
集まるとバカな結論を出す 「グループシンク」
頭の良いはずのひとたちが集まって、バカな結論を出す
よく政治家や専門家たちが集まって出した政策に「どうしてそんなバカな結論になったのだろう?」というものがあります。人は、集まると不合理で危険な結論に至ることがよくあります。これをグループシンク(集団思考)といいます。
グループシンク
グループシンク(Groupthink)とは、
集団で考えると欠陥のある結論になることがある傾向
です。集団思考、集団浅慮(しゅうだんせんりょ)とも訳されます。アメリカの心理学者、イェール大学のアーヴィング・ジャニス(Irving Janis)氏が提唱し、組織分析家でもあるジャーナリスト、ウィリアム・ホワイト(William H. Whyte)氏が雑誌フォーチュン誌で1952年に広めました。ジャニス氏によれば、真珠湾攻撃についての予測、朝鮮戦争やベトナム戦争、ピッグス湾事件についてなどがそれに該当しているとのことです。
ジャニス氏は、「パーキンソンの法則に基づいて考えるにつけ、団結力と愛想の強い集団においては出す結論は、自分で考えた批判的な思考が失われ、外部に対して非合理的で非人道的なものになりがちだ」と述べています。
(原文)The main principle of groupthink, which I offer in the spirit of Parkinson's Law, is this: The more amiability and esprit de corps there is among the members of a policy-making ingroup, the greater the danger that independent critical thinking will be replaced by groupthink, which is likely to result in irrational and dehumanizing actions directed against outgroups.
グループシンクという言葉は、ジャーナリスト、ウィリアム・ホワイト(William H. Whyte)氏が雑誌フォーチュン誌で1952年に初めて使用し、アメリカの心理学者、イェール大学のアーヴィング・ジャニス(Irving Janis)氏によけ研究が始まりました。真珠湾攻撃についての予測、朝鮮戦争やベトナム戦争、ピッグス湾事件についてなどが、グループシンクの例としてよく挙げられます。
原因
集団になると参加する個々人は、議論の余地のある問題や、総意にまとまりつつあるものとは異なる代替案を提案しづらくなります。その結果、個人のもつ創造性や独立した考えが失われます。こうした、グループになることで機能が低下する傾向は、正しい決定がなされたという歪んだ確信、「無敵の幻想(illusion of invulnerability)」を生み出します。ようは、人間の社会的動物の特性が手伝って、同調圧力の影響を受けてしまうのが、このグループシンクです。
グループシンクの具体的な影響

(1)自分のグループへの過大評価
グループによって考案されたアイデアに対して、構成員は無敵の幻想を抱くため、過剰な楽観主義に陥り、リスクの高い選択をすることになります。
(2)閉鎖的なグループになる
グループの総意に反対する人に対して、弱者、悪者、バカな人と考える傾向が生まれます。
(3)同調圧力
上記のような敵意から身を守るために自分の考えをグループの総意に合わせる圧力を自分で作り上げる。
グループシンクが強くなる特徴
(1)グループの団結力が強い
(2)グループの構造欠陥
公平なリーダシップが欠如していると、グループシンクが起きやすくなります。例えば、議論に入る前にリーダーが意見を述べると同調圧力が発生します。
(3)状況的な文脈
失敗の後、自尊心は低下し、同調傾向が高まります。また時間などのプレッシャーなどの状況がグループシンクを後押しすることもあります。
集団というものが持つリスク
まずは多数決というものの弊害があります。民主主義は非常に重要ですが、集団が結論を出すべきときの多数決は、おうおうにして良くないものに票が入りやすい。そしてその結末には誰も責任は取らないことになります。ブラッド・ピット氏が大変苦労して作った映画に『ワールドウォーZ』というゾンビ映画があります。
この映画の中にイスラエルの方がこんな話をする場面があります。
「過去の失敗から学んだ結果、満場一致になったときには誰かひとり強制的に反対意見を言わないといけないルールを設けたのだ」
深淵なセリフだと思いました。団結力を優先する集団は、「良い結論」より団結することと結論を出すことを優先しやすくなります。この場合、メンバーの知性の高さは担保にならなくなるようです。
リスキー・シフトやコーシャス・シフト
「声が大きい意見が通る」と言われることがありますが、声が大きい人の意見にひっぱられ(その結果)、大胆な結論になることがあります。これをリスキー・シフト(Risky shift)と言います。その逆に慎重になりすぎるのがコーシャス・シフト(Coutious shift)。
対策

(1)ブレストはせず、個人で考えてきたアイデアを議論する
(2)損得で考え、論拠に確率を使う
ブレストでは、グループシンクにより良いアイデアが出ません。グループシンクを避けるには、ブレストを避けるのが有効です。アイデアを匿名で出すのも良い方法です。しかし、これは成功が自分に帰属されないため、動機が弱まる欠点があります。なので、根本的な対策は、グループ全体が、グループシンクという知識を共有するというものになります。個人が意見を言えて、同調圧力を避ける。失敗の責任追及をしないまども有効。
応用

リーダーが強く発言し、サクラを使って結論に導く
失敗させるには、リーダーが最初におとしどころにしたい結論を言い、それからブレストして、それに近い結論を出させる。みんなで決めたことになるし、だれも責任を取らなくて済む。何人かが同調すれば、自然と結論はそれになびく。2つの同調圧力を使って、結論を誘導する。
関連した認知バイアス
•パーキンソンの凡俗法則(Parkinson's law of triviality)
組織が些細な物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く傾向。
参照
※1:Groupthink
※2:集団思考