友達よりも早く結婚して、「結婚しました」って言いたかった。
結婚ってきらきらしてるよね、うんうん、わかる。女の子の憧れだよね、いや、うん? それについて語り出したらわたしは多分とまらないぞ。だけど今しか書けないことがあるような気がするから、かまわず語ることにする。そこのあなた、聞きたいんだけど、結婚って幸せだと思う?
大きくなったらお嫁さんになりたい、とかいう人とは仲良くできないと思ってた。とか言いながらも自分に夢なんてなかったから、友達に合わせて「漫画家になりたい」とか言ってたけど。結婚にそんな憧れる要素なくない? とかって、くそ生意気な小学生でした。でもさ、大人になったら豹変したよね。友達結婚するじゃん、友達子供産むじゃん、うらやましいって思うじゃん。うらやましいって思った時点で、結婚=すごいこと、結婚=えらい、結婚=人生の成功、とまあこうやって、歪んだ方程式が成り立つわけです。
仲のいい高校時代の友達のグループラインのメッセージ、内容を円グラフにしたらほとんどがピンク色になると思います。結婚報告50%に妊娠出産報告40%、残りは10%ぐらいがその他の報告。まあその他も、旦那の転勤で引っ越しますみたいなやつなんだけど。これで焦らない人がいるならその人に弟子入りしたい。もうこうなるとさ、自虐に走るしかなくなるよね。「ほんとにおめでと!みんなにどんどん置いてかれてる〜😂」これってつまりあれ、自虐するほどの余裕があるんですよアピール。
仕事が楽しいって話をして「いいな〜〜」とか言われた日には、ニコニコしながらピキピキってなってる顔文字みたいな顔してたと思うよ。あたしも仕事続けたかったー、って、それ本気で思ってる? それとも勝ち組宣言かしら。そんな風に受け取る時点でわたしの結婚観は歪みきっていた。あれでしょ、結婚って、したら幸せになれて勝ち組になれて、えらくてすごくなれるやつでしょ。わたしは友達よりも早く結婚したかった。結婚して、「結婚しました」って言いたかった。
そんな状態で結婚したら、秒で破綻だわ。恐ろしいことに当時、ちょうど結婚する話が出ていたから、そのタイミングで籍を入れていたら多分いまごろボロボロになってたんじゃないかな。もう三年前か。たいして長くもないその期間に何があったんだって思うくらいわたしの考え方は変わった。三年間で友達二人と妹が結婚して、女の子が二人生まれ、まだ性別のわからない赤ん坊が一人発生した。そのあいだ、わたしは125人の児童と教室で過ごし、8人の先生と学年を組んで、そうしてゆっくり目が覚めたんだと思う。生きてるって結婚だけじゃねぇな、と。遅すぎて笑える。
中学生のころI WiSHと川嶋あいが好きでしょっちゅう聴いてたんだけど、あのさ、今きくとどうしても好きになれない歌詞がひとつあってね。明日への扉ってあるでしょ、あれって三部作になってて、最後「約束の日」って曲で結婚式挙げるんです。音楽も歌詞も描かれる風景も綺麗なんだけどね、「私、幸せになるから。」「ねぇ、幸せになるんだね。」って歌詞がどうしても嫌なの。なんでって思うの。いや、あんた今白いドレス着てみんなに祝福されて指輪交換して、そんで出てきた言葉が「私、幸せになるから。」ってなんでやねん。今その瞬間は幸せちゃうんかい。結婚=自動的に幸せになる!って絶対ちがうだろ、と思うのと同時に、そう思えた自分がうれしかったんだよね。ひとつ生まれ変わった証明みたいな気がして。
遅ればせながら結婚に夢を見て、世界が広がって目を覚まして、そしたらまあ当然、結婚への憧れも消えるわな。幸い仕事は安定この上ない職業だし、200%結婚しなくても一人で生きてける。しかもやりがいあって、人生をかけられるような仕事なんですよ。じゃあ結婚する意味ある? でもわたしは結婚したいって思った。それは結婚っていう状態がほしいんじゃなくて、その人との人生がほしいって思ったからなんだよね。三年前のわたしよ、知っていたかね。結婚とは目的ではなく手段なのだよ。
結婚するって、重荷を背負うってこと以外の何物でもないでしょ。給料で死ぬほど本買ってたけどそれも控えなきゃいけなくなるね。家事なんてさぼって文章書いてたけど、そんな時間もなかなか取れなくなるよ。大好きな深夜ラジオのために夜更かしする母なんてありえないでしょ。相手が誰だからとかじゃなくて、重荷を背負うなんて当たり前なんだよ、人ひとりの人生が重なってくるんだから。でも絶対、この人と重ねた人生の方がおもしろいってわたしは思った。これから何十年も続く生活の中で、間違いなく大きい喧嘩もするし結婚なんてしなきゃよかったって思う。一人の方が楽しかったとか何度も思うんだろうな。だけど何があっても忘れちゃいけないんです。この人としかできない生き方があるって思ったこと、自分がそれを選んだこと、相手もそれを選んでくれたこと。
初めて手を繋いだこととかわたしちゃんと覚えてるんだからね、とか死んでも言えないからここに書いとく。もらったうれしい言葉を思い出すだけで今でも泣けるとか絶対言わない。手紙の言葉選びが好きなことも、もともと一人の人間だったんじゃないかって急にメルヘンチックなこと考えたりしちゃうことも、言えないかわりに書き記しとくよ。なんか今、妙に感傷的だから。
そんなこんなでわたし、結婚します。