【え、ウソ⁉】領海侵入って違法じゃないの!?(条件あり)
日本固有の領土である沖縄県尖閣諸島に、中国海警局などの船が日本の領海に侵入する事案が後を絶ちません。実際、先月(2024年7月)も中国の公船が尖閣諸島の領海内に進入し、日本の海上保安本部が同船に対し、領海内に入らないように警告と監視を行いました。
尖閣沖 領海侵入の中国海警局の船3隻 42時間余航行し領海出る (NHKニュース)
沖縄 尖閣沖 中国海警局の船1隻が日本の領海侵入 海保が警告(NHKニュース) etc.
これに対し、ネットやSNSを中心に日本政府の対応に以下のような批判の声が上がりました。
「領海侵入とはけしからん!日本政府は何をやっているんだ!」
「外交ルートを通じて厳重に抗議!?相変わらず中国に弱腰だ!」etc.
しかし、日本も中国も加盟する国連海洋法条約「第三節 領海における無害通航」において「無害通航権(=違法じゃない!)」が認められていることを御存知でしょうか。
本分析では、「無害通航権」の定義や詳細を確認するとともに、中国が国連海洋法条約などの国際法をよく理解し、外交や防衛の「武器」として利用しているかについて、検証をしていきます。
そもそも、領海って何だっけ?
まず、領海の「無害通航権」を理解する前に、領海に関する定義を確認しておきます。国連海洋法条約の諸規定を見ていきます。
「いずれの国も、この条約の定めるところにより決定される基線(海岸の低潮線)から測定して十二海里(約22km)を超えない範囲でその領海の幅を定める権利を有する。」 (同条約第三条)
「沿岸国(日本)の主権は、その領土若しくは内水又は群島国の場合にはその群島水域に接続する水域で領海といわれるものに及ぶ。」(同条約 第二条 第一項)
「領海に対する(沿岸国の)主権は、この条約及び国際法の他の規則に従って行使される」(同条約第二条 第三項)
難しい言葉が並んでしまって「もう嫌だー」と思われた方もいるかもしれませんが、すごくざっくり言うと、「(上の図表の)低潮線という線から、12海里(約22km)までの海(領海)には、国際法によって保障されている権利を日本が主張していいんですよ!」ということです。
その一方で、国連海洋法条約は、日本の主権的権利が及ぶ領海において、他国船舶の「無害通航権」を認めています。この無害通航権があるため、「中国の艦船などが、日本の尖閣諸島周辺の領海に入っても、直ちに違法にはならない」のです。
では、その「無害通航権って何なの?」について次に解説していきます。
因みに、その他の「内水」、「接続水域」、「排他的経済水域」、「公海」においても、沿岸国や旗国(国際的に航行する船舶は、どこの国に所属している船舶なのか、旗を掲げなければいけない【同条約第九十二条など】)の権利がそれぞれ定められていますが、これらの水域も説明してしまうと、かなり複雑になってしまうので、本分析では省略させていただきます。
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