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書記の読書記録#301「チボの狂宴」

マリオ・バルガス=リョサ(訳:八重樫克彦,八重樫由貴子)のレビュー


レビュー

まず作者について。

ホルヘ・マリオ・ペドロ・バルガス・リョサ(Jorge Mario Pedro Vargas Llosa, 1936年3月28日 - )は、ペルーの小説家。アレキパ出身。ラテンアメリカ文学の代表的な作家でありジャーナリスト、エッセイストでもある。主な作品に『都会と犬ども』『緑の家』『世界終末戦争』など。1976年から1979年、国際ペンクラブ会長。2010年ノーベル文学賞を受賞。(Wikipediaより)

いわゆるラテンアメリカ文学を代表する人物で,例えば,混乱を続ける時代を多くの視点から書き上げたことが評価されているのだろう。


次に題材について。

ラファエル・レオニダス・トルヒーヨ・モリナ(Rafael Leónidas Trujillo Molina、1891年10月24日 - 1961年5月30日)はドミニカ共和国の政治家、軍人。31年間の長期独裁体制下で個人崇拝を徹底させ、国家経済の大部分を私物化した。(Wikipediaより)

ガルシア・マルケス『族長の秋』でも扱われるテーマで,解説によればさらに多くの人々が取り上げたそうだ。ある種のカリスマ性を持った人物なのだろう(良い意味ではないが)。

本作では複数の時間軸からトゥルヒーリョ像を書く技巧を見せている。後年の我々がトゥルヒーリョを正確に捉えることは難しく,それでも本作で見せる彼(とその周囲)の興奮と衰亡は,不思議と説得力が強い。

本作はれっきとした歴史小説であり,小説の技術を駆使して圧倒的な現実に挑戦している。特にウラニアの存在は完全にフィクションなのだが,誠意と悪意を兼ねそろえた証言者として現実を補完する。

読後感はどうかというと,なかなか苦いものであった。大統領の暗殺という,まさにカタルシスへまっしぐらな展開を迎えたものの,残ったのは敗戦処理ばかり。それが確かに存在した歴史である,そして歴史は終わらないことをまざまざと見せつけられる。

至る所技巧を張り巡らせた作品ほど,技巧の存在を感じさせない。変に文学を考えないで,純粋に楽しんで読めばいいと思う。


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