思い出「芸術のプラモデル」
【シンナーテラピー】
9歳の時。
ガンダムのプラモデルがはやてっていた。
当時の値段は、1/144スケールで300円。
子供のお小遣いでも十分買えた値段。
俺は、このガンプラをたくさん持っていた。
色は付いていないでの、プラカラーで塗るのが定番。
このプラカラーは、シンナーを使っていて凄く臭い。
でも子供の俺には、そんなの関係なかった。
このプラカラーを使い、家でよくプラモデルに色を塗っていた。
両親には、凄く臭くて心配されて、あまり使うなと言われていた。
でも禁止はされていないので、遠慮なく使っていた。
筆を洗う時も、うすめ液と言う、きついシンナーを使う。
プラモデルに色を塗る時は、部屋中シンナーの臭いが充満していた。
でも体には、何も異常が無かったので気にせず使い続けていた、
それ処か、少し気分が良かったかもしれない。
【神のありがたいお言葉】
俺は、プラモデルに色を塗るのは、あまり得意ではなかった。
いつもどこか、少しはみ出して塗っていた。
それでも必死に塗って、1つ1つ自分なりの最高の物を作った。
でも同級生が作ったプラモデルを見てみると、見劣りする。
そこで、みんな色をどんな風に塗っているのか聞いてみた。
そうしたら色を塗るのが上手な子は、組み立てる前に塗っているらしい。
俺は、その情報を聞いて早速その方法を試してみた。
結果、凄く上手に塗れた気がする。
でも、まだ何かみんなと比べると下手くそだ。
俺は、自分で作ったプラモデルを友達に見せて、何が悪いのか聞いてみた。
この時、頼った子の名前は「星まさひろ君」
その時ほし君は、テーピングをすれば良いとアドバイスしてくれた。
テーピングとは、色を塗り分ける境目にテープを張るやり方。
この方法を使えば、色がはみ出してもテープがガードしてくれる。
俺は、早速この方法をやってみた。
結果、かなり上手に塗る事が出来た。
【世界を作る人】
俺は、このテーピング作戦でプラモデルの塗り方がだいぶ上手になれた。
この方法なら、プロ並みに上手に塗れる。
そう思い、教えてくれた星君の家にプラモデルを持って報告しに行った。
星君には、中学生のお兄さんがいた。
プラモデルを見せに行った時、ちょどお兄さんがプラモデルを作っていた。
俺は、そのお兄さんの作り方を少し見せてもらった。
そのお兄さんは、プロ並みの作り方をして俺は、目を見張ってしまった。
ガンプラの色の塗り方がもの凄くリアルで、まるで本物の金属みたいだ。
上手にガンプラに傷をつけ、ライターで焦げ目をつけ上手に塗装していく。
もの凄いテクニックだった。
俺は、そのまま1時間くらい見入ってしまっていた。
そして、だんだんジオラマらしき物が完成していく。
ジオラマとは、プラモデルに合った風景を作りそこにプラモデルを飾る物。
この時俺は、本物の芸術を見た気がした。
人は、ここまで進化できるのだと凄く驚いてしまった。
【神秘に満ちた魔法の本】
俺は、星君のお兄さんのプラモデル作りにずっと見入ってしまっていた。
その時、星君は暇そうに本を読んでいた。
それに気が付き俺は、お兄さんのプラモデル作りを見るのを一旦やめた。
そして星君と遊ぼうとしたら今度は、星君が読んでいた本に目が行った。
その本は、ガンプラのリアルな作り方の本だった。
俺は、その本をを見せてもらったら、また夢中になって読んでしまった。
そしてまた1時間位夢中になって読み始める。
そうしたら星君は、もうその本あげるよと言ってくれた。
この時、星君は俺の行動を見てだいぶ呆れてしまっていた様子だ。
でも俺は、この本を貰えた事が凄く嬉しくて、ありがたく受け取った。
俺はこの後、習字塾があったので帰る事にした。
そして、習字の道具を持ち習字塾に向かって行った。
でも、星君からもらった本をまだ読みたくて、習字塾をさぼる事にした。
近くの公園に行き俺は、親には内緒でもらった本をずっと読む事にした。
そして気が済むまで読み、気が付いたら夜7時。
普通に習字塾に行って帰れば、夜6時には家に着く。
でも夜7時を回ってしまい俺は焦って家に帰って行った。
そうしたら習字塾をさぼったのがばれていて、めちゃめちゃ叱られた。
何故ばれたのかと言うと、俺が公園で本を読んでいたのを目撃したらしい。
この時丁度、親が買い物に行く時間だった。
そして、あえて声をかけずに帰ってきたら叱ってやろうとしたみたいだ。
子供の悪い事など、いくら知恵を使ってもすぐばれるものだった。