パン
パンの話。
小さい頃は家の前までロバのパンが来ていた。
もちろん驢馬で来た訳ではなく、小さいバンだったけど。
小学生の頃、チーズ蒸しパンを知ってその美味しさに衝撃を受けた…と友達が言っていた。
我が家はパンと言えば食パンか自家製蒸しパンだったのであまり食べた記憶がないけれど、友人の話はとても大げさだと思ったのですごく覚えている。
高校生の頃、お昼休みの時間だけ地元のパン屋さんが売りに来ていた。
いつもお弁当持たされていたけど、なぜかそれが嫌で、お弁当は残してでもパンを買いに行っていた。
お小遣いなんてほとんどもらってなかったから、一番安いのしか買えなかったし、紙パックの飲み物も買えなかったけど。
大学生の頃、生まれて初めてマクドナルドに行ったけれど、期待とは裏腹に全然美味しいと思えなかった。
何事もハードルを上げすぎると良くないということを知った。(もちろん今は普通に美味しく食べる)
社会人になり、美味しいパン屋さんに出会い、パンが大好きになった。
行きつけができた嬉しさもあり、一人暮らしなのに必要以上に買いすぎる事もあった。
妻とのお出かけも、あちらこちらでパン屋さん巡りをした。
子どもが産まれると、パンを食べなくなった。
毎日大変なので、朝からしっかりご飯粒を食べるようになった。
子どもが少しづつ大きくなって食べられるものも増えてきたので、最近はたまにパンを食べるようになってきた。
まだ食パンの柔らかいところぐらいしか食べないから、いつか小麦をガツンと感じる固いパンの美味しさを教えてあげたいけれど、もしかしたら子がハード系の魅力に気づく頃には、自分の歯や顎や胃腸がソフト系しか受け付けなくなっているかもしれないと憂いている。