#331 読書日記46 『岸辺のふたり』 あなたの大切な人はいま、どこにいますか?
『岸辺のふたり』マイケル・デュドク ドゥ・ヴィット著
原題:Father and Daughter
2000年制作、2001年アメリカアカデミー賞短編アニメーション賞受賞作品。
数年後に絵本化されたものを購入。
私が40歳のときだった。
わずか8分間の映像に胸が締めつけられた。
大切に思っている人に対する感情と共に涙があふれてくる。
日本語版絵本の翻訳は
うちだ ややこ
内田 也哉子の父母(内田裕也と樹木希林)の関係性や、父娘の関係性などを考えてみると、翻訳者は彼女でなければならかった、そんな気がするのである。
私が所有していた絵本は、国語教師になった長男に譲った。
小説になぞらえるなら短編・ショートショートのように凝縮された物語だ。
わずかな画像と言葉で人の一生を、そして最後まで抱き続けた父への愛を描ききる技量に感嘆する作品だ。
岸辺で「それじゃな」「……うん」というやり取りの後、父はボートを漕いで娘の前から消えた。
以来、父は帰ってこなかった。
時は過ぎ、少女は恋をして、母になり、あらゆる歓びを得て、やがて老いを迎える。
いくつ年を重ねても父への想いは消えない。
いつしか、父と別れた岸辺に彼女は戻ってみた。
そこで改めて「 岸辺のふたり(邦題) 」のタイトルの深さに胸が締め付けられる。
過去のプロット、未来のプロットが交錯している。
文学である。
未来に向かいながらも過去に向かい、そしてまた過去から未来へ向う。
翻って、我が身を振り返れば・・・・
どうしたって、人生第4コーナーに突入しゴールまでの直線を走っている。
残された未来をどう生きるか。
どこで尽きるのだろう。
親から授かった命と受けた恩を親に返すことができず悔やむことばかりだった。
3人の息子たちや義娘たちに思いをつなげたい。
あなたにとって大切な人は誰ですか。
その人はいま、どこにいますか。