MercedsとStellantisが欧州バッテリー工場の一部操業停止とLFPシフトをリリース
MercedesとStellantisが合弁で立ち上げたバッテリー製造拠点に関して一部操業停止と、製造バッテリー種別を変更するとリリースしています。
具体的にはNMCからLFPへシフトさせ、より安価で普及版となるEVの市場投下を狙っていくものとみられます。
現状でのEV需要の急減に対応する観点と、一方で今後普及する想定のEVモデルを見据えての判断の模様です
1;MercedsとStellantisのLiB合弁が操業停止へ
6/4のBloomberg報によるとMercedsとStellantisのEVバッテリー工場が操業停止/製造プロダクト変更の可能性を検討しているとのこと。対象は2021年に両社JVで創設されたAutomotiveCellsCompany(ACC)で現在3施設が稼働&準備段階にある
24年初めにACCは4つの工場建設に向けて47億ドルを調達する計画を発表していた
今回の報道で確認された事業状況は以下の通り
(稼働)仏;Douvrinの工場は稼働中でLiB/セルの製造を実行中
(準備)独の工場における稼働は停止中、伊の工場建設作業が停止中
両社は上記の通り製造停止に加えて、現状の三元系正極材(NMC)から安価なリン酸鉄リチウムイオンセル(LFP)への移行を含めて検討。ACCは施設の今後を最終決定していないが、年末までに市場動向/社内資源を見極めて決定する予定とする
ACCの代表;Yan Vinscent氏はEV需要の鈍化を引き合いにコメント
-[4月のEV販売台数が前年比で14.8%増加したが、欧州ではEV需要は鈍化。ICEに比べると強いが、HV車の復活に押されている]
-[EVの成長は主にマスマーケットで見込まれており、欧州メーカーがリーチできておらず中国系EVに席巻されつつある]
2;バッテリーセルの特性と需要の在りか
ACCによる[NMC→LFR]の切替は一時的にACCにメリットをもたらす可能性がある。LFPの特性は[低コスト/高耐久性/調達アクセス]などがメリットだが、エネルギー密度の低さゆえにほとんどのEVはNMCを採用するが、一方で都市部利用/低コストといったマスマーケットの需要にこたえるにはLFP採用のエントリーモデルで十分となる可能性も出ている
LFPセルは低価格の中国製EVで多く採用され、既存OEMに比べて価格を抑えるのに多大な貢献をしている。仮にACC及び親会社がマス市場を狙うのであればLFPセルへのシフトは合理的な選択となりうる(結局EVコストの大半はバッテリーゆえ)
昨今のEUによる域内経済保護への施策が進む場合、LFP生産の域内化が必要となる可能性が高いことも追い風になろうかと
現在LFPセルの殆どが中国で製造されていることを鑑みるとEU域内での生産に掛けるのは一定の合理性がありそう
3;その他
Mercedesは以前は[2030年までに完全電動化]を約束していたが、掌返して24/02には[ICE車の製造を2030年代まで継続]する方針を打ち出し
ACCのドイツ工場は2027年稼働を目指しており、最初のセルは27年後半に出荷され始める予定。結局のところEVの現行トレンドに併せての製造では間に合わず、一定の賭け/度胸を持って需要を創出するくらいでないと追いつかない