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VCによる投資がイノベーションに与える影響
おはようございます、すずきです。
今回は3月12日に公開された日銀さんによるレポート「ベンチャーキャピタルとスタートアップ企業のイノベーション―特許データによるビッグデータ解析―」の内容をざっくりまとめてみます。
この記事を読むと、スタートアップ企業の知財の現状や、VCによる投資とスタートアップ企業の知財との関係性がざっくり分かります。
それでは、内容に移ります。
1.結論
6割近くのスタートアップにおいて、最初にVCから資金調達した年からの特許出願件数が、比較対象企業よりも増加傾向にある。つまり、VCからの資金調達により特許出願につながっている。
※日銀の論文より抜粋。T 年は VC から最初に資金提供を受けた年。シャドーは 90%信頼区間。
あまり見慣れないグラフですが、この論文では「ベイズ構造時系列モデルを用いた Synthetic ControlMethod と呼ばれる手法」により、属性が似た比較対象企業との比較によって、標本選択バイアスを減らし、VC の投資による効果を測定したそうです。簡単に言うと、比較対象企業群が点線(および青色部分)でそれに対する各企業の優位性を見たグラフですかね。
スタートアップ企業の特許出願件数と、VCからの資金調達の関係でよくあるのは、資金調達を受けている企業と受けていない企業を単純に比較して、「受けている方が出願件数多いよ」というデータですが、これだと資金調達を受けたから出願件数が多いのか、出願件数が多いから資金調達を受けられたのか、よく分からないのです。
※日銀の論文より抜粋
こういった事情もあり、上述した手法で効果を測定したとのことです。
個人的な見解としては、資金調達と出願件数の関係を上手いこと説明する手法の1つかと思いました。自分でも今度分野を絞って効果を出してみたいものです。なお、この日銀さんの論文には補論として「ベイズ構造時系列モデルを用いた Synthetic Control Method」についてもざっくり説明がありますので、ご興味ありましたらぜひご覧ください。
ということで、結論は述べてしまったので、ここから先はもう少し周辺情報も知りたいという方向けに、論文に記載されるその他の論点をざっくり解説します。
2.スタートアップ企業の特許出願状況
下記のグラフを素直に読むと1件でも出願している企業が4割ほど、といったところですね。ただ、もちろん突出して出願が多い企業がいたりと、企業ごとにそれなりのばらつきはあるようで、一概には何とも・・・といったところですね。
※日銀の論文から抜粋
なお、関連して海外の注目スタートアップの特許出願状況と資金調達状況について、シリーズ記事を始めています。よろしければ下記も御覧ください。
海外スタートアップの資金調達と特許出願「Acorns」編
3.今後の課題
以下が日銀さんの論文による今後の課題となっています。
①機関投資家によるわが国の VC への投資拡大
②新興企業の持続的成長に資する上場機会の拡大
③知財戦略の浸透および専門人材の確保・育成
①と②は完全に専門外なので、詳しくは日銀さんの論文をご確認ください。
③は言わずもがな、といったところですね。スタートアップ企業、VCともに知財に長けた人材が不足していることが論文でも取り上げられています。先日noteの別記事にてまとめた「IP BASE AWARD」もこういった人材を少しでも増やそう、といった取り組みの1つなのでしょう。
編集後記
みなさま、本日の記事はいかがでしたでしょうか。
一昨日の「医療機器開発と知財」の記事がほかに比べてそこそこPVよかったこともあり、やはりこういった事業と知財の関わり、みたいな記事は自分も含めみなさんの関心が高いのでしょうか。
今後もこういった事業と知財の関わりを中心に分野を問わず発信していこうと思っております。
それではここまでご笑覧いただきありがとうございました。
すずき