日常に溶け込む聴覚のサポート
AirPods Pro 2 の補聴機能
「なんだか聴こえにくいなぁ」という自覚症状は、誰しも経験があるようだ。
日本だと軽〜中度の難聴者が増えているらしい(※カナル式のイヤホンが普及したせいだろうか)。
下記サイトによれば、全年齢の約10.9%(約1,390万人)が、何らかの聴こえにくさを自覚しているとされる。
耳の聴こえにくさを緩和する機器で、真っ先に思いつくのが"補聴器"だ。
だが、購入にはハードルがある。
一般的な相場が10万円〜ということで、すぐに飛びつけるものでもない。
こうした状況に応えるため、Apple が AirPods Pro 2 に補聴器機能を追加したというニュースを目にした。音楽や通話だけでなく、生活の中での"会話"全体をサポートするデバイスとして、すでに提供が開始されている。
何よりも、自分で使ってみることが大事だと思っている僕としては、早速、このデバイスを購入して、いろいろと調べてみた。
このnoteはその記録だ。
そもそも信頼に値するのか
僕は、補聴器を利用したことがない。
また、身近で使っている人もいない。
そのため、一般的な補聴器について何も語れないが、それが医学的に適切な認定がなされた機器であり、症状にあった細かな調整ができる、ということはわかっている。
この"医学的に"というところに、僕も含めて、皆が盲目的な信頼を感じていると思う。
では、AirPods Pro 2 に搭載される補聴器能はどうか?
巷の情報を鵜呑みにするわけには行かないので、健全な猜疑心で調べる必要がある。
そこで、わかってきたのは次のような事実だ。
Apple Hearing Study
Appleが、ミシガン大学公衆衛生大学院と提携して行っている研究プロジェクト、"Apple Hearing Study"。ここでは、利用者の聴覚の状態を明らかにすることを目的とし、生活の中での騒音やヘッドホン使用による音量の影響を調査している。
例えば、
このような調査を実施し、約15万人以上の生体データ(オージオグラム)を収集。さまざまな環境下における"AirPods Pro 2"の補聴効果を臨床研究している。
つまり、一定の裏付けはできているようだ。
AirPods Pro 2が解決するもの
AirPods Pro 2は、聴力に問題を抱える利用者に対して、手軽な聴覚サポートを提供する。特に、会話の聞き取りを補正したり、騒音をカットして重要な音を強調する機能が充実しており、医療用の補聴器まではいかないものの、軽〜中度の聴覚補助を提供することが可能だ。
AirPods Pro 2 と一般的な補聴器の違い
AirPods Pro 2と一般的な補聴器の性能について調べたものがこちら。
価格のところでだいぶ差があり、ちょっとした聴こえにくさを解消するのであれば、AirPods Pro 2は安価に入手可能だ。
一方で、僕が気になっているのは"周波数帯域"のところ。
AirPods Pro 2がリスニング全体をカバーしているのに対して、補聴器は250〜6,000Hzと、会話中心の帯域でより精緻な補正がかけられる。
つまり、日常的な音楽や通話といったライフスタイルデバイスとしての使いやすさを取るか、精密な周波数ごとの補正を可能にし、会話の聞き取りに重点を置くのか。
ここは、個人の聴覚症状に応じて判断が必要なところであって、むやみに「AirPods Pro 2一択」とはならないと考える。
利用の流れ
同機のセッティング方法について、下記にまとめておこうと思う。というのも、AirPods Pro 2を購入して、すぐに聴力チェックができるわけではなく、やらなきゃならないことがいくつかあるからだ。
1. iOSのアップデート
まず、手持ちのiPhoneのiOSが「18.1」以降であることを確認する。
設定>一般>ソフトウェアアップデートから、iOSのバージョンを調べて、下記のような画面表示になっているかどうかをチェック。
2. AirPods Pro 2 ファームウェアのアップデート
次に、ファームウェアの確認。
iPhoneにペアリングした状態で、
設定>AirPods Proから「情報」の項目をチェックする。
おそらく購入初期だとバージョン6XXXになっている可能性が高い。
これを「7B19」にアップデートする(2024年11月1日時点の最新)。
アップデートの仕方だが、一度、ペアリングしたAirPods Pro 2を、充電ケースの中に閉まって蓋を閉じる。その状態で、iPhoneのそばに置いておくと、自動的にアップデートが開始されるというもの。
僕は、その状態で1時間以上放置しても、アップデートが開始されなかったので、App Storeで不具合のスキャンをしてもらったら上手くいった。スタッフさんの話によると、通常は30分程度置いておくと実行されることが多いとのこと。
3. ヒアリングチェックの項目有無を確認
まず、上の2つが問題なく実行されていることが前提条件。
その上で、
設定>AirPods Proから「聴覚・聴力」の項目をチェックする。
最新バージョンだと、「Appleのヒアリングチェックを受ける」というリンクがあるので、それを押して聴力検査を実施する。
4. 静かな場所に移動する
AirPods Pro 2を使った聴力検査は、健康診断などで行うものと大差ない。「ピー」とか「ブー」といった、高低の音が聞こえたらボタンを押すような流れだ。
通常、耳鼻科などでチェックする場合は、音が遮断されたテストルームで行うが、日常生活でそうした環境はなかなかないため、できるだけ静かな場所に移動する。
5. 音が聴こえたらタップする
一般的な聴力検査のような流れで、音が聞こえたら画面中央をタップする。テストの所要時間は両耳で「5分」程度だ。
ただ、実際にやってみて感じたことは、音が出るタイミングが一定のリズムになっている気がする、ということ。通常の検査だと、医療機関のスタッフさんが音の提示を人力で行っているため、提示リズムにばらつきがある。ある意味、それがあるからランダムな提示になっている気もするのだが…
同機で聴力検査をする場合は、音の出る一定のリズムでタップすることなく、あくまでも聴こえたら押すことを意識しないと行けない。
6. 結果の確認
テストが終わったら、結果を確認する。
結果は「ヘルスケア」アプリから、詳細を見ることができる。
ヘルスケアアプリの「ブラウズ」メニューを選択。
ブラウズ>聴覚>ヒアリングチェックの結果をタップする。
すると、上の画面のような「オージオグラム」が表示される。
もし、両耳に異常が認められる場合、特定の音域の聴こえにくさを調整する機能が提供される。
まとめ
最後に捕捉として1点だけ。
AirPods Pro 2のノイズキャンセリングだが、これが僕には強すぎる。
終始、水の中に潜っているような感覚に陥る。
Apple Storeのスタッフさんも言っていたが、ノイズキャンセリングによる環境音の遮断によって、僕と同じような「耳の疲れ」を感じてしまう方もいるらしい。
そうした側面はありつつも、同機は、日常生活で音楽や通話を楽しみながらも、軽微な聴覚補助を求めるユーザーにとって、手軽で使いやすい選択肢となりそうだ。
一方で、同機を使った聴覚検査はあくまでも簡易的なものである。医療用補聴器のように、専門家による詳細な検査や調整を行ったものではない。この点は注意が必要だ。
冒頭にも書いたが、カナル式のイヤホンをつけて、大きな音で音楽を聴いていると、絶えず音刺激の被曝にさらされていることになる。
聴覚健康を守るために、自分のライフスタイルや聴覚の状態に合わせて、適切なサポートデバイスを選ぶことが大切だ。新たな聴覚補助の選択肢として、今回紹介した AirPods Pro 2は大きな可能性を秘めている。