邦題はちょっと「?」では…:映画評「リンドグレーン」
妻と一緒にシネ・リーブル梅田へ観に行きました。
松山で行ったリンドグレーン展を観たときに、
「作品も面白いけど、作者自身がもっと興味深い」
と思ったってのもあります。
「長靴下のピッピ」や「ロッタちゃん」の作者であるアストリッド・リンドグレーンが作家になる前、スウェーデンの田舎町で生まれ、家族や社会の閉塞感に苛まれ、年上の男性との不倫から未婚の妻となり…と言った波乱に満ちた前半生から、里子に出した息子を引き取り生活を立て直し、家族とも和解するあたりまでが描かれています。
正直言うと、前半はヒロインを含めて登場人物の誰にも共感が持てず、
「こりゃキツイなぁ…」
と感じてたんですが、ヒロインが不倫をしていた男性と別れるあたりから物語にのめり込み、後半展開にはグッと来てしまいました。
かなり暗い展開ではあるんですが、終盤の明るさがその後の作者の「成功」にも重なって、観後感は思いの外、スゴく明るくて、気持ちの良い作品でした。
キーは「不倫相手との別れ」ですかね。
正確に言うと、別れの時点では相手は離婚が成立しており、彼は具体的な結婚生活の計画も立てて、プロポーズもするのですが、ヒロインはそれを拒否します。
この拒否の理由は明確に説明されてはいない。
でもそこには彼女と子供の「尊厳」が絡んでおり、「個」として立ち上がる彼女を僕は感じました。(不倫相手は「悪人」じゃないんですけどね。ただまあ、「ダメ男」です)
ここに共感できるかどうか。
作品の評価はそこで大きく分かれるようにも思います。
そういう意味で英題の「Becoming Astrid」というのは作品を象徴しています。
まあ日本の場合、「リンドグレーン」の方が知れてるので、こういう邦題になるのは仕方ないんでしょうが、「リンドグレーン」になるのは作品の後だし、そもそも「姓」の方を取り上げるのは作品テーマとしても…とは観終わった後に思いました。
アストリッド・リンドグレーン。
やっぱり<ただモン>じゃありませんでしたw。
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