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Pony.aiのIPO申請から得られる4つの教訓
トヨタが出資する中国の自動運転新興;Pony-AIが上場しましたが、申請書を読み解き。評価額は前回ラウンド時点より半額程度で、調達予定額も事前報道の半分以下で投資家の目線は厳しい状況。
純損失解消見込みの無さやビジョンの大風呂敷が指摘される同社ですが、実現した自動運転は確実なものゆえ、期待と注目が集まります。
1;Pony-AIのIPO
10/17に自動運転車の製造新興;Pony-AIは中国政府によるオフショア資金調達禁止策の緩和を受け、NASDAQ上場を申請
上場申請によると、取締役会は最低評価額を40億ドルに設定し、IPOによる調達目標額は2億ドル。他中国メーカーではEV新興;Zeekrが24/05に上場、同業で自動運転新興;WeRideが50億ドルの評価額での上場を目指すが24/08に延期を宣言
Ponyの直近評価額(2022)は85億ドルで、トヨタは2020年の4億ドル出資後も継続ラウンドで出資し、現状で13.4%の株式を保有。他の著名投資家としてはサウジアラビアのNEOM(1億ドル/2023)や中国自動車系CVCのGAC-Capital(2700万ドル/2023)など
2;Pony-AIの特徴
(1;実証)
Ponyは[190台のロボトラック(北京/広州)][250台のロボタクシー(北京/広州/深圳/上海)]を運行。展開都市すべてで料金請求しており、上海以外では完全無人運転を実施
ロボタクに関してはアプリ登録ユーザは22万人を超え、1台当たり日平均で15件の旅客輸送を実施。全体で2000万㏕以上の自動運転の経験を積み、うち完全自動運転は240万㏕になる
ロボットトラック事業はロボタクを補完、商業顧客は57社で上半期総収益の73%にまで伸張(上位3社で62.8%のシェア)
(2;収益)
Ponyの直近(FY23)の粗利益は1700万ドルとなったが、純損失2.7億ドルを計上…単体事業としては成立しえない状況
損失の主因は研究開発費で、特にセンサーを多用した自動運転スタックに多額の費用(R&D給与だけで7300万ドル)が掛かっている。また、6月末時点の1300人の従業員のうち、R&D=44%/技術導入=16%/業務=28.5%となっており、まだ事業に振る段階にない模様…
ロボタク運賃の上昇による収益改善を期待するが、コスト削減は当面困難であると見通し。自動運転実現へのコストは時間経過とともに減少せず、[近い将来に引き続き変化する]とだけ述べている
(3;リスク)
提出書類で60ページにわたってリスク開示しているが、投資家はまだまだ不十分とする。主要リスクの一つは[SEC要件の準拠に向けたスタッフスキル(GAAP知識)の不足]にあり、会社は23年末までに克服したと述べている
SEC対応は開示対応のミスなどで一歩誤ると投資家の信用を失ってFisker(FY23-3Q決算の遅れから転落)のようになる可能性…
中国規制当局による規制の行方の不透明さもリスクで、同社は[中国規制当局は当社事業を厳しく監視しており、経済/規制/政治/社会の目標達成に適切と判断すれば、当社の事業に影響を及ぼす可能性がある]とする
また、米中対立も影を落とし、米国でのコネクテッドビークルに対する規制実施が迫っている。米国でのロボタク検証が継続できなくなるリスクを負っており、現状でのCA州の有人x自動運転の検証が停止する可能性がある
(4;ビジョン)
今回の上場は詐欺的なSPAC上場でなく正式な手続きを踏んだIPOだが、Ponyは自社技術で実現するビジョンを相当に誇張しているともされる…
-[中国の大都市の公道で、Ponyは自動運転車の実現でSFを現実のものとし、乗客は目を丸くして驚き、アプリでドアロック解除して乗車する]
-[車から降りると乗客はアプリで料金を支払い、素晴らしい乗車を終える。そしてロボタクは自動で走り去って次の乗客を乗せる。未来にはもっと驚きが待っている]