50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――1日目(1〜2首目)

確か去年の9月20日に短歌を作れなくなったので、ほぼ8ヶ月短歌を作っていないことになる。

歌歴としては6年目ということになるのだけど、短歌とは安定したお付き合いをしてきたわけではない。
すごく頑張った反動でほとほと嫌になり、Twitterアカウントを消してQ短歌会も辞めたことがある。

それでも短歌にぬるっと戻ってこられていたのだけど、今回は全く手がかりが掴めないので、何を考えていたのかテキストにしてみようかなと思う。

続きがあるとしたら、次回は「棚卸し」とか「言語化」とかについて書きます。
これからしばらく出す記事は少し体裁を整えた程度のメモです。完走したらカテゴライズしたり分析したりしてまとめを出すつもり。

笹井宏之賞応募作「ホログラム」全文はこちら。

全部見せ(1首目〜2首目)

うつくしい神とひととの口約束として光の三原色は

1首目。

「三原色」という語から作り始めている。
制作終盤に作っているので、連作の色や質感を出すワードとして選んだのではないだろうか?

「ホログラム」というタイトルを付けたように、連作を組んでいく中で夏から初秋の光の感じ、そのさまざまな移ろいや現れ、というのは連作の質感として意識的に出していくようにしていた。
最初からそういう設定で組んだ連作だったと思い込んでいたのだけど、構想メモを見返すと光の印象には言及されていない。

連作を組む前にいくつか手がかりを設定しておくことにしていて、イメージを表現する擬音も決めることがある。
この連作では擬音を決められていなかったのだけど、8月8日に友人に「パキパキしてる」と言われたようだ。そこから色彩と光をパキパキさせるというテーマを持ったらしい。

話を戻そう。

「光の三原色」があるとき、定型に当てはめるならば「◯◯◯光の/三原色は」と下の句にするか、「◯◯◯光の/三原色」と2句3句に収めるかだと思う。このときは前者を選んだらしい。

たぶん「三原色」を5拍の句に収めるのが嫌だったからではないだろうか。三字熟語が上の句の終わりにあって、それがさらに字余りしているというのは重たすぎて処理に困る。

ここから、
「として光の三原色は」
さらに
「口約束として光の三原色は」
と展開している。

「口約束」がすごくいいと思うが、こういう発想のきっかけはメモから思い出すのが難しい。

「神とひととの口約束として光の三原色は」
「口約束」から「神」を連想するのは、私の宗教観からするとそこまで意外ではないかもしれない。

そこから初句に少し迷っていて、「移り気な」と「うつくしい」がメモに残っている。
後者を採用したわけだが、正解だと思う。
「移り気な」は宗教観が出すぎだし、「うつくしい」の方が連作全体に漂う祝福の空気と合う。

祝福は触れたらわかる 黄砂舞う春陽の中に指を反らして

2首目。

うたの日のお題「反」から作ったもの。

「指を反らす」という発想は最初からあった。
題詠のときは最初に浮かんだ発想でしばらく進めてみるのが手堅い気がしている。
2〜3語レベルの組み合わせのよさを追求して七転八倒するよりは、主語と動詞を決めるくらいであとは縛りのない語選択をした方が開けるものが多いし、あと連作に合わせやすい。

ただこれは私の作風によるところが大きいと思う。
「ホログラム」では割とゆったりとした言葉の詰め方、つまり

・動詞がひとつしかない
・ひねりポイント(変わったコロケーションなど)がひとつしかない
・名詞が少ない

このような特徴を持つ歌が多い気がするのだが(これからちゃんと読み返したら違うかもしれない)、もっと緊張感のある名詞の使い方をする人だと題詠に対して別のアプローチをするだろうと思う。

いろいろな作風の人の題詠論を集めて読みたいので、コメントやDMをください。

とにかく、「指」と「反らす」という2語を確定させて進めたのだが、この歌は結構迷走している。

最初は小手先のあるあるテクニックとして、反らした指先のディテールにフォーカスしようとしている。
「反らした指のクリアマニキュア」という下の句から膨らめようとしてうまくいっていない様子がメモから読み取れるが、その中で「祝福」という語が早い段階で浮かんでいるようだ。

そこから「祝福は触れたらわかる」という初句と2句が確定する。
その次に決まっているのが「◯◯◯の中に指を反らして」という下の句。
その前の3句に「黄砂舞う」を入れたくなったので季節を春に設定し、「春陽の中に指を反らして」まで決まったようだ。

「黄砂舞う」は普通に気に入ったのだと思う。
そこから「◯◯◯の中に」を埋めるとなると、黄砂という煩わしいものを連作全体の澄んできらきらしたトーンに合わせるために、「春陽」というかなり直接的な光のイメージを持ってきたのではないだろうか。

感想

一日に5首くらい進めるつもりだったのだけど、普通に自分で思っている以上に考えていることを言語化するとボリュームがあるので完走できないかもしれない。
飽きたらまとめます。

「わたしの題詠攻略法」が知りたいし、なんならまとめネプリ作りたいので教えてください。
TwitterのDM開けてます。

いいなと思ったら応援しよう!