育んで欲しい「自分だけの正解を作る力」
「子どもが教える学校」は、子ども達が先生となり授業を行う場です。
自分の好きなこと、興味があること、どうしても伝えたいこと、何でもいいから「自分で選んだテーマ」で授業をしよう!と声をかけています。
テーマ選定は、大人である私たちが相談に乗ることはほとんどありません。子ども達自ら、「これ」といったテーマを決めてきます。
なぜ自分たちで決めてもらうのか、ここにこの学校の最大のこだわりがあります。
1:唯一無二の答えなどない時代だから
学校側である程度、テーマの選択肢を提示してあげたほうが、運営としてはよっぽど楽です。子どもたちだってそのほうが、きっと気楽に参加できると思います。
でも、それではここでの学びの効果は半減します。
子どもたちは普段、学校の教科や校則といった「枠」の中で生活をしています。それはある意味、「これをやっておけば大丈夫」「これをやっておけば間違いなし」といういわば「仮の正解」がある世界です。
(私は学校がこういう場であることについては、一切否定しません。だって、数十人・数百人が一斉に学ぶ場所。ある一定のルールがないと、団体行動は成り立たないですし、教育の質も担保できないと感じるからです。)
ですが、子ども達が実際に出ていく社会というのは、「これをやっておけば大丈夫」も「間違いなし」も一切ない世界です。
最近だと、VUCA(ブーカ)なんて言葉も目にしますね。
VUCA(ブーカ)とは
Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉。新型コロナウィルスや台風などの疫病・災害、AIの急速な進化など、社会の変化を予測しづらい昨今、もはや将来がどう変化していくか、全く予測できない社会を表現したもの。
だからこそこれからの時代は、「正解をなぞるスキル」だけでは足らないのですよ。
むしろ、時代や社会の風を読んだり、自分自身が心から喜ぶことを感じながら、「自分だけの正解を作る」そのスキルの方が、これからは何倍も必要と言われています。
2:その時にヒントとなるのが「アート思考」
私はそんな「自分だけの正解を作る」ヒントとなるのが「アート思考」だと考えています。
◆かつて必要だったのはデザイン思考
昭和・平成のような、社会の成功とはこういうものだ、今のトレンドとはこういうものだ、と時代がある一定方向に向いていた時は、社会が求められるニーズにマッチしたものを「デザイン」すればよかったわけです。この時、必要なのは、顧客や市場をとらえる「他人モード」の力でした。
しかし、今は違います。
社会はより多様性を増し、時代も10年ひと昔どころか、3年スパンで変わっていく時代です。
社会も大人も、これが正解だよ、トレンドだよ、とは誰も正解を示してくれる時代ではありません。どれだけ、過去の知識や技術を積み上げても、太刀打ちできなかったりする時代です。
◆これから必要なのはアート思考
必要なのは、過去を踏襲するスキルよりも、「新しい何か」を生み出していく力だと言われて久しいです。
その新しい何かを生み出す時、必要なのは誰かのニーズにあわせた「他人モード」のベクトルではありません。
もっと自分の内側からほとばしる内発的な動機、これをやりたい、作りたいといった「自分モード」で作り出していこう。
これが「アート思考」の考え方です。
自分の内側から湧いてくる、やりたい、作り出したい、さえもつかめずに、世の中に求められる、やるべきこと、作り出すべきことなど、果たせるはずはないのですから。
例えば有名YouTuberのHIKAKINさん。
彼だって最初から10億円プレイヤーを目指したわけではないと思います。最初から、ある程度、勝算があって、あの道を歩んだのではないと思います。自分の大好きなビートボックスや、ゲームのこと、たまらなく好きなそれらのことを、まるでアートのように自分のYouTubeチャンネルで表現し続けた結果が、今につながっているはずです。
自分の内発的な「やりたい」「したい」という熱源、そこに沿って自らを探求・表現していくのがアート思考なのです。
私自身も2019年にこの考え方に触れ、毎朝30分。誰に褒められるでもない、1銭にもならない、そんな自分の熱源から生まれる時間を定期的にとったことで、人生が大きく進みました。この学校も、この時の時間があったから生まれているわけで・・またその話は、機会があれば書いてみたいと思います。
▼2019年6月の私のFacebook投稿より
自分モードの時間が何を生み出すかは、今は分からない。
だけど、打算とか、採算とか、そういうのを一旦捨てて・・自分の中の「子ども」が最高に駆けずり回る、そんな時間を毎日の中に確実に増やしていこう!
そう思い始めたのが、毎日15分でも、30分でも、時間を確保して、自分から湧き上がるやりたいことに取り組む「アトリエ時間」だった。
▼当時影響を受けお勧めしまくり友人20人くらいが手にとった本
(この本ではアート思考という名前ではなく、”ビジョン思考”という名前で触れられています)
▼そして分かりやすくてこちらもお勧め
3:誰に強いられるでもない自分のテーマ
話は子ども達に戻ります。
「自分だけの正解を作る」ための創造性を子ども達に持ってもらいたいと思った時、私はまず自分の授業枠の「5分」だけでもいいから、自分で好きなようにまずは「創造」してみて欲しいと感じました。
たった5分。テーマは自分の好きなことや興味があること。
逆に言うと、ここで創造性を発揮できずに、子どもたちはどの場所で創造性を発揮せよというのか・・ってくらいです。
子ども達に、「テーマは自由に選んでみて」というと、子どもたちはちょっと戸惑うような、嬉しいような表情をします。
そりゃそうです。
学校では、学校の教科の発表が当たり前だし、家では大好きなゲームやマンガを読んでいて、叱られることはあっても、褒められることなどないのですから。
子どもたちは、親や学校に求められる「他人モード」のテーマではなく、自分が心から踊る「自分モード」のテーマへと、大きく舵を切るのがこの学校という場所です。
最初はドキドキしますよ。だって、親や学校を意識した他人モードのテーマの方が、褒められることや、賞賛されることは見えているじゃないですか。
でも、選ぶんです。自分だけのテーマを。そして、そのテーマを授業づくりを通して、じっくりと探求していくんです。誰も答えを持っていない、自分のハートとテーマにぐっと潜る、探求の時間です。
誰に強いられるでもない、自分で選んだテーマを思う存分に探求していく。これこそが、「自分だけの正解を作る」力になっていくと私は信じています。
<お知らせ>
そんなアート思考の学びと、子どもが教える学校がコラボした「トークセミナー」がこの度初開催となります!
コラボしていただくのは、私に最初にアート思考の考え方を教えてくださった、Shibaさんこと柴田雄一郎さんです。
詳細はこちらから ぜえったいお勧めです!!!
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