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命のリレー①

昨年の5月から熊本に引っ越してきて、「命と向き合う機会」に多く恵まれました。
東京に住んでいる時は、理科の教員(生物専攻)として、命の大切さ、命のリレーについて頭の中ではわかっているつもりだったのですが・・・。

現在は、くまもと☆農家ハンターで修業をさせていただいています。
やっぱり自分で命のやりとりを体験してみると衝撃を受けました。

くまもと☆農家ハンターは人里に降りてきて、農家さんの田畑の作物を食べてしまうイノシシだけを対象に駆除活動を行っています。山奥に入ってまでの捕獲はしていません。

ただ、人間の都合でイノシシの命をいただくので、イノシシの可食部位は人間の食用に、人間が食べられない部分はペットフードにしたり、機械を用いて堆肥への転用を試みたり、皮は革製品に転用したり、その命を最大限活用して生かすための取り組みをしています。

農家さんが一生懸命作った作物を収穫直前にイノシシに食べられてしまったことをきっかけに、「自分たちの畑は自分たちで守る」というスローガンのもと、くまもと☆農家ハンターは結成され活動を開始しました。

本業は農家の皆さんが、ICT機器の力を借りて本業と防衛活動を並行して行っています。(イノシシが箱罠に入り、罠が作動して扉が下がった衝撃を感知してスマホにお知らせがきます。)ICTの力を借りることで、見回りにかかる膨大な時間を大幅に圧縮することができています。農家 × ICT × 狩猟 に加えて、研究をされている先生たちにも教えていただきながら今の技術・方法を確立していったそうです。


くまもと☆農家ハンターさんで修業させていただく中で、私たち人間は誰もが命のリレーの真っ只中を生きていると感じたのでお話させていただきます。

私たち人間は二つの側面で命のリレーに関わっていると考えています。
「生物学的な親から受け継いだDNA」を持っている側面」と「他の動物の命を頂いて生きている」側面の2つです。 

(※子孫を残すことが良いこと、悪いことという次元でお話するつもりはありません。)

今回は前者についてお話していこうと思います。

「生物学的な親から受け継いだDNA」を持っている側面

「生物学的な親から受け継いだDNA」の「受け継いだ」という言葉の文字通り、私たちは先祖から受け継がれてきた遺伝情報を体内に保持しています。

先祖が誰一人欠けても私たちは生まれてきませんでした。

一人の人が生まれてくるときに生物学的な親は2人います。
その親もそれぞれ2人の生物学的な親から生まれてきています。
このようにして先祖を遡っていくと関係してくる人数は自然と増えていきます。

例えば、キリがいいところで10代遡ると一人の人につき、(2の10乗で)1024人の先祖がいることになります。

人が生まれてからその人の子どもとして次の世代が生まれるまでにかかる時間は個人差がありますが、デジタル大辞泉によると「世代」とは

親から子、孫へと引き継がれるそれぞれの代。
ふつう約30年を1世代または1代と数える。

とあります。

ひと世代を約30年として先祖を10代遡ると約300年前になります。
1722年は享保7年で第8代将軍徳川吉宗が治めていた時代です。

そこには1024人の人(先祖)がいて、512組のカップルがそれぞれ子どもを残していたと想像することができます。512人の子どもが256人組のカップルとなりそれぞれ子どもを残して・・・このような連鎖が続いていき約300年後に「一人の人」が生まれます。先祖が誰一人欠けても300年後の「一人の人」は生まれません。

代々受け継がれてきたDNAが私たちの細胞の中に保持されています。そのDNAを設計図として私たちの体は作られています。タンパク質の設計図が先祖から受け継がれてきているので、どこかしらに先祖の面影をもっています。

現代に生きる私たちも1024人に入る可能性があって、300年後には末裔同士が結婚して遠い親戚同士になるかもしれません。

ちなみに20代遡ると先祖の数は1,048,576人になります。1世代30年で考えると600年。600年前は1422年で室町時代だそうです。
調べて驚いたのですが、金閣寺は1397年に建立されたそうです・・・。
話を戻すと私たちの中から100万人をランダムに選んだら600年後には100万人が遠い遠い親戚になっているかもしれません。

100万人いたら電車で同じ車両に乗っているかもしれませんし、すれ違っているかもしれません。
もちろん誰が親戚になるか予想することはできませんし、600年後なので結果を知ることも叶いませんが、大事な末裔の命を支える大切な先祖になる可能性がある人が世の中にはたくさんいます。

そう考えるとどの人に対してもより丁寧に接したいなと改めて感じるのは自分だけでしょうか?

ホモサピエンスが誕生したのは20万年前とされています。どれだけの先祖に支えられてきているか想像できますか?膨大な数の先祖がいるはずです・・・。

先祖が必死に生き抜いて繋いできた命のバトンを今私たちは受け取っています。
(それを次世代に渡していくかいかないかは個人の自由です。)
奇跡的に先祖たちが命のバトンを途切れることなく繋いできてくれた結果、私たちは今こうして生きることができています。
奇跡の連続の末に受け取ったバトンの重みというのは誰しもが感じることができるのではないでしょうか。

現代に生き残っている生物は種を問わず、優秀な一族です。
先祖たちが引き起こした奇跡の連続の末、今日私たちが生きていること自体がもうとんでもない奇跡です。生まれただけで宝くじ何回当たっているのだろうというぐらいの確率だと考えます。
生きているだけで丸儲けというのは本当なのかもしれませんね。

次回は、
「他の動物の命を頂いて生きている」側面についてお話したいと思います。






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