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ボツネタ帳【ダーツの旅】

今回のボツネタは『ダーツの旅』というコントです。よろしければご一読ください。

ボツ理由

設定は面白そうだったのだが、こういう番組、他にあるっぽいぞ、非現実のつもりが既に現実であるっぽいぞ、となってしまいボツに。車、用意できませんし。

あらすじ

日本テレビ系『1億人の!?大質問笑ってコラえて!』の中の人気コーナー『日本列島 ダーツの旅』。所さんが日本地図にダーツを投げ、当たったところに取材に行く。今回の行先は・・・。
登場人物は2人。AとB。Aは都心で働く会社員。30代。Bは『ダーツの旅』のスタッフ。20代。

台本

新宿駅西口。パラパラと小雨が降っている。スーツを着たAは耳に携帯電話をあて、会社に電話をかけている。

(明転)

A「もしもし。お疲れ様です。たった今、新宿駅に着きました。まだ雨降っているので、止んだら会社戻りますね。すみません、傘持ってなくて。はい、資料確認しておきます。」

Aは電話を切り、手に持っている通勤カバンの中に手を入れ、資料を確認する。
Bが助手席に乗った車が通りかかる。BはAを見つけ、声をかける。

B「お父さん、何されてるんですかー?」

Aは、声をかけられているのが自分だとは思わず、Bを無視してしまう。
Bは再度、Aに声をかける。

B「お父さん、いま何されてるんですかー?」

Aは、声をかけられているのが自分であることに気づく。

A「え、おれ?」

B「はい。お父さん、いま何されてるんですかー?」

A「え?何って。仕事してて、会社に戻るところですけど。」

Aは、車に乗った若者に突然話しかけられたため、状況がうまく飲み込めない。Bは続ける。

B「お父さん、お仕事されていたんですね。今お時間大丈夫ですか?」

A「ああ、はい。すみませんが、どちら様ですか?」

B「僕たちね、東京のテレビ局から来たんですよ。」

A「東京?ああ、そうなんですね。ここも新宿駅だから東京だけど。」

B「お父さん、『所さん』って知ってますか?」

A「え?知ってるよ、所ジョージでしょ。いつもテレビで見てますよ。」

B「そうですか!よくご存知ですね。僕たち『ダーツの旅』です。」

A「え?『ダーツの旅』?」

B「はい。」

A「・・・え、新宿に!?」

B「はい。新宿に。」

A「えっと、『ダーツの旅』で、新宿駅に当たったの!?」

B「はい。そうです。」

Aは驚きを隠せない。何が起きているのか気になって、Bに問う。

A「ちょっと待って。あれって、田舎の方に行くんじゃないの?」

B「いつもはそうなんですけど、今回は所さんが『ブル当てるぞ!』って言い出しまして。」

A「ブル?あの、ダーツの真ん中のやつ?」

B「はい。それで、日本地図でいうと、ちょうど新宿駅がブルだったんです。」

A「新宿駅がブル?」

B「はい。そういうわけで、お父さんは第一村人ですね。」

A「いや、村って。ここ村じゃないでしょ。これ、テレビで放送されるの?」

B「はい。お父さんは第一村人なので、確実に映ります!今回はスペシャル版ですし!」

A「スペシャル版?新宿駅が?いいの?」

雨が、まだ降っている。

B「それで、今お時間大丈夫ですか?」

A「ああ、雨止んだら会社戻ろうと思ってたけど。まだ降ってるから、まあ大丈夫かな。」

B「良かった!お父さん、お話伺ってもいいですか?」

A「まあ、いいですよ。いつも見てるし、せっかくのスペシャル版だし。」

Aは、興味が湧いてきてインタビューに答えることにする。

B「ありがとうございます!じゃあ、インタビューしますね。」

A「ああ、はい。こんなことあるんだなあ。」

B「お父さん、手に持ってるもの、何ですか?」

A「これ?会社のカバンだけど。」

B「へえー!ちょっと貸してもらっていいですかね?」

A「え?いいですけど。普通のカバンですよ。」

AはBにカバンを渡す。

B「重い!これは、中身がぎっしり詰まってますね!」

A「なんか、野菜みたいに言ってる?無理やり『ダーツの旅』っぽくしてない?」

Bはカバンの中身を漁る。

A「ちょっと!大事な書類もあるからあんまり雑に扱わないでよ。」

Bはカバンから書類を取り出す。

B「お父さん。これは何の書類ですか?」

A「それは、契約書類です。今ちょうど営業行って、契約取ってきたんですよ。」

B「すごい!じゃあ、取れたてですね!」

A「また野菜みたいに!」

Bは契約書類に目を通す。何かを見つけたように、書類を見ながらAに話しかける。

B「あれ?この契約って、もっと金額上乗せできませんか?」

A「え?本当に?」

B「だってほら、こっちのキャンペーンで契約すれば、契約金200万上乗せできて、お互いにメリットありますよ。」

A「あー確かに・・・君すごいね。」

B「取れたての案件は、見積もりが、甘いですね!」

A「やめてくれない?また野菜みたいに言わないで?」

B「これ、いただいてもいいですか?」

A「ん?いただく?」

B「ひと口いただきますねー。」

A「え?ひと口?どういうこと?」

Bは契約書類を食べようとする。Aはそれを必死で止める。

A「ちょっと!何してんの!」

B「お父さん、これ恒例なんですよ。キュウリとかもらって、ひと口食べる流れ。見たことありませんか?」

A「見たことあるけど、あれは野菜だからでしょう!これ大事な契約書類だから!雨に濡れちゃうし、やめろよ!おい!」

B「お父さん!ひと口食べるシーンは視聴率が良いんです!ここは従ってください!」

A「だからって紙食べるのはおかしいだろ!おい、やめろ!」

AとBは契約書類を引っ張り合いながら、もみくちゃになる。

引っ張りあっているうちに、契約書類が破れてしまう。

A「うわ!何してんだよお前!大事な契約書類がー!」

B「お父さん、力が強い!まだまだお若いですね!」

A「うるさい!どうしてくれんだよ!おい、聞いてんのか!?」

Bはスタッフ同士で話し始める。

B「え?今のシーンの素材が足りない?お父さん、もう一度紙破ってもらえますか?」

A「ふざけてんのか!?」

2人は再び、もみくちゃになる。

(一旦暗転)

そして1週間が経った。Aはいつものように仕事を終え、自宅に帰ってくる。

ナレーション「1週間後。」

A「ただいまー。」

(明転)

Aは、リモコンでテレビの電源をつける。

テレビから音声が流れる。

「フーウーヤイヤイヨーウーイエー♪ 日本列島ダーツの旅。1億分の、東京都新宿区!」

Aは、自分が取材された回の放送だと気づき、注意深くテレビを見る。

A「あれ?これもしかして。」

テレビの音声は続く。

「第一村人発見!」

A「おお!俺が出てるやつじゃん。」

Aがテレビを凝視する。テレビの音声は続く。

「お母さん、こんにちは!」

A「カットされてる・・・」

終わり

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鈴木ジェロニモ
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