“速読”は嘘だった。 じゃあどうすれば本を早く読めるのか?
ビジネスに使えるエビデンス
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やる気満々のビジネスパーソンを陥れる罠「速読」
誰しも一度は思うのではないでしょうか。「速読できたら良いのに!」と。わたしも毎日1冊読むってことやってきて、できたら良いなー!と常々思っていたんですが、それでも疑問に思ったことがあります。エビデンス好きを魅了するメンタリストDaiGo、読書の鬼、佐藤優や立花隆、さらに読書法を紹介した『東大読書』、これれらの読書王や読書本が、どうして「速読について紹介しないのだろう?」と。
もしかして、速読って、眉唾じゃね?
と思ってエビデンスを探してみたら、この疑いは正しかったようです。速読は、“ただの飛ばし読み”でした。あ、思い出しましたが、佐藤優さんは速読について言及していて、「読まなくて良い本かどうかをしるために速読する」とおっしゃっていました。
速読という商品の誕生
速読(Speed reading)というものが、世に広まったきっかけは、エブリン・ウッド(Evelyn Wood )氏が、1959年に発表した「リーディング・ダイナミクス」というトレーニングプログラムでした。これ以来、そこかしこで速読を鍛えるプログラムやセミナーやアプリが世に生まれています。
カルフォルニア大学の研究結果
カルフォルニア大学のKeith Raynerらによる過去に行われた速読の実験データを調べたレビュー論(2016)(※1)によると、結論はこうでした。
“研究結果によると、速さと正確さにはトレードオフの関係があることがわかっています。通常の速度で読んだ場合と同じように文章を理解しながら、読む速度を2倍、3倍(例えば、1分間に250語程度から500~750語程度)にすることはできないようです。文章を徹底的に理解することが読者の目的ではないのであれば、速読や読み飛ばしをすることで、適度な理解度で早く読み進めることができます。高い理解力を維持しながら、より速く文章を読み進めるためには、読書の練習をして、(語彙を増やすなどして)より熟練した言語使用者になることです。なぜなら、言語能力が読書速度の核心だからである。”
速読を教える本では、たいてい周辺視野を使うことを説かれるのですが、全体の読書時間のなかで、目の動きの重要性は10%以下でした。また普通、人は同じ文章を何度か読み直しながら理解を深めていくため、速読でガンガン先に進むと最終的な理解度が低くなるようです。
ではどうしたら速く読めるのか
ではどうしたら速く読めるのか、結論はこれ。
本を読むのが速い人たちは、もとから本の内容について大量の知識を持っています。また語彙力もある。「あれ、この言葉の意味は?」と止まる回数が減り、前もって持っている知識が「これはあれね」と飛ばし読みしていても、正確さをある程度補う力を持っています。飛ばし読みは、別に悪くなくて、「ざっと理解する」には有効なやり方です。しかし、飛ばし読みをして、且つ深く正確に理解するというのは無理。速さと理解力はトレードオフの関係にあります。
まとめ
「限界効用」(marginal utility)とは、財(モノ、およびサービス)を1単位追加して消費することによる効用(財から得られる満足度)の増加分のこと。ミクロ経済学の消費者理論で用いられる概念。「限界」とは、経済学における限界概念(marginal concept)で、これは、財やサービスなどの変数を微少量だけ増やしたときの、別の変数の追加1単位あたりの増加分もしくは増加率。数学の微分と同じ概念。
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参照
※1:So Much to Read, So Little Time: How Do We Read, and Can Speed Reading Help? (2016) Department of Psychology, University of California, San Diego
※2 パレオな男「一流の経済学者に学ぶ、とにかく速く大量の本を読みまくる方法」