何とも、ドラマチックな…:漫画評「日本のいちばん長い日<上・下>
毎年、終戦記念日前後には第二次大戦絡みの本を読むことにしているのですが、今年はコレを。
星野乃宣さんが半藤一利さんの名著を漫画化した作品です。
大ファンって訳じゃないんですが、星野さんの漫画は昔からあれこれ読んでいます。
が、大半はSF・伝奇ものって感じです。
その星野さんがこの原作で、こんな骨太の作品を描いたってのが驚きではありました。
基本的には半藤さんが調べた終戦日前後のドラマ(聖断と一部軍部の反乱、玉音を巡る緊迫したドラマ)が迫力たっぷりに描かれているのですが、星野さんご自身の私見も含まれた内容になっています。
表現としては、終戦を巡るゴタゴタが繰り広げるのと<同時に>進行している各地での戦争の災禍。空爆やソ連満州侵攻、そして原爆投下の災禍等が、目を背けることなく、描かれています。
そしてテーマとしては「明治維新の持つイデオロギー性の帰着としての敗戦」でしょうか。「南北朝の正統性論議による天皇への<威嚇>」という側面にも言及されています。
ここら辺、「漫画家の想像」とコメントされていますが、一笑に付すことは僕にはできませんでした。
それぞれがどこまで意識的であったか…ってのはありますが。
綱渡りのような決断とその後の展開。
そこに関わって踏ん張った人々の(それは聖断を受け入れた人、受け入れられなかった人、それぞれが含まれます)<覚悟>と<決断>が「今」につながっていることを改めて思い返させられる作品です。
それを<今>どう受け取り、どういう風に<未来>に繋げていくのか。
これは今を生きる我々の責務です。