ボツネタ帳【お茶】

お久しぶりのボツネタは『お茶』というトリオ用のコント。元々はシカゴ・ブルーズという4人のユニットコントライブのために書き下ろしたが敢え無く撃沈。簡略化してトリオ用にするも使いどころがなく。よろしければご一読ください。 #ボツネタ帳

ネタの着想

私は学生時代に某出版社でアルバイトをしていた。ある日、お客様に出すお茶の個数を間違えてこっぴどく叱られたことがあった。社員さんには申し訳ないことをしたと思っているので、謝罪の意を込めて。謝辞。

ボツ理由

クライアントが持っていたイメージと異なっていたためボツ。事前のすり合わせが大事。

配役

A:広告代理店の営業マン。
B:取引先メーカーの社員①。
C:取引先メーカーの社員②。Bの部下。
AとBは同性の方がいいかと。ABCの順番で、男男男、男男女、女女男、女女女、のパターンが可能です。

あらすじ

場所は、会社の会議スペース。Aが、商品プロモーションの打ち合わせのために、BとCが勤める会社にやってくる。しかし電車が遅延したため、Aは急いで、走って、会社を訪れることになった。BはAを迎え入れ、Cにお茶を頼む。しかし・・・

台本

舞台中央に会議机1脚と椅子2脚。机を、椅子2脚で挟むように設置。
Bのみ暗転板付き。

―明転―

Aが下手袖から走って登場し、上手側の席に座っているBに挨拶をする。
A「遅くなってすみません!私、株式会社トゥモローエージェンシーのAと申します。本日はよろしくお願いします」
Bは立ち上がってAを迎え入れ、対面の椅子に座らせる。
B「お待ちしておりました。こちらにお座りください」
A「はい、失礼します。すみません、電車が遅れていまして」
Aが息切れしながら椅子に座る。Bは、近くにいたC(舞台下手袖待機)にお茶を要求する。
B「まあまあ、冷たいお茶でも飲んで、落ち着いてください」
A「すみません、お気遣いなく」
B「いいんです。私も喉乾いてましたから。Cくーん」
Cが舞台下手袖から登場する。
C「はい、何でしょうか?」
B「お茶、お願いしていいかな」
C「わかりました。すぐお持ちしますね」
Cが下手袖にはけ、お茶を準備する。Aは恐縮した様子で、打ち合わせを始めようとする。
A「すみません、助かります。それでは早速、御社の商品プロモーションについてですが、まずはこちらの資料をご覧ください」
AはBに紙資料を手渡す。Bは念入りに読み始める。
B「ありがとうございます。読ませてもらいます」

-----くだり①-----
Bが資料を読み始めると、Cが下手袖から登場する。コップ1杯のお茶をお盆に載せて、AとBに声をかける。
C「お待たせしました。お茶どうぞー」
Cは机の上に1杯のお茶を置く。置いたらすぐに下手袖にはける。
A「ありがとうございます」
Bが資料を読んでいる間に、Aはお茶を飲もうとする。しかし、Aが手を伸ばすと、すかさずBがお茶を奪って飲んでしまう。
A「あ・・・」
B「ゴクゴク・・・」
Bはお茶を飲み終えると、何もなかったかのように再び資料を読み始める。
A「あれ」
自分のためのお茶だったのではないか、と不審に思ったAは、恐る恐るBに尋ねる。
A「あのーすみません」
B「はい?」
A「あのー、お茶って・・・」
B「お茶?」
Bは数秒考えたのち、気づいたように話し出す。
B「あ、お茶ですね。ちょっとCくーん」
Cが下手舞台袖から登場する。
C「はい、何でしょうか?」
B「お茶、お願いしていいかな」
C「はーい。すぐお持ちしますね」
Cが下手袖にはけ、お茶を準備する。
---------------
A「ああ、はい。さっき持って来てくれたんですけどね」
B「資料、もうちょっと読んでいいですか?」
A「はい、どうぞ」

(くだり①を繰り返す。お茶のコップはその都度回収し、同じコップにまたお茶を用意する。Aの中で徐々に疑問が強まっていく)

さすがにおかしいと感じたAは、Bに申し出る。
A「すみません」
B「はい?」
A「これおかしいですよね?」
B「おかしい、と言いますと?」
A「2人いるのにお茶1杯って。しかもあなたすぐ飲んじゃうじゃないですか」
Bは数秒考えたのち、気づいたように話し出す。
B「あー、足りなかったですね」
A「一旦考えなくても、私の分が足りないってわかりますよね」
B「Cくーん」
Cが下手舞台袖から登場する。
C「はい、何でしょうか?」
B「ごめん、これじゃあ足りないみたい」
C「わかりました。すぐお持ちしますね」
Cが下手袖にはける。
A「もう、自分で持って来ましょうか?」
B「いいんです、座っていてください。お客様にそんなことさせたら失礼ですから」
A「もう十分失礼だと思いますけど」
Cが下手袖から登場する。コップ1杯のお茶と、ストロー1本をお盆に載せて、AとBに声をかける。
C「すみません、こちらどうぞー」
Cは机の上にコップ1杯のお茶と、ストロー1本を置く。置いたらすぐに下手袖にはける。
A「え、ストロー?」
B「ありがとうねー」
A「いや、足りないってストローのことじゃなくて、お茶が」
B「すみません、いま資料読んでるのでちょっとお静かに」
A「変ですよ?」

Aは、Bが資料を読むのを待つ。Bが資料を読んでいる間に、Aはお茶を飲もうとする。しかし、Aがお茶に手を伸ばすと、すかさずBがお茶を奪おうとする。

A「はいストップ。これ、いまおかしいです」
B「はい?どうされました?」
A「私がお茶を飲もうとすると、あなた奪いますよね」
B「これは私のコップなので」
A「いや、さっきからずっと飲んでるじゃないですか」
B「あれ、言ってませんでしたか。うちの会社、経費削減で『マイコップ制度』を導入しているんですよ」
A「マイコップ制度?初耳ですね」
B「社員が1人1コップ登録していて、お客様にも担当社員と同じもの使っていただいています」
A「いや、何ですかその制度」
B「経費削減のためですので」
A「だとしても、同じコップ使うのは抵抗があるんですけど」
B「そのようなお客様には、経費のかからない安価なストローを配布しています」
A「ああ、それでこのストロー?」
B「はい。同じ釜の飯を食うじゃありませんが、同じコップのお茶を飲むってなもんで」
A「何言ってるんですか?」
B「飲みたいですと言っていただけたら、分けたのに」
A「いや、この制度を知らなかったので」
B「お茶を飲みたいのであれば、そのストローで飲んでください」
A「これで?あなたのコップから?」
B「はい」
A「いや、さすがにおかしいですよ」
B「他のお客様からは、打ち合わせがスムーズになると好評いただいていますが」
A「この制度が?おかしいですって」
B「まあまあ、落ち着いて。私が手本を見せますから」
A「手本?」
B「では、コップからお茶を直接飲んでみてください」
A「はあ」

Aはコップを持ち、直接口をつけてお茶を飲もうとする。するとBがテーブルに置いてあったストローを咥えて、無理やりコップにストローを入れてお茶を飲もうとしてくる。

A「ちょっとちょっと、何してるんですか」
B「こうすれば飲めますよ」
A「いや、やめてください。無理です。こんなに近づかれると怖いです」
B「じゃあ、お互いストローにしましょう」
A「いやそういう問題じゃなくて」
B「Cくーん」
Cが下手舞台袖から登場する。
C「はい、何でしょうか?」
B「ごめん、ストローもう1つお願い」
C「わかりました。すぐお持ちしますね」
Cが下手袖にはける。

A「え、ストロー追加ですか?」
B「はい」
A「1つのコップにストロー2本って、カップルみたいになるじゃないですか」
B「まあまあ、落ち着いて」
Cが下手舞台袖から登場する。テーブルの上にストローをもう1本置く。
C「お待たせしました。こちらお使いください」
A「いや、いらないんですよ」
Bは、Aの分のストローもコップに入れ、コップからストローが2本出ている状態になる。
B「ほら、お茶飲んで落ち着きましょう」
A「落ち着けません。もう帰ります」
B「ちょっと待ってください。まだ大事な打ち合わせが終わってませんよ」
A「もういいです、帰ります」
B「これはいけない。Cくーん、Cくーん」
Cが、口にストローを咥えた状態で登場する。
A「え?これはどういうことですか」
Aが帰ろうとすると、両サイドのBとCが帰らせないように道をふさぐ。BとCは両者とも口にストローを咥えている。BとCは口のストローを鳥のくちばしのように器用に扱い、Aを威嚇してくる。
A「鳥みたいな動きやめてください。ふざけてるんですか」
B「お茶飲んで落ち着きましょう」
C「そうしましょう」
A「なんなんですか・・・わかりましたよ、打ち合わせしますから」

Aが元の椅子に座る。BとCは安堵の表情を浮かべ、コップのお茶を2人でストローで飲み始める。
A「え?え?何してるんですか」
BとCは言葉は発しないが、表情でAに訴えてくる。コップに入っている残りの1本のストローでお茶を飲むように、Aに要求してくる。
A「私も?え、3人で飲むの?」
BとCは、Aが戸惑っている間もしつこく要求を続ける。Aはその場の空気から、やるしかないと悟り、恐る恐るストローでお茶を飲み始める。

3人は顔を寄せながら、机の上にあるコップ1杯のお茶を、それぞれストローで飲んでいる。

このあとAはどういうリアクションするのか?と期待させるような間をあける。

Aは、照れるように微笑む。その表情を見たBとCは、Aと心が通じたかのように微笑む。3人は笑顔でお茶を飲み続ける。

終わり

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鈴木ジェロニモ
大きくて安い水