経営戦略の作り方(後編)〜overflowの場合〜
Offersを通じて人材循環型社会を実現したい鈴木です。
前回の続き、ということで今回は組織図の設計から書いていきたいと思います。
次半期スタートに向けたロードマップを策定次半期で達成すべき状態目標を策定組織図を策定 ←✅ここから
事業計画を策定
人員計画を策定
財務戦略を策定
3-5年後の中長期マイルストーンを策定
MVVの見直し
全社周知 / 浸透
組織図の設計と進め方
組織図を設計していく順番としては以下のように進めていきました。
0.前提条件を捨てる
今置かれている制約条件は無視して考えます。「今の業務上この異動はできない、リソースが足りない」などは考慮にいれません。2で決めた状態目標を達成するためにどうするかの1点に集中します。コストも最後に考えます。
1.要素の洗い出し
ビジネスモデルに準じたKPIから必要なチームをプロットしていきます。これで無秩序ですが、必要な箱を揃えます。
2.横の流れ
レベニューファネルや、ワークフローを考慮しながら摩擦が少ない箱の並び順を決めていきます。
3.縦の流れ
レポートラインやスパン・オブ・コントロールを意識しながらレイヤーの数と範囲を決めていきます。情報伝達や意思決定の効率性と、権限の階層のバランスを見ながら適切な階層の範囲と数を決めていきます。
4.メンバーの配置
できあがった箱に合わせてメンバーの配置を考えていきます。今できていることに目を向けず、伸びしろに着目します。
この配置転換で新しいチャレンジと成長ができそうか、それはwillと一致しているか。全社と個が共にストレッチしているか。大方決まってきたらメンバーと個別に確認とすり合わせを行っていきます。
チーム及び、個人が何の数字に責任を持ち、上下左右へどのような影響を与えているのかを理解しやすい形にできると良いと思います。
また、この組織図を構築する過程で発見や気付きがあり、以下についても加えることにしました
特に抜擢人事は組織を活性化させる効果が大きく、抜擢を巧みに活用する私の古巣「サイバーエージェント」の組織運営の上手さを改めて実感しました。理想から逆算していくと、抜擢なしでは考えられない側面もあるので、事業必然性と機会提供を同時に叶えられる仕組みだと再認識しました。
総じて、どんな形であろうと「誰が何に責任を持つのかがパッとわかる」ことが大切だということがよく理解できました。
それがここまで組織の透明性を高め、ケミストリーを誘発するとは思わず、想像以上の効果を得ています。組織図をちゃんと作るだけで会社のスループットは上がります。
また、その状態を生み出すにはKPI逆算型で思考することが近道であることも学びました。責任を持つ人とチームをKPIから考え、組織をデザインすることが誰が何に責任を持っているのか=組織図のわかりやすさにつながっていると思います。
4. 事業計画を策定
ここからはボードだけではなく、リーダー(現Sec.MGR)も入ってもらい進めていきます。
事業計画策定で何より大切にするのは「意志を込める」ことです。
率直に「事業計画を作る」だけが目的であればCEO1人が作って終了です。あとはその事業計画に沿って進めてほしいとリーダーに託し、モニタリングするというように。
しかし、個人的にはこれでは100%未達成で終わると考えています。
事業計画を現実のものにするのは経営陣を含む全員です。
各人が以下を腹落ちするために、自分の手で計画をつくることが重要です。
overflowの場合では、1カ月ほど事業計画プロジェクトを進行し、社内のステークホルダーで様々な角度から議論し尽くしました。その上でリーダー合宿を実施し、最終的な論点を意思決定していきました。
合宿本番より、準備をメインに注力していきます。
合宿では計画のみならず、改めて組織体制や各セクションの1施策にまで言及し、これらを積み上げていくことでマイルストーンを達成できる、想定がズレたときのためにプランBを用意するというイメージを共有します。
事業計画の過程については、Offersビジネス事業部責任者の深見さんと詳しくpodcastで話しています。
5. 人員計画を策定
4で作成した事業計画をもとに、必要な人員数と採用計画を策定します。
レイヤーや雇用形態をどこまで分けるかにもよりますが、事業計画の精度が担保されていれば、ここは比較的スムーズに決定していけます。
6. 財務戦略を策定
事業・人員計画からキャッシュフローを計算し、将来的なエクイティストーリーと紐付けながら必要資金の総額、タイミング、方法などを検討していきます。
このセンテンスだけで1本noteが必要になってくるのでまた別の機会で書きたいと思いますが、「キャッシュフローをいかに精度高く読むか」がポイントであり、事業計画の精度を担保するために任意のストレス係数を緩衝材としながら理想と現実の間で意思決定していきます。
半期が始まったら、毎月Actual(実績)をアップデートしながら現状の乖離(=Stress係数)を把握し、施策とセットでForecastをアップデートし計画とのGAPを埋めていきます。
Forecastとは?については以下のnoteがわかりやすかったです。
この運用を経て、Stress係数を限りなくゼロに近づけていこうとする力学がはたらき、結果として個々人の予測精度の感度を上げていく組織カルチャーの醸成にも寄与していきます。
予測精度が上がれば、GAPの解像度が上がり、施策の精度とスピードが上がります。合わせて「やらないこと」の判断基準も明確になることで、重要な仕事にフォーカスすることができます。
7. 3-5年後の中長期マイルストーンを策定
8. MVVの見直し
7,8についてはボードメンバーでの経営合宿を実施し、議題として取り扱っていきました。本来的にはここを一番最初に持ってくると良いと思います。
足元の盤石な計画のもと、経営およびプロダクトのマイルストーンの調整や時間軸の具体性を上げていきます。MVVについても今回アップデートすることを意思決定しました。
別軸で進めていた等級、評価、報酬制度についてもここで決議しました。詳細はVPoPのコージさんと話したPodcastをお聞きください。
9. 全社周知
総仕上げとして、これらの過程を経て議論し尽くされた半期戦略を社内へ共有していきます。
overflowは組織理念のなかで情報の透明性を大切にしているので、可能な限りわかりやすく整理し伝達します。
今回は創業以来初めてスローガンも設定し、全社共通の目標を覚えやすく、浸透しやすくする施策にもチャレンジしています。
以下のように項目を分けて、複数回に渡って社内へのプレゼンを実施していきました。
最後に多岐にわたる情報や方針に翻弄されないよう、「📍全社方針マップ」というものを作成しました。
普遍的な基本戦略を1枚絵にまとめ、迷ったときは各戦略に飛べるようにすることで、方針のズレを軽減してやるべきことに集中できる環境づくりを目指して作成しました。
仮説の経年劣化に合わせて、ここをアップデートしていく運用をしていきます。
さいごに
組織規模の拡大に合わせて、戦略や計画を浸透させることの難しさと重要性を強く感じていたため、今回は半期のプロセスを大幅に見直し、気合を入れてアップデートしてみました。
次回の改善点も見えてきたので、また磨き込んでいきたいとおもいます。
1つのケースとして参考になればとてもうれしく思います。
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