10万分の1のフラグを引く
来年の3月に手術を受けることになった。
今度は甲状腺ではなく頸頭部の耳下腺とのこと。
人は生きている間に全身麻酔の手術を何回受けるものなんだろうと気になっている。というのも、今回の手術部位に腫瘍ができる確率は「10万分の1」らしい。
麻雀で天和の出現確率が30万分の1と言われる。
天和ほどじゃないけど、小四喜ぐらいの確率はあるんだろうか。
10万分の1のフラグ、その引きはぜひ別のところで使いたいところだが、なってしまったのは仕方ない。手術も「今回までは」主治医の先生が行ってくれるようなので、しっかり神経を温存いただけるように懇願するしかない。
精密検査でアナフィラキシー
「手術をしましょう」となるまでには、約1ヶ月の検査期間があった。具体的には、細胞診検査と造影剤を使ったMRIの実施。その結果をもって、どうするかを判断しましょう、ということになっていた。
造影剤を使った検査は、これまでも何度か行ってきた。といっても、CTを撮る時の造影剤と、MRIを行う時の造影剤は別物だということを初めて知った。
そして、今回は頸頭部MRIだったが、検査中に造影剤を投与されたら、一瞬にして体がおかしい。あれ、なんだかクシャミも鼻水も止まらない。やけにむせ返る…
検査中は頭を動かさないように指示があったので、僕は必死にクシャミを我慢していたが、検査終了直後から体温が急激に下がっている気がする。寒気が止まらない。
検査室にいた看護師さんに、「いまこんな感じなんだけど大丈夫?」と事情を説明したら、結構まずい状況とのこと。人生で初めてアナフィラキシーを経験した。ちなみに、造影剤として使われていた薬は「ガドビスト(≒ガドリニウム)」。
ガドリニウムって、これレアアースだよな。なるほど、MRIの磁場に反応するように体内に金属を注射したわけだ。人間の身体に金属を打ち込んで良いことなんてあるわけがない。磁場が歪むし。
ということで、抗アレルギー剤を点滴される始末に。
主治医の先生からも「今後、MRIで造影剤を使うのはやめておきましょう」と。人間の体は本当に不思議だけど、磁場が歪むのは相当身体に悪い気がするので、アナフィラキシーで良かった。
今回のパターン
そんなわけで大変な思いをした検査だったが、結果がわかるまで一週間ぐらいかかるという。前回、僕はいきなりの癌告知を受けていたので、この手の告知には慣れている。今回はどうかなーといろいろと予想していた。
考えられるパターンは3つだ。
1)良性腫瘍
2)悪性腫瘍(転移したもの)
3)悪性腫瘍(原発性のもの)
このどれかになる。もちろん、望ましいのは1番目。良性であれば、部位と大きさを考慮して、取っておきましょうという選択になりそう。
3番目でも仕方ない。頸頭部という近い領域に2つ目の悪性腫瘍があることは看過できないけど、腫瘤が小さいうちに見つかって良かったとも言える。この場合も、切除になるだろう。
問題は2番目だ。これが一番マズイ。
甲状腺腫瘍で取りきった部位から、何らかの原因で耳下線まで組織が転移した場合は、素人目に考えてもいただけない。この場合も、切除になるだろう。
と考えていくと、わかっているのは「手術する」ということ。
それは良性でも悪性でも、また、あの首に管をつけた生活を味わわなければならないという事実。
主治医からの告知
そんな事を考えながら、1週間経過した今週月曜。ようやく結果が判明した。
主治医の先生から言われたことは、次のようなものだった。
とても微妙だ。
前回は、検査結果の告知で、いきなり「がん」と言われた。今回はそうではないけど、クラス3についていろいろ調べてみたら、偽陽性、偽陰性とか書いてあるし、これって悪性なんじゃないだろうか、と勘ぐってしまう。
さらに、手術した場合のリスクは、次のようなものがあるようだ。
片側だけ表情が変わってしまうのは避けたいけど、ここは先生の腕を信じるしかない。それに手術部位を切り開いてみて、目で見て、手で触って初めて分かることもあるし。もし、神経を取ることになっても、それは仕方ないと諦めもつく。
なので、先生にはバッサリをお願いしますと伝えた。
主治医の先生が来年4月で異動になること
主治医の先生から、手術に伴う今後のスケジュールについて説明があった際に、こんなことを伝えられた。
「実は来年の4月で別の病院に異動になります。まだどの病院か未定ですが。」
!!!
一番の衝撃で、そして残念な情報。
主治医の先生がいなくなっちゃう事実。
若いけど、物事の伝え方がとても上手で、手術痕もとてもきれいで、何よりこれまでやりとりしてきた記憶をたどると、外科医っぽくない人間味があって。
僕は信頼していたけど、異動になってしまう。
別の先生は嫌なので、今後、もし手術になったら先生にセカンドオピニオンを相談したいし、異動先の病院を教えてくれたら嬉しいと伝えた。