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今西プリンシプル

今西和夫氏の本を図書館で借りることができました。最初は気楽に読み始めたのですが、だんだん姿勢を正し、深く考えました。

私はサッカー選手ではないし、高校大学では山登りという比較的個人スポーツしか経験ありません。今でも山に登りに行くのは単独というのを好みます。それだけにチームスポーツでもあるサッカーとは随分距離があります。
ただ、私も今西氏が尽力されたサンフレッチェ広島のファン・サポーターであることは自覚しています。

この本もサッカー選手向けに書かれていることは間違いありませんが、技術論というより人間論でもあることはハッキリしています。
勝手に引用すると、この中に

「サッカー選手の選手人生は短く「引退後」を考えなければならないことは事実だと素直に思った。ここから私自身がサッカーで積み上げた経験やマツダでの業務経験を振り返り、考え始めたことが原点である。現役を続けている、続けられているうちは、それこそサッカー漬け、サッカーのことだけを考えていれば、それで良いのかもしれない。
しかし事実として、現在のJリーグにおける平均引退年齢は20代後半であり、高卒で18歳、大卒で22歳からプロになったとして、現役を終えるまで7~10年程度しかない。これは私の現役時代からそれほど大きく変わっていない。人生100年時代を迎える現代で考えると、引退時にようやく人生の4分の1を迎える時期であり、引退後は残りの4分の3、それまでの3倍もの時間を過ごさなければならない。
現役引退後の人生のほうが長い。生きていくため、家族を養っていくためには、何かしらの仕事をして収入を確保していかなければならない。
サッカー選手であれば、コーチなどサッカーを生業にすることを考える場合が多く、Jリーグ発足前は教員になるぐらいしか選択肢はなかったが、Jリーグ発足後は各クラブの普及や育成年代のコーチ、いわゆる街クラブのコーチなど選択肢が増えている。しかし、すべての選手がそうした職に就けるとは限らない。選択肢は以前に比べて増えてはいる。
しかし、いくらサッカーがうまかったとしても、引退後にただそれだけで生活していけるほど社会は甘くないのが現実だ。
ここで問われるのが「社会人として」という点だと私は考える。この「社会人として」という意味は、サッカーに専念する以外に「何かしら社会勉強をしなければならない」ということではない。サッカーを通して身に付けることができる、つまりサッカーで「学べること」を認識すること。そして、サッカーが「社会の縮図」であり、「サッカーで学んたことが大いに役立つ」と気づくこと。これが重要だと私は考えている。」

いや、本当にその通りで、トップ選手は海外移籍を含めて大きな年俸等を貰ったりしますが、必ずしも選手生命は長くはありません。
この本には、今西氏が上記の想いをもって真剣に選手と向き合う姿勢が何度も書かれています。
サッカー選手や関係者向けでなく、万人向けの人間論と言えると思いますし、さらに根本にある今西氏のプリンプル(原理原則)は選手だけでなく、ファン・サポーターにとっても大事なプリンシプルだと感じました。
サッカースタジアムにおいても、ピッチの上で最高のプレーを見せてくれる選手だけでなく、その後押しをするファン・サポーターがそれぞれプリンシプルを忘れてはならないのだと思います。

今西さんのプリンシプルは、サッカー選手は個人の技術や組織としての戦い方、戦術の基盤に「サッカー選手である前に、良き社会人であれ」というもの。少なくともサンフレッチェ広島の根幹にはこれがあります。
ではファン・サポーターはどうなの?
ファン・サポーターのスタジアム内での姿勢は、スタジアム外での姿勢は?
相手チームへのブーイング、アウェイサポーターへのブーイング、審判団へのブーイングはもっての外。相手なくして試合は出来ず、審判なくしても試合は出来ません。もちろん試合を開催するスタジアム関係者も大事でしょう。
だったら、ファン・サポーターにとって前提とする「良き社会人であれ」はサンフレッチェ広島というチームだけでなくそれらの人々にリスペクトの姿勢があるのか?ということもまた問われるのではないでしょうか。

言ってみれば「サンフレッチェ広島のファン・サポーターである前に、良き社会人であれ」というのもまた求められているということでしょう。

サンフレッチェ広島は「サポーターズ・カンファレンス」というのがあります。コロナ期に開催されたカンファレンスの議事録の中にこういう部分がありました。

「「ファミリー」という呼称について。
100年に一度の厄災に、最後にすがるのは家族だと改めて教えてくれています。私たちは、皆さまと家族のような存在になりたい。たとえ様々な事情で天涯孤独という方であっても、選手やチームの存在が生きがいであれば、家族と呼んで心を一つにしていきたい。そうした気持ちであることを改めてお伝えいたします。
 皆さまとクラブの関係を、1つの家族に当てはめてみてください。家族であるからこそ、共に笑い、喜びも悲しみも共有できる。誰でもこの家にくれば仲間になれる。家族なら愛情をもって接し、ときに厳しく注意も叱咤もするが、決して人格は否定しない。励ましが何よりの良薬であることをよく知っている。感動を一番共有してほしい存在、それが家族です。ファミリーです。
 新スタジアムでは、興奮、熱狂、感動、歓喜を、臨場感あふれる素晴らしい環境で味わっていただけますが、先ほどもお話しさせていただいたとおり、それまでの2年間が正念場です。
 コロナ禍の入場制限があるなかでもご来場いただいた方々は、クラブを支えているまさに「サポーター」の皆さまです。しかし、クラブの安定経営のためには、ライト層のファンをもっと増やさなくてなりません。クラブは開幕キャンペーンに注力し、地上波のテレビ中継も増やしました。スタジアムでの場内演出やグッズ開発も、より多くの方に喜んでいただけるように努力いたします。しかし、肝要なのは、来てよかったと思ってお帰りいただけるスタジアムの観戦環境づくりで、特にみんなで応援する楽しさを感じていただくことです。ライト層のファンでも一体となって応援した思い出は、次のご来場につながり、ひいては選手のモチベーションにもつながります。サポーターとファンが一体になって、勝利を後押しする。繰り返しとなりますが、感動を一番共有してほしい存在、それがファミリーと呼びかけをする根本の理由です。

太字部分は私が付けましたが、サンフレッチェ広島のファン・サポーターの「良き社会人であれ」はこれを実現する力となるということだと思います。

このチャント、真にそう願うならファン・サポーター自身もそういう振る舞い、プリンシパルを持つ努力をせねばと思いました。

「サンフレッチェ広島の試合をエディオンピースウィングで見たよ、試合も凄かったけど、最高のファン・サポーター。アウェイチーム、サポーターのリスペクトも素晴らしかった。日本一、アジア一、世界一だね」
と言ってもらえるようにしましょう。そのためにやるべき今西プリンシプルに基づく行動は、一人ひとり山ほどあるじゃないですか。


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