マスクをつけて、紙吹雪をまこう
コロナウイルスのせいで、ミラノの雰囲気はどこか暗い。
街はいつも通りで、歩いている人もいるし店も開いてるけど、やっぱり少しピリピリしたものを感じる。人とすれ違うときも「お前は違うよね、大丈夫だよね」って、そんなピリッとしたやりとりをしているような気がする(自分がアジア人だからじゃなくて、一般論って意味です)。自分は今のところコロナウイルスが原因で差別的な扱いを受けたことはないけど、やっぱり街中を歩くときは身構えてしまう。
イタリアでは21日以降、感染者が爆発的に増えた。5日間のうちに107倍くらいになったので、国中が少しパニックになっている。スーパーには食料品を買いだめしようと人が殺到し、美術館や公共施設は閉鎖された。学校もすべて休みになり、今週は家の中で娘が走り回っている。
ニュースも新聞もTwitterも、話題は全部コロナウイルスだ。情報をアップデートするのは大切だけど、あまり長々と見ているとだんだん頭が麻痺して、ただ怖いだけになってくる。そしてその怖さは差別につながる。
妻の同僚に言わせると「料理番組でも見てたほうがマシ」だそうだ。いやまったくその通り。料理番組はお腹が空くので気力が湧いてくる。
あまり家の中にいるのもストレスがたまる。人の少ない時間を見計らって娘を公園に連れて行ったら、地面はコリアンドロだらけだった。コリアンドロとは、ヴェネチアのカーニバル時期に、子供が街中にばらまく紙吹雪のこと。
いつもこの時期は地区ごとにカーニバルのお祭りがある。子どもたちは仮装をして、大喜びでこのコリアンドロをまきながら街中を練り歩く。だけど今年は学校も休みになり、お祭りも自粛ムードなので、公園くらいしかまく場所がない。
今年はヴェネチアの仮面じゃなくて、医療用のマスクをつけたカーニバルになるかもしれない。でもこんな時だからこそ、時には怖いのを忘れて紙吹雪でもまいて楽しみたい。公園のコリアンドロは、なんとなく、いつもの年より少し多いような気がした。