雄山の作品の変遷とシリーズのご紹介~進化編~
変遷とシリーズの紹介第二弾「進化編」と題しました。
前回の定番編では、従来の五月人形から実物の甲冑の模写への技術的な変遷をお見せできたかなと思っています。
技術的な引き出しが増えると、作品の表現の幅がどんどんと広がってきます。できることが増えてくると、オリジナリティを出したくなってくるもので、これまでの技術の引き出しを活用して、どうやって五月人形を進化させていくかを試みるようになってきました。
今回はそんな最中に生まれた作品たちをご紹介していきます。
天賦の兜
この天賦の兜の企画を皮切りに、家庭に置くことを想定した「デザイン」を意識することを作品の開発の際に心がけるようになりました。
これまで雄山は、五月人形を伝統的な形から実物を精緻に模写する作品、自分達作り手がみて美しいと思った作品を作ることに注力し、技術力に磨きをかけてきました。そこに揺らぎない自信がありました。
あまり一般のお客様と相対してお話する機会もなかったのですが、ある時「雛人形はかわいいけど鎧や兜は怖いので。。。」という言葉を耳にし、とても大きな衝撃を受けました。
美しくてカッコよければいいわけではないと初めて知ったのです。
そこで、作品作りの根本を見直すべく、インテリアに調和しつつも柔和すぎず、五月人形としての存在感も持たせたバランスの取れた作品を作ろうと、「天賦の兜」シリーズの企画が立ち上がりました。
そんなきっかけから、技術を現代に合うように馴染むようにアレンジして、伝える。これからの雄山の方向性を少し照らしてくれたような作品となりました。
Armadura-アルマドラ-
Armaduraは牛革を用いて兜を表現することを目指した作品です。
もともと牛革の加工の技術は、戦国武将の再現をするときに初めて用いました。徳川家康や本多忠勝、上杉謙信の鎧を表現するときに牛革を使っており、その牛革の加工の技を用いて、西欧風の甲冑をデザインしてみようと企画が始まった作品です。
アンティークな装いを醸し出しており、大人な五月人形が完成しました。
革は少しボカシを入れたパティーヌ調にデザインしており、茶・赤・紫の三色用意しています。(パティーヌとはやり方が異なりますが工法名がわからないので'調'としています)
写真は伍代といい、開けるだけで簡単に飾れるケース飾りです。
弓太刀をイメージして、火縄銃と太刀を脇飾りとして添えました。
タンゴ侍
鎧飾りというと、飾る手間が多くとても大変です。
靴に脛当てをつけて、佩楯-はいたて-を櫃に固定して、面を芯木に引っ掛けて・・・と確かに飾るための工程が多い。
なので、作りました。置くだけで飾れる簡単でコンパクトな鎧飾り。
コカコーラのボトルの形状にインスピレーションを受けていて、胴体の丸みと後ろの凹みは技術的なこだわりのポイントです。
芯木に沿うように甲冑を着せており、足の部分のえぐれたアールがチャームポイントになっています。
漆黒
とある取引先さんが営業でお櫃を持ってきたことから漆黒の企画が始まります。それは桐でできた光沢のない黒のお櫃でした。
デザイン感度の高い方からすると、一般的な色使いなのかもしれませんが甲冑ばかりに目を向けていると、お櫃や小道具の色に対する意識が薄くなっているのか、とても新鮮に感じました。
このお櫃をデザインの軸にして、兜をデザインしてみようとして始まった作品になります。
艶消しの戦国武将の鉢に、銀ブロンズ色のメッキ加工を施した前立-まえたて-でシックな印象を表現しています。
また裏側は赤色で塗装を施すことで存在感を引き立たせました。
実物の甲冑でも裏側を赤で塗ることが多く、戦場で血色をよく見せることと縁起担ぎの意味があったとされます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
技術力をアピールするところから少し肩の力を抜いて、現代のお家に飾っても映えるような作品たちをご紹介しました
次回は、壹三の大将人形にフォーカスを当てて、ご紹介していきたいと思います。
以上
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