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Death Penalty Returnee

先週BSでやっていた映画「デッドマン・ウォーキング」。久々に見ましたが素晴らしかった。また色々なことを考えてしまったのも、丁度袴田さんの無実の判決が出たタイミングでもあったからかもしれません。

もちろんスーザン・サランドンとショーン・ペン、二人の演技には圧倒されましたが、果たして日本の役者で演じられる人はいるのだろうか?

ひょんなきっかけから死刑囚であるマシューの支援をするシスター・ヘレンですが、ルイジアナという場所柄もあるのか政治家が強さ(タフ)を誇示するために死刑執行を急ぐ姿、これも我が国の死刑執行で法務大臣が署名する姿に重なります。

この中でスピード違反をしたヘレンがパトカーにつかまるシーンがありました。マシューに会った後に、ヘレンが大きく動揺したことを示すスピードオーバーの場面なのですが、その時、警官から免許証の提示を求められます。景観は彼女がシスターであることに気が付き「以前、税務官に違反切符を切ったら、すぐに税務調査があったので、まあシスター、今回は見逃しましょう」というセリフがありました。
まあ神さまに仕返しされてもね、というニュアンスなのだろうと思いますし、サラリとした場面なのですが、よく考えたら法を破った時に法の執行官の裁量があること、それはマシューの犯罪においても、また死刑執行においても何らかの裁量が働く、決して法だけによる裁きではないことに気づかされます。

また一番印象に残ったのは、マシューの支援をしているということで、ヘレンの周囲からだんだんと人が離れていくということ。ヘレンだけでなくもちろんマシューの家族(母と兄弟)に対し長年、地域において排外される姿は、袴田さんのお姉さんの姿に重なりましたし、多くの犯罪者の家族、支援者に対してSNSなどで無名の人からの言葉の暴力が起きている現状にも重なります。被害者及び被害者の家族支援が声高にいわれますが、それが反面加害者の家族に対しする心無い仕打ちに繋がらないことを祈りたいです。

その袴田さんのドキュメンタリー映画が間もなく上映されるようです。

これはぜひ見たいですが、横川シネマのスケジュールがまだわからないので、時々サイトを見て見逃さないようにしなければ。

監督の「家族写真 3・11原発事故と忘れられた津波」を図書館で借りて読みましたが、骨太の素晴らしいノンフィクションでしたので、「拳と祈り」は楽しみです。

デッドマン・ウォーキングの舞台はルイジアナ、南部でもあり映画の中でも色濃く残る黒人差別の場面もありますが、ここはどうも死刑制度については非常に保守的な土地柄のようです。ググると

ルイジアナ州は、テキサス州とカリフォルニア州に次ぎ、 処刑州として 注目に値する位置にある。 1983年以降、 ルイジアナ州で18人の囚人が電気処刑に付され、1987年のみで8人の囚人を処刑した―この年の最多処刑州 一。 この数は合衆国の州における人口1人当たり最高の処刑率であった。

デッドマン・ウォーキングでは薬物注射による処刑でしたが、これもまた残忍なものでしたし、ヘレンが言うように人を殺すことに違いはありません。

タイトルの「デッドマン・ウォーキング」は「死刑囚が行くぞ」という看守の掛け声でした。辞書で調べると死刑囚は「Death‐Row Convict」というのだそうですが、この場面の「デッドマン」の呼称はその段階を越えて、断頭台、13階段を上っていることを意味しているのだと思います。

とすると無罪となった袴田さんは「Death Penalty Returnee」帰還者ということになるのでしょうか。控訴の期限は10月10日までです。

断頭台と言えばベルリオーズの幻想交響曲第四楽章「断頭台への行進」を思い出しますが、あの強烈な交響曲より、この映画のブルース・スプリングスティーンの方がいい


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