重なる偶然に高まる期待・・(奄美大島のコト:VOL.2)
はじめての奄美大島、
「他の南の島と大差ない・・」と
期待を持てなかった家族旅行の続きの話。
・
しかし、夫が予約した
ナイトツアーに参加することで
私の思い込みはがらっとくつがえされた。
ツアーは市街地から1時間ほど
車を走らせたところにある。
集合場所である駐車場に車をつけて、
エンジンを切り、ドアをバタンと閉め、
思わず夜空を見上げて息をのんだ。
満天の星とはきっと
こういうことを言うのだろう、
天の川もはっきりと見えた。
あたりは静まり返って
秋の少し早い訪れを告げる
虫の音しか聞こえなかった。
十数メートル先にあるのだろう、
集合場所に歩いていくのも
暗闇の中で目をこらしながら、
そんな状況だった。
あ、これ多分マジなツアーだ!
期待できる!
私の中の野生の勘が働いた。
・
その場にいたツアーのガイドさんとあいさつ。
この晩は、3家族が参加するらしい。
横をちらっと見ると、
本格的なカーキ色のジープが停めてあった。
自衛隊でも使われているタイプで、
昭和53年式と私と同い年らしい。
ひとめ見て、頑丈な作りであることは
素人でも明らかで、車体にはドアが
あるような・・ないような、いつでも
乗客を降り落とす準備完了といった車だった。
ジープについて語るガイドさんは、
声高で落語家のよう、この静けさに
不釣り合いなほどトークは軽快だった。
その口調は標準語で、この壮大な
自然に惹かれ、都会から移住してきたのは
容易に想像がついた。
暗闇の中の風貌が、息子の保育園の
クラスメイトのパパにどことなく似ている・・
というわけで、彼の事を「こはるちゃんパパ」
と呼ぶことに心の中で決めた。
頭の上から降り注ぐ天の川
漆黒の闇から聞こえる大群の虫の音
私と同い年の本格的ジープ
こはるちゃんパパ
役者がばちっとそろった感じだった。
さぁ、楽しませてもらおうじゃないか!
そして、同じツアーに参加する
残り2組の方々と暗闇の中であいさつを
始めた時、夫がここで声をあげた。
「えっ!オカダさん?うそでしょう。」
なんと全参加者3組の中に、
夫が通っていた美容院の
担当美容師さんが参加するらしい。
東京から「1300キロ」離れている奄美で、
さらに市街地から「1時間」車に揺られた場所での、
たった「3組」しか参加しないツアーでだ。
しかも、最近夫は床屋に浮気中で
ちょっと気まずいという要らぬ演出つき。
まぁ、これはどうでもいいが・・
あ、これマジなやつだ!
旅先で重なる偶然に
これは必ずいい時間になると
期待感が高まる。
いざジープに乗りこみ、
こはるちゃんパパの「振り落とされないで・・」
の一言を掛け声に山道をあがっていく。
こはるちゃんパパが木々を
ダイレクトに照らす、
ハンドライトだけが頼りだ!
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