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#362 思考と行動の源泉

読書日記50  900字

S.I.ハヤカワ『思考と行動における言語』岩波書店
大久保 忠利 (翻訳)

 神田の古本屋で買ったもの(1985年初版)を引っ張り出してみたけど活字が小さくて辛い。
 何よりカビ臭い・・・・

 この本をきっかけに言葉に対する考え方が改まったことは確かだ。今も通用することは多い。

 言語は人類最大の発明と言われるが、口語として、また文字として伝承され、各国で高度に発達を遂げてきた。
 私たちはその記号で思考し、それに基づいて行動している。しかし、言葉は不完全だ。私自身もヒトとチンパンジーの間を往き来している。

 「話せばわかる」と言っても、言葉に対する理解度や抽象概念は人によって異なる。
 だから、教育を通じて何とか「ことば合わせ」をしようとするのだけど、いくら言葉を尽くしても、誤解や衝突、わかりあえなさは起こるものだ。

 抽象度の高い言葉や、自分好みの表現にこだわっていると理解が得られず孤立する。
 母語が何かによっても思考回路に違いがあり、そこから生まれる価値観にも違いがある。

 最近、ドミニク・チェン(Dominique Chen)の『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために―』を読み直し、S.I.ハヤカワの『思考と行動における言語』ことを思い出したのだった。

 『思考と行動における言語』は、若い頃に「なるほど!」と思う部分もあったが、未熟だった分、よく解っていないことも多かった。
 その後、いろいろな本を読み重ねたり、実体験として身に付いた感覚と合わせて少しずつ理解できるようになったのかもしれない。

 人は誰のどんな言葉に最も影響を受けているかとういうと、自分自身が発した言葉だということ。私たちは人の言葉に影響を受け、自分の言葉に置き換えて心や行動を強化している。

 毎日、他者と自分が発した言葉のシャワーに対して私たちはどれほど気を遣っているだろう。

 できれば、ネガティブワードは封印し、ポジティブワードを使うようにしたい。
 心が弱っているとき、苛立っているとき、ふてくされているとき、脳内ではネガティブとポジティブの言葉の攻防がくり広げられる。

 脳科学が実証しているように、自分や他者の言葉が思考・行動に大きく影響を与えているのなら、ネガティンブワードはなんとしても排除しなければならない。

 善くも悪くも、私は私の言葉でできているのだから。