 今回は自分を振り返ってみるつもりで、わたしの世界に影響したものを探してみたいと思います。

1.スピッツ

 草野さんの書く歌詞は多分、わたしが表現活動をしたいと思うこと、そのものの種になっています。言葉にこんなにも揺さぶられることがあるんだと知って衝撃だった、それも、こんなに短い言葉で。何度もノートに書きとりました。その表記がひらがななのか、漢字なのか、そんなところにまで気をつけながら。歌詞だけじゃなく、コード、メロディ、声、ジャケットからMVまですべてにおいて影響されていると思う。「影響を与えた作品」なのでどれか一曲を選ぼうと思ったのですが、不可能でした……。

2.江國香織

 好きな作家を一人だけ言え、と言われたら、迷わず江國香織さんの名前を挙げます。ひらがなの魅力を知ったのは、江國香織さんの作品から。言葉にぎゅっと心を掴まれて、目が離せなくなってしまうような、そんな体験を何度もしました。どの作品も本当に好きなのですが、あえてひとつ作品をあげるなら、「神様のボート」かな。最後の部分のあるフレーズが、自分の核にふれたのを感じました。

3.ふしぎの国のアリス(ディズニー映画)

 小さいとき、文字通り、テープが擦り切れるほど観ました。今でも観ます。ストーリーが好きなのではなくて、むしろ嫌な登場人物が多くてもどかしかったり目を逸らしたくなったりするのに、なぜか好き。世界が魅力的なのでしょうか。自分でもわからないのが不思議です。ときどき、わたしの書くものを「やさしいのにすこし棘がある」と表現したいただくことがあるのですが、それってアリスの世界に似ているのかな、と思います。

4.三四郎のオールナイトニッポン

 好きです、ラジオ。夜の隙間に入りこんでくる話し声に、安心して、わくわくして。深夜に高速道路や大きな道路を走る車にものすごく惹かれるのですが、その匂いを含んでいるのがラジオだと思います。三四郎のラジオはなかよしで、やさしいのが好き。そんでどうしようもなくくだらないの。自分が真剣でたのしければ、どんなもの作ったっていいんだよね、って思わせてくれます。

5.スヌーピー

 見た目はかわいいのに、言ってることもやってることもかわいげがない、だけどそれがかわいい。スヌーピーに、かわいい、というものをひっくり返されたのだと思います。人生は哲学だということや、自分に起きたことを客観的に見ること視点を学び、そしてそれが、登場人物を描くときの大きな鍵となっている気がします。

6.はやみねかおる「夢水清志郎シリーズ」

 小学生のとき、何度も何度も読みました。謎の真相が知りたくて夢中になって読む一回目、すべてわかっていてもはらはらしながら読める二回目。本にのめり込むきっかけになった作品であると同時に、初めて一人称というものを意識した作品でした。亜衣ちゃんが語りかけてくる文章は、とても読みやすかった。今でも一人称で物語を書くときは、亜衣ちゃんの語り口を思い出して、初心に返っています。

7.真梨幸子

 物語の中で少しずつ狂っていく、異常な人が好きなんです。真梨幸子さんの作品は、それがものすごくリアルで、うわあと思いながらどんどん読んでいける、妙な魅力と中毒性があります。作品名を挙げるなら、「みんな邪魔」と「アルテーミスの采配」が好き。自分が書くものにも、たいてい思考回路のとんでいるずれた人が出てきます。そういう登場人物の魅力に触れたのが、真梨幸子さんの作品。

8.桐島、部活やめるってよ(映画)

 昔やっていたブログに、感想をつらつらと書いたこともありました。そこまでの衝動に駆られた映画はこれくらいかもしれない。青春群像劇、という言葉にあてはめてしまうのが怖いほどの生々しい感触が衝撃で、そんなリアルさには、たとえばスカートの丈とか、セリフの細かな言い回しとか、そういう小さなものが影響しているんだと感じました。登場人物に話をさせるときには、この映画のように生々しい言葉になるように意識しています。

9.セーラームーン

 月にこんなにも思いを馳せられるのは、彼女のせいでしょう。ひらひらのドレスに憧れるのも、長い髪が魅力に思えるのも、全部うさぎちゃんのせい。自分が素敵だと思うもの、だいたいセーラームーン由来なんじゃないかなとすら思います。きらきらステッキ。コンパクトにベル。世界観にダイレクトに影響を与えたのは、確実にこの作品です。

10.星の王子さま(河野万里子 訳)

 なんて語っていいのかわからない。星の王子さまは、紐解いてはいけない聖域のように思います。大好きな作品ですが、読んでいてなぜか苦しくなるのは、わたしが王子さまではなく、大人であるかなしみを抱く主人公に近いからなのでしょうね。子どもであったことを忘れたくない、幼かったときの世界の感触をいつまでも大切にしたい、そう強く思うようになったのは、星の王子さまから受けた大きな影響です。

11.岡野大嗣

 短歌の魅力を知ることができたのは、岡野大嗣さんの作品のおかげでした。一番すきな首は、「ここじゃない何処かへ行けばここじゃない何処かがここになるだけだろう」。(Tシャツも持ってます)こんなに短いなかに真理をつめこめるのだということ、そしてただ言葉にするだけよりも数百倍の説得力を持つということに感動しました。短歌として31文字で表現することと、小説として4万文字で表現すること。それぞれの可能性を考えさせられました。

12.映画「夜は短し歩けよ乙女」の予告編

 予告編て。笑 本編も何度も観ましたし、原作も読みました。どちらもとてもよかったのですが、でもやっぱり予告編が好きすぎる。アニメーション、色彩、セリフ。でも突出して曲がいい。アジカンの「荒野を歩け」がぴったりしすぎてて、何回みても鳥肌がたちます。それまで現実に忠実な世界観を好んでいたのが、これをみてから少し奇妙な、ずれのある世界っていいなと思うようになりました。

13.又吉直樹「火花」

 これに関しては、原作もドラマも映画もすべてがいい。特に、原作とNetflixのドラマ。お笑いというものを真剣に考え、神谷の背中を追いかけている徳永の生き方がすごく好きで、何度も何度も読み返したり、視聴したりしました。そして、どんなに熱心に夢を追いかけ続けても、終わりが訪れてしまうことの無情さ。だけどそれも含めて美しい。小説を書きたい、実らなかったとしても足掻いてみたい。そう思うきっかけになった作品でした。(余談ですが又吉さんご本人もめちゃめちゃ好きです)

14.魔女の宅急便

 自分では覚えていないのですが、本当に小さい頃に大好きで、ずっと観ていたらしいです。今になって観ると、街並みの美しさや動きの可憐さ、それから微妙に揺れ動く心理描写がたのしい。なにより、海がきれいに描かれているシーンが好き。海が見える場所に惹かれるのは、コリコの街の影響なのかもしれないと思います。掌編書いてると、やたら海が出てくるし。いつかあんなところに住んでみたいと夢見ています。

15.宝石の国

 漫画をわりと最近手に取ったのですが、繊細できらきらして、強くてかなしくて残酷で、一瞬で虜になりました。ファンタジーが苦手であまり入り込めないことが多いのに、この作品は別。絵は描けないけれど、この作品のような脆くて儚い世界を、文字で表現していけたらいいなあと憧れています。市川春子さんの短編集も大好きです。

16.ナガノ「もぐらコロッケのうた/ゆめ」

 もぐらコロッケに限らず、ナガノさんの描く世界はすごい。いい方だけでなく悪い方にも感情を揺さぶられる。心を抉ってくる題材をかわいらしく描いてしまうことの無敵さを感じます。ビーフジャーキーを噛んでいるみたいに、何度もなんども味わって、ゆっくり咀嚼して、それでようやく読み終わる。そんなふうにして読むので、一ページの漫画を読むのにすごく時間がかかります。

17.びじゅチューン!

 大学時代、「赤ずきんと健康」という映像作品に異常なほどはまっていたのですが、その作者である井上涼さんが作っていると知って、夢中になって観漁りました。どんなに崇高な美術作品でも、感じ方は自由。自分の解釈でどう表現したっていい。作者の心を読まなければ、と思いがちの読書や芸術鑑賞ですが、その自由度がぐっと上がったような気がします。ときどき、学校で子供たちにもみせています。

18.束芋「にっぽんの通勤快速」

 高校の美術の授業で映像を観て、こんなものがあるのかと衝撃を受けました。風刺のおもしろさと残虐性の中に含まれる魅力を初めて意識したのが、この作品だったと思います。もう一度観たくてずっと探しているんですが、インスタレーション作品だったらしく未だ観ることができていません。たった一度しか観ていないのに強く心に残っているというのもすごいですよね。

19.アルコ&ピースのオールナイトニッポン

 先に三四郎のANNを挙げましたが、それとはまた違う影響を受けたのがアルピーのANN。謎の世界観、平子ってる空間。茶番を全力でやることでうまれる爆発的な笑い。平子さんの、何かたとえ話をしたあとに喩えたまま話を進める感じがすきなの、わかります?笑 ステキブンゲイに投稿してる「薫くんにささぐ」なんかにも、平子さんのたとえに影響されたんだろうなっていう箇所がいくつかあります。リアルタイムで聴けなかったのが本当に残念。(D.C.Gは聴いています……!)

20.ポケットモンスターシリーズ(ゲーム)

 これは影響を受けたというのとは違うかもしれないのですが、これだけ人生のすぐそばにあって名前が出てこないのもおかしい気がするので挙げました。いや、それにしてもそれくらい近くにあった作品なんだからなにかしらの影響を受けているだろうと思って一生懸命考えてみたのに、なにも浮かばない不思議。そこにあるのが当たり前になってしまっているのかもしれません。強いて言えば、生き物にもこころがあるのだと学んだ作品かな?

21.おジャ魔女どれみ

 セーラームーンが憧れのお姉さんなら、どれみちゃんたちは仲のいいともだち。そんな気持ちを抱いていました。彼女たちとは同い年で、魔女見習いなのにわたしと同じようなことで悩んでいて、それは小学生のわたしにとって、とても安心することだった。どんな状況にある人でも、同じようなことで困っているし、それぞれ乗り越えているんだなと思ったような、そんなことまで考えていなかったような。笑

22.テニスの王子様

 大学生のときにどはまりした一品でございます。うまく言えないけれど、内にこもるものだった自分の「好き」が、外の世界にまで広がった作品な気がする。テニプリを好きと交流をもってみたり、ミュージカルや舞台を観に行ったり。そういえば、七草すずめがうまれる数ヶ月前、言葉を使って表現したいという気持ちだけが先行してちっとも形にすることのできなかったわたしが、人生ではじめて完成させた短編がテニプリの二次創作でした。笑 それからは、自分の書きたいものが書けるようになった。完成の喜びが今につながっているのは間違いないです。

23.ディズニーランド

 もはや作品ではないのですが(いや、ある意味作品のなかの作品!)、欠かせないですよね、これ。きらきらプリンセス、豪奢なお城、大人が夢をみていい空間と時間。それに加えてそこで過ごした思い出が地層のように積み重なっていくから、行けばいくほど思い出の場所になる。自分の感性や思考を耕してくれたのはこの場所だと思うし、それはこれからも変わらないと思います。

24.宇宙兄弟

 しょっちゅう鳥肌&涙に襲われながら、漫画を少しずつ読み進めています。物語の展開と言い回しの粋さに、ぐっとくるシーンが多すぎる。それなのにギャグが凄まじくおもしろいの、ずるい。あまいのとしょっぱいので無限に食べ続けられるのに似ています。緩急をつけることが作品に大きな魅力を出してくれるのだと学びました。イッツアピースオブケイク!(言いたかっただけ)

25.さくらももこ

 エッセイがとにかく好きでした。中学生くらいの頃、青い鳥文庫から卒業して何を読めばいいかわからなくなったわたしの手元に残っていたのが、「あのころ」。いま自分がエッセイのようなものを書いているのは、完全にさくらももこさんの影響です。体験を文章に落とし込むと、できごとを客観的に見ることができる。それはなぜか、肩の荷が下りることですね。もっともっと、さくらももこさんの文章が読みたかったな。

26.ルース・エインズワース「こすずめのぼうけん」

 わたしが本好きになったのは、狭い団地の一室にたくさんの本を所蔵していた祖父母の影響。読みきかせてもらったいくつもの絵本のなかで、どうしてか今も手元にあるのが、この絵本です。小学校入学前くらいから一度も会っていない祖父母、祖父は亡くなったとも聞いたのですが、二人といっしょに過ごした小さな図書室のことと、そこでした読書体験が、本とわたしをつなぐ大切なものであることは変わりません。この絵本は、その部屋の象徴のようなものなのです。

27.島田ゆか「バムとケロシリーズ」

 こすずめのぼうけんが読み聞かせをしてもらった思い出なら、バムとケロの絵本には読み聞かせてあげた思い出が詰まっています。小さかった妹と弟の、特にお気に入りだったのが、「バムとケロのおかいもの」でした。詩や小説を書くとき、言葉のリズムを意識することが多いのは、妹たちが飽きないよう、リズムよくこの絵本を読んでいたからかもしれません。今ではこのシリーズを、クラスの子供たちに読んであげています。

28.飯間浩明「辞書を編む」

 言葉の変化をけっして否定せず、新しい辞書を作っていく飯間浩明さん。存在を初めて知ったのは、ツイッターでした。紅白歌合戦で歌詞に出てくる言葉を紐解いていく様子をリアルタイムで見ていて、言葉の奥深さとおもしろさに感動したのを覚えています。飯間さんの著書を読むようになってから、言葉の意味をよく調べてから使うようになりました。ちなみに、初めて読んだのは「小説の言葉尻をとらえてみた」でした。それもとてもおもしろかった。

29.今村夏子「こちらあみ子」

 衝撃でした。生まれながらにして世間とずれてしまっている、そういう人の生きづらさや不穏な記憶が、無防備に描かれている、露わにされている。これ本当に読んでいいの、と戸惑いながらも、読むのをやめられませんでした。主人公に感情移入して読むことが自分の読書のスタンスだったのですが、これは主人公と一緒に生きる、そんな感覚にさせられる。新しい読書体験を得て、小説に潜んでいる無限の可能性を感じました。自分がどんなものを書きたいのか、読む人をどうしたいのか、考えるきっかけになった作品です。

30.小林エリカ「マダム・キュリーと朝食を」

 国立新美術館での企画展、「話しているのは誰?」で展示を見て、ショップで文庫本を手に取ったのがきっかけでした。放射線、ウラン、被災した街。物語は何度も時代をこえ、場所を変え、正しく読み取ることはとても難しかった。だけど読み終えたあと、わたしはこの著者と同じで、放射線物質という見えない恐怖に、不思議な関心を持っていたのだと気付かされました。加えて、ひねりのない言葉で恥ずかしいのですが、芸術を小説で鑑賞することができたことに、感動したのです。

31.銀杏BOYZ「ぽあだむ」

 形容しがたいベルの音が鳴り響くイントロ、「6時から計画停電」なんて歌詞から醸し出される異常事態感、どことなく漂う終末のかおり。この曲、MVもめちゃめちゃいいんです。何度観ても泣く。いろんな女の子たちがカメラに向かってキスするの。ぽあだむ、うまく言葉にできないんだけど、わたしの世界に居座っているというよりも、世界そのものの色を変えてしまった気がする。無常観ともちがう、すべて諦めていながら、そのなかに希望を見つけるような、そんな世界の見つめかた。絶望的な状況なのに、きらきらしてるんですよ、この曲。

32.川上弘美「離さない」

 高校の現代文の教科書に載っていたのを読んだのが出会い。卒業して、そんな物語があったことをすっかり忘れていたのに、ほんとうに些細なことで思い出して、文庫本「神様」を買って、読みました。理由もなく離れられなくなるほどの甘美な時間と、それに抗う理性。依存という言葉で表現すると平たくなってしまうけれど、そのどうしようもなくなってしまう感情にわたしも取り憑かれてしまった気がします。わたしの書く小説には何かに依存する人物が多く出てくるのは、この作品の影響かもしれません。

33.川はだれのもの?

 NHKのみんなのうたでも放送していた曲らしいのですが、学校で取り組む「今月の歌」で出会ったのが最初。きれいな歌詞と流れるようなメロディで、「自然を大切に」って百回言われても芽生えない自然への愛が、こんこんと湧き出てくるのです。事実を告げるだけの言葉よりも、ストーリーやメロディで飾り付けられたメッセージの方がより深く伝わると言うことに気がついて、詩や小説の可能性にわくわくすることができました。

34.廃墟シリーズ・幻想遊園地(写真集)

 今まで手に取った中で一番印象に残っている、廃墟になった遊園地の写真集。同名の詩を書いたことがあるくらいです。かつてそこにあった夢のような時間と、対照的な現在の姿。人間の営みやドラマチックな感情、人との関係性や美しいもの、すべてが無常であることを感じ、どうしようもなく惹きつけられました。それは自分が書くものにも反映されていると思うし、考え方そのものにもかなり影響を受けていると思います。(どうでもいいのですが、持っていたものを紛失したので6000円くらいで再購入したのに、今見たら2000円くらいまで値段が下がっててかなしいです。気付きたくなかったです。笑)


 書いているあいだにいいねが増えて、あわてて書き足すなどしながら、とにかく作品を挙げてみました。世界観に影響を与えた作品というよりも、自分自身に影響を与えた作品、みたいになっちゃいましたね。でも、世界観って人生とイコールだよな、とも思います。

 これで、わたしの自分語りはおしまいです。次は、みなさんの人生に影響を与えた作品をぜひ知りたい。きっとそれぞれにたくさんのエピソードがあって、心の動きがあって、それはどんな小説よりも生々しく大切なものなんだろうなと思います。

 いいねしてくださったみなさま、自分をたくさん見つめ直すことができて、楽しかったです。ありがとうございました。これからもいろんな作品に出会って、自分の人生を豊かにしていけますように。


七草すずめ

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