無知ゆえの最高の選択
仕事もプライベートも全てにおいて他人と比較し、平均よりも上を目指していた。
周囲よりもいい会社に入社して、
同期よりも早く出世して、
顔面偏差値の高い妻と結婚し、
2人の子宝に恵まれて、
若くしてマイホームを手に入れ、
身の丈に合わない高級車に乗っていた。
見栄なのか、コンプレックスがあったのか……振り返ってみると無知だったと痛感する。
知ってる世界が自分の周りだけ
ぼくは中卒で大企業に入社し、最終学歴は高卒。
運よく大手メーカーに勤務していることで、今となっては高額所得者の仲間入りを果たせそうだ。
会社におんぶに抱っこで、大きな苦労もなくアラフォーまで生きてこられた。
クソガキだった15歳のぼくを、それなりの大人に育ててくれた会社には感謝しかない。
そんなぼくは、人生の半分以上を今の会社で過ごしている。
高卒の周りは低学歴ばかり
高卒がいいとか悪いとか言うつもりは毛頭ない。
高卒が就職する先は低学歴が多くなるし、学部卒以上が就職するところは高学歴が多くなる。
企業ではそういう傾向が強いと言うだけ。
ぼくはその高卒職場の中でいい気になっていた。
言われたことを卒なくこなすだけ、
大きなミスをせずに前向きに取り組むだけ、
飲み会に参加して場を盛り上げるだけ、
むずかしい仕事はほとんどない中で、自分は優秀だと勘違いしていた。
無知で天狗だった自分の選択
何度か社内で部署異動を経験していたが、どこへ行ってもそれなりに仕事ができることで上司や先輩からはかわいがられた。
こんな経験が続いたことで天狗になっていた。
当時の正直な気持ちは「仕事ってちょろいな。」
仕事は順調に昇進、
家庭では妻と2人の子供と犬に囲まれ、
対外的には幸せそうに振る舞えていたと思う。
でも、なんだか刺激が足りなかった。
会社員人生で最大の決断
突然、海外出向のチャンスが巡ってきた。
ぼくの所属していた部署ではあり得ないことだったが、全社制度でグローバル人材の育成を目的に対象が拡大していた。
その話を聞いたとき、ほのかに胸が躍った感覚が忘れられない。
すぐに妻を説得し、選んでもらえるように行動した。
直属の上司経由で希望を伝え、
選任の権利がある次長を調べ、
海外出向の社内規約を読み漁り、
出向経験のあるひとの話を聞いた。
心の準備は万端。
いつでも辞令を受ける態勢を整えた。
しかし、後輩に決まりかけていると上司から聞き、絶望した。
次のチャンスなんて来ないかもしれない。
どうしても諦められなかった。
選任権を持つ次長がいる飲み会で行動を起こすことに。
「海外出向に行かせてください」
ド直球に伝えた。
「お前、行きたかったのか?!わかった。考えておく。」
上司がぼくの希望を伝えてなかったことに腹が立つのを堪え、次長に想いをぶつけておいた。
ここからぼくの人生は大きく動き出した。
自分の無知さに気付かされた
海外出向に行くことが決まり、ウキウキ気分で関連部署へ異動。
そこで待ち構えていたのは、今まで一緒に働いたことのない総合職の上司と先輩。
なんとかなると軽く考えていた自分の甘さに震えることになる。
会社は総合職が回している
今まで自分を中心に世界が回っていると勘違いしていた。
しょせんぼくは高卒。
異動した初日から、会社にとってはただのオペレーターだったと思い知らされる。
ぼくを指導してくれる先輩は3つ年上のイケメンだった。
京大工学部の院卒。
ぼくの偏差値とは天と地ほどの差がある。
もう1人の先輩も、阪大工学部の院卒。
オフィスにはびっちり高学歴が並んでいます。
こんな世界があるんだ。
こんな優秀な人たちが会社にいたんだ。
すげーなぁ…。
改めてすごい会社だと強く感じた。
必死で仕事にくらいつく日々
自分で決めたことだから、ガムシャラに働いた。
さっぱりわからないことばかりだけれど働きまくった。
会議に参加しても知らない単語が飛び交い、呪文を聴いているかのよう
打ち合わせに同行しても、わからなすぎて眠くなる
朝から夜遅くまで海外の生産システムについて仮説検証
設備メーカーに出張して遅くまで条件設定
慣れない資料をつくっては先輩に修正させる
海外との英語での電話会議はさっぱり理解不能
今まで仕事ができると勘違いしていた自分はもういなくなっていた。
社内の高卒職場と、総合職の職場のレベルは雲泥の差。
ぼくは泥の職場でいい気になっていただけだった。
海外出向先でも学ぶことばかり
海外拠点に赴任してからも、上司や職場のメンバーはみんな総合職。
仕事の進め方などは日本でどうにか付け焼き刃で身につけたが、次は言葉や文化の壁が立ちはだかる。
そして、厳しい上司にも恵まれることに…。
とにかく夢中で働いた2年間
激動の2年間だった。
知らない国で、会ったこともない上司、初めての仲間、言葉も通じない中での仕事。
なにをどうがんばっても失敗からスタートする。
転んで学んで。
またコケて覚えて。
失敗して身体に叩き込んで。
怒られて記憶して。
人生でイチバン失敗して、イチバン怒られた2年間だった。
働いている最中は、どうしようもなくイヤな気分になったこともあったけれど、乗り越えて大きく成長できた。
振り返ると、簡単には手に入らない貴重な経験を得られたと確信している。
無知でよかった。無知のままじゃなくてよかった。
無知だったことで、お気楽に総合職の職場に異動できた。
無知だったことで、海外出向を気軽に選択できた。
無知だったことで、重い決断を気づかずにできた。
当時の自分が無知でよかった。
そして、自分よりもはるかに優秀な人たちと働けてよかった。
自分の能力を過大評価したままだったら、とても恥ずかしいアラフォーになっていたことだろう。
あの時の、あの決断、あの行動が今のぼくをつくっている。
これからも慢心せずに成長していく。
#あの選択をしたから
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