歌舞伎=ジェット旅客機説
「風の谷のナウシカ」菊之助+七之助で歌舞伎化だそうで、おめでとうございます。
ちょっと計算するとわかるんですが、「ワンピース」「NARUTO」「ナウシカ」…とこれ以上ない人気/評価のIPが歌舞伎化されるって、ちゃんと予算をかけてスケール感をだすことができるからですよね。
こういうプロジェクトのトレンドをつくったのはワンピースがはじめだとおもいます。どういう計算があったのか?
歌舞伎座 総席数1964x15000(大まかに平均のチケット料金)xひと月の上演日数25日=736.5百万円。さらに、ワンピースのときは昼夜同じ演目で2ヵ月のロングランだったので、736.5x2回/日x2ヵ月=2,946百万円=約30億円。 (ワンピースが上演されたのは新橋演舞場/1428席ですが、概算なので歌舞伎座で試算してます)
ここで稼動率を7割と想定します。なぜ高稼働率を想定可能かというと、歌舞伎座の観客は変わった趣向になれているから。マンガ/アニメに限らず、「マハーバーラタ戦記」=インド神話 「NINAGAWA十二夜」=シェイクスピア 「百合若丸弓軍功ユリシーズ」=なんとジェームズ・ジョイス!というのは嘘でギリシャ神話 …という風にいろんなネタが歌舞伎化されてきていてそれぞれちゃんとお客さんが入った実績がある。さらにそれぞれの役者の後援会があって固定票として読める部分もある。
なので7掛けと考えると、おおまかにいちプロダクションで20億円の売上を見込むことが出来た。ワンピース歌舞伎では舞台も衣装もきちんとスケールの大きなものを作っていましたが、現代の歌舞伎は高額チケットがあたりまえなのに客足はある程度安定しているので、当たり外れのぶれがそう大きくないと思われ、そこから逆算して製作できるのであまり怖気づかずにいいものが作れるんだと思います。
ちなみに今回のナウシカは、昼夜通しで1ヵ月上演だから7億円強の7掛けで昼の部のプロダクションで5億円+同じく夜の部で5億円。
あとは宣伝ですが、例えば同規模の製作費の映画などに比べたら、「ナウシカがなんと歌舞伎に!」とみんな話題にしてくれるので宣伝費がかなり圧縮できるので、比較問題ですがその分も製作費に回すことが出来る。
ワンピース/Narutoとも2.5次元化されてますが、席単価の限界となによりも劇場確保期間の制約がありますから原作の人気や格にふさわしい壮大なスケールの舞台にしようとすると、結局いきつくところ最後は歌舞伎になっちゃうんだと思われます。
大人気キャラクターの商品化/ライセンス展開の、ある種のゴールがジェット旅客機ペイントになるみたいなイメージ。
ブロードウェイミュージカルだって、投資家集めて、シカゴその他でトライアルの公演をやってみて…と かなりおっかなびっくり開発されるわけですから、そこをあっさりスキップして凄いものを製作・上演・展開することができるって、歌舞伎の伝統ってビジネスモデルとしても成熟してるんだなと思いましたけれども。