見出し画像

UIUXデザインの目で見る、事業会社と支援会社

『自分が働きたいのは『事業会社』と『支援会社』、どちらなのだろう』
デザイナーとして働いていると、一度はこんなことを考えませんか?

はじめまして!
デザイナーのスズキシンジです(会社ではシンディと呼ばれています)

2023年3月、株式会社サイバーエージェントに中途入社し、DXDesign室でマネージャー兼UI/UXデザイナーを担当しています。
DXDesign室では、クライアントが持つデジタルプロダクトのUI/UXコンサルティング、ユーザーリサーチ、体験設計、デザイン制作など、多岐にわたる手法で企業のDX支援をさせていただいています。

そこに所属する私の担当業務は以下です。
・デザイン組織のマネジメント、経営管理
・デザイナーの採用活動
・担当案件の推進、UI/UXデザイン(ディレクション、制作)

そんな私は現職に至るまでに、「デザイン」という領域をぶらさずに3社の異なる環境でキャリアを重ねてきました。

図で表すとこんな感じです。

「グラフィックデザイン」に始まり、「Webデザイン」「アプリデザイン」と、扱う媒体を物理からデジタルへと変えてきました。

時代の流れやご縁に背中を押されながら、新しい領域にチャレンジし、自分が活躍できるフィールドを意識的に広げてきたように思います。

中でも、「事業会社」と「支援会社」それぞれでUI/UXデザイナーとして経験していることは、自分のキャリアを語る上で特筆すべきポイントだと思っています。
両者の特性や環境を、実践を通じて理解してきたことは、ひとつの強みになっていると自負しています。

近年、デジタルプロダクト開発における「UI/UXデザイナー」の役割は著しい広がりを見せています。
単なるインターフェイスの設計だけでなく、あらゆる課題解決に寄り添い、UI/UXだけでなくビジネスそのものを牽引する役割が期待されるようになってきているとも言えます。
その一方で、同じ「UI/UXデザイナー」であっても「事業側に立つか」「事業を支援する側に立つか」の違いによって、求められるアプローチや成長環境が大きく異なるのではないかと感じています。

本記事では「事業会社」と「支援会社」の違いについて、「UI/UXデザイナー」の視点から掘り下げてみたいと思います。
両者を比較した時の違いが気になる方、ネクストキャリアに悩んでいる方、UI/UXデザインにチャレンジしたい方など、ぜひお読みいただければと思います!

対象読者

  • 事業会社と支援会社、両者の違いに興味があるデザイナーの方

  • どちらでスキルを伸ばしたいか悩んでいるデザイナーの方

  • UI/UXデザインの仕事に興味がある方


それぞれの特徴

まずはじめに、UI/UXデザイナーの視点で見た、両者の特徴についておおまかに整理してみます。

事業会社の特徴

  • 関与の領域:特定の業種や領域に長期的に関わり、専門的な視点でデザインができる

  • デザイン対象:自社サービスに専属してUI/UXデザインを行う

  • 収益構造:顧客(=エンドユーザー)に直接価値を提供し、その対価として収益を得る

支援会社の特徴

  • 関与の領域:幅広い業種や領域に携われるため、多様なデザインスキルを磨くことができる

  • デザイン対象:プロジェクト単位でUI/UXデザインを提供する

  • 収益構造:顧客(=クライアント)のビジネスを支援し、請求して収益を得る

関与の領域やデザイン対象の違いは言うまでもない話ですが、ここで着目すべきは、同じ「顧客」という言葉が、収益構造の違いからそれぞれ異なる意味を持っている点です。
それぞれの事業は顧客あってこそのものですから、顧客の捉え方が変われば、当然デザイナーに求められる役割やマインドセットにも大きな違いが生まれます。
顧客との関係性の中でどのように価値を最大化するかは、デザイナー自身が常に考えるべき重要なテーマと言えます。

次に、「顧客」に焦点をあてた上で両者を比較し、UI/UXデザイナーの視点でどのような違いがあるのかを深掘っていきたいと思います。

「事業会社」のUI/UXデザイナーが視る「顧客」

ユーザーにアクセスしやすい

事業会社において「顧客」とは、自社の製品やサービスを利用し、得られた価値に対価を支払う「エンドユーザー」を指すことが多いでしょう。
そのため、デザイナーとしては「エンドユーザーに価値を届けること」が常に最優先事項となります。
これは経験則ですが事業会社の場合、事業戦略を担うチームとプロダクト開発を担うチームは分業されていることが多いため、デザイナーはユーザーと向き合う活動に集中しやすい傾向があります。

  • どうすればユーザーがサービスを使いやすいと感じるのか?

  • どうすればユーザーが長くサービスを使い続けてくれるのか?

これらの問いを軸に、デザインを通じて長期的にサービスの成長を支えることが求められます。
例えば、ユーザーインタビューを重ねて課題を抽出し、「サービス内のユーザーフローやインターフェイスのビジュアルを改善する」といったことは、事業会社のデザイナーにとって日常的な仕事だと思います。

サービス利用者との距離が近いためユーザーの実態を把握しやすく、提供した価値がダイレクトに「顧客」に届き、対価として収益を得られるのが特徴と言えます。

「支援会社」のUI/UXデザイナーが視る「顧客」

ステークホルダーが増えたことで複雑に

一方で、支援会社における第一の「顧客」とは、サービスを運営する「クライアント」のことを指します。
そのため、デザイナーとしてはクライアントのビジネス目標を達成するためのアプローチが最優先事項です。

  • 提案する施策がどれだけのビジネスインパクトを生むのか?

  • クライアントの経営課題にどう貢献できるのか?

支援会社では、単に「エンドユーザーの満足度を上げる」のではなく、「クライアントの事業として効果的な成果を出すこと」がゴールとなります。
ですから、ビジネスKGI/KPIを軸にプロダクトの方向性や改善施策が議論されるケースが多いです。
しかし、そういった議論のみでプロダクトの方向性を決定してしまうと、本来のユーザーニーズと乖離が生まれるリスクがあります。
逆に、エンドユーザーの満足度にコミットしすぎると、クライアントの事業成果に直結しないアプローチに陥るリスクが発生します。

どちらか一方の課題を解決しようとすると、シーソーのようにあらたな課題が生じてしまい、価値を創出する難易度が高いことが現実であり、私個人の悩みであり、支援事業の特徴とも言えます。

重要なのは「鳥の目」

結論から言うと、支援会社のUI/UXデザイナーに求められるのは、エンドユーザー目線だけでなく、クライアント側の目線(経営者や事業責任者)もあわせて持つことができる、俯瞰力です。
ビジネスの全体像を俯瞰する「鳥の目」を持つことが重要になるのです。

クライアントを見下ろすような図になってしまい恐縮です

抽象度の高い話ですが、この視点を持つと以下のように思考を働かせ、バランスを取りながらものごとを捉えられるようになります。

  • UX向上によってリテンションが高まる半面、提供するための開発コストが上昇していないか?

  • クロスセルやアップセルで収益を増やせる半面、ユーザー体験が押しつけがましくなっていないか?

  • トレンドのAI技術を活用した新機能を追加できる半面、既存のユーザー体験が複雑化していないか?

  • リッチなインタラクションを実装したUIによって直感的な操作が可能になった半面、パフォーマンスや表示速度が低下していないか?

自分で書いていても心あたりがありすぎて胸やけしてきましたw
結局のところ、プロダクトにとっての最適解とは、ユーザーの課題を解決しながら、同時に事業の成長を支援するアプローチに他なりません
このバランスを取るためには、エンドユーザー目線という「地上の視点」に加え、事業提供者側の視点や課題を包含し、全体を飛び回って俯瞰する「鳥の目」を持つことが必要不可欠です。

可愛く描けました

デザイナーの志向性の違い

ここまで、「顧客」というワードに焦点をあてて、UI/UXデザイナーの視点から見たそれぞれの違いが明確になりました。
それに伴い求められる行動やスキルが言語化しやすくなったと思います。

事業会社のデザイナーは常に「ユーザー視点」に立ち、「サービスの価値」そのものを高めることにフォーカスします。
エンドユーザーとの距離が近く、目の前の課題解決に深く入り込む姿勢が求められ、長期的な視点でサービスを成長させる責任も伴います。

一方で、支援会社のデザイナーは、クライアントのビジネス全体を「鳥の目」で見渡し、「事業に貢献するデザイン」を生み出すことにフォーカスします。
当然ユーザー目線も大事ですが、顧客の事業に貢献するためのアプローチはUI/UXに留まらず、開発プロセスの刷新、組織・カルチャーの改革、といったところにまで領域を広げることになるかもしれません。
プロジェクトごとに異なる要件や目標に対応しつつ、クライアントとのやりとりを通じて効果的な提案や成果を追求する力が重要になるわけです。

どちらが自分に合っているか?

ここで冒頭部分に立ち返るのですが、「自分はどちらで働くべきか?」という問いです。
事業会社と支援会社、それぞれで求められるデザイナー像を改めて振り返ってみます。

事業会社に向く人

・ひとつのプロダクトに向き合い、サービスを徹底的に磨き上げたい
・エンドユーザーの満足度を最優先し、利用者の声をダイレクトに理解し反映したい
・特定の業界や分野の専門知識を深めたい

支援会社に向く人

・多様な業界やプロジェクトに挑戦しながら、スキルの幅を広げたい
・クライアントとの関係構築や、ビジネス視点を持った提案力を磨きたい
・サービス開発を「事業成長の一環」として捉え、俯瞰した視野で活動したい

さいごに

今回、事業会社と支援会社の違いを切り口に、UI/UXデザイナー、顧客、エンドユーザーとの関係について考えてみました。

「どちらで働きたいか?」という話もしましたが、一方が優れているわけではなく、どちらを選択すべきかは、その人のパーソナリティやキャリアビジョンによって変わると思います。
正直、私自身もどちらが自分に向いているのか結論は出ていません。

ただ、現在所属しているDXDesign室では、ビジネス全体を「鳥の視点」で俯瞰しプロジェクトを推進しながらも、時には地上に降り立ち「ユーザーの視点」でプロダクト開発に邁進できる環境なのではないか、と考えています。

ふたつの視点を持ってプロダクト、ないしはビジネスを成功に導けるようになれば、デザイナーとしての市場価値は計り知れないものになるはずだと確信しています。

さいごの最後に

DXDesign室では共に働けるデザイナーを募集しています!
カジュアル面談を実施していますので、ご興味がある方はぜひお気軽にご連絡ください!

この記事で、それぞれの会社で働くUIUXデザイナーの方に気付きがあれば幸いです。
少しでも参考になったら、『♡スキ』をお願いします!

慣れない執筆活動で堅苦しい長文を書き散らかしたので、次回はもう少しカジュアルな記事を投稿したいと思いますw

もしよろしければXのフォローもお願いします。

それではまた!


いいなと思ったら応援しよう!

シンディ|スズキシンジ
いただいたサポートでコーヒーでもどうでしょうか☕️