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盆休みに図書館で借りたこの本には驚きました。

北海道のことなのでほとんど知識もなく、この羆も荒らしまくったのは1年程度と思っていましたが、いやいやとんでもない。
2019年から牛が襲われ、5年間で66頭の牛を襲い、32頭死亡させています。牛ですから牧場で襲うわけですから牧場の方にとっては牛だけでなく、人間の生命をも脅かす存在だったのですね。
羆登場の小説の金字塔と言えば吉村昭氏の「羆嵐」。110年くらい前の凄惨な出来事は吉村氏の筆により圧倒的迫力でした。

今回の羆「OSO18」と名付けられたのは最初に牛の被害現場とされたオソベツのOSOに羆の大きさを示す足跡の幅が18㎝とみられたことからつけられた名前だったんですね。そんなことも知りませんでした。
ぼんやりとした知識はNHKの番組だけでしから知らなかったのですが、今回この本を読んでそのプロセスや背景も知ることが出来ました。

このOSO18の足取りを追い、駆除していくプロセスはミステリーを読むようでとても面白いし、著者の藤本氏自身が地元の人間として取り組む姿が生き生きと書かれていてとても感心しました。これは今年のノンフィクション賞は決まりでしょう。

そのOSO18を探る話と並行して、どうしてOSO18が牛を襲うのかという話が素晴らしくよかった。羆はとても頭がいい、学習能力が高い生き物なので、普段はフキとか山の実を中心に食す雑食で、肉食はそれほど多くない生き物なのに、結局OSO18はほとんどが肉食となったのが牛を襲う背景にあると見抜きます。さらに牛を襲って食べる前に、死んだエゾシカを食した経験があり、肉食に偏っていったと仮定します。
ここからは全く知らなかったことですが、北海道では今エゾシカが増え続けて大きな被害が生まれ、それがためにエゾシカは毎年13万頭ほど殺処分されています。1頭につき8000円の報奨金も出るので、特にエゾシカに荒らされるコーン畑の農場主は駆除を依頼するそうです。
その駆除されたエゾシカですが、その後処理施設に持って行けば良いのですが、面倒だからと不法投棄する、どうやら子熊の頃にその捨てられたエゾシカ肉に味をしめたOSO18が、今度はたまたま牛の肉を経験して、襲うようになったという推理。
またエゾシカが増えた理由として、牛に食べさせようと栄養価の高い牧草への品種改良がおこなわれたため、牧場に出没して味をしめたエゾシカも山地でなく、牧場界隈に定住するようになり、ますます増えたという悪循環も指摘しておられます。

結局は人間が牛の育成のために行ったことが、エゾシカを増やす事にもなり、増えたエゾシカを駆除した後に一部が不法投棄され、それを食べた羆が肉食化し、こんどは狩りをするようになった。という循環もあるようです。

地元紙にこんな記事が

これも一つの方法でしょうが、藤本氏が指摘している問題点はそのままなので、頭が痛いところでしょう。経済と生命ですから。

羆など現れない広島ですが、先日孫と広島の動物園のナイトサファリに行こうかと思っていたら、なんと動物園にツキノワグマが出没したとのことで、行くのを止めました。広島だけでなく本土も駆除以外に本当にやるべき対策を真剣に考えないと、熊や猪が普通に闊歩するようになるのではないでしょうか。


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