50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――3日目(9〜10首目)

全部見せ(9首目〜10首目)

パスタのため沸かされる湯のかがやきが人類を寿いでやまない

9首目。

いきなり「生き延びるため湯を沸かすんだ」という下の句からメモが始まっている。

こういうキラーフレーズみたいなものは、割とフレーズという完成形でまとまって浮かぶことが多い。
「生き延びるため湯を沸かすんだ」は、普通にそうめんか何かを茹でようとして思いついたのではないだろうか。

それだけで歌の核になる強いフレーズを、狙って思いつく方法は分からない。あったら教えてください。

「生き延びるため湯を沸かすんだ」は下の句としてよいと思うのだけど、当時の私は気に入らなかったらしく、「お湯を沸かす」を上の句に移して推敲を進めている。

詳細な過程は不明だが、その後一旦「赤子のため沸かされる湯のかがやきが人類を寿いでやまない」という形で落ち着いている。
おそらく連作の質感のテーマ「光の感触」を踏まえて「かがやき」に焦点を当てることにしたのだと思う。

「人類」という大きな話に繋げたのは我ながらすごいと思うのだが、これも「生き延びる」という切実さが最初からあったからではないだろうか。

この歌は「赤子のため」を初句にしたまま連作に組み込まれ、連作の推敲の時点で「パスタのため」と初句を改めている。

これは単純に私が生殖という行為によさを感じられないので、自分の連作の中で「赤子」の話をしたくなかったことによる。

「赤子」から「パスタを茹でる」という生活の話になったことで、連作の「穏やかな生活」という印象が強まったのではないだろうか。

お菓子箱に書かれたクイズの正解がカメレオン 虹色のカメレオン

10首目。

二次創作お題単語ガチャ」から出た「せいかい」というお題から作った。

これは思考の過程が全くメモに残っていない。
たべっ子どうぶつのイメージがあったことは覚えている。

正解→クイズの正解→よくあるクイズってなんだろう→たべっ子どうぶつの箱に書いてあるクイズ→動物が答えになっているクイズ

という順に考えて、カメレオンが答えだったらおもしろいと思ったのだろう。

カメレオンだから無難に色の話になるけど、ここで「虹色」が出てきたのは度々言っているが「ホログラム」が常に光の質感を伴った連作だからだ。
基本的に、ちょっとモチーフを足したいときは連作のテーマに沿ったものを考えている。

改めてこの歌を見ると、もしかして青松輝さんの歌を意識していたかもしれないと思う。

鮮烈な色彩を意味する言葉を聞くと、青松さんのイメージが浮かぶ。

蛍光色のナースコールが水際の僕に届く 何回でも届く
「CULT/蛾」『Q短歌会機関誌第四号

こうして並べてみると構造同じで引いた……。こういうこともある。

感想

青松さんのと構造同じ歌を作っててかなり落ち込んだ。閉店にします。

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