GMが先端コーティング技術新興に出資、バッテリー競争力を強化へ
GMのCVCであるGMVenturesが原子層堆積法に特化したコーティング技術を展開するForgeNanoに出資しました。
同社の技術を用いることでバッテリーセルの安全性/寿命/容量などを改善させることが可能で、今後のEV/バッテリー事業の競争力向上を目指します。
一方で、GMのEV販売は予想を下回って推移しており、バッテリー単体での競争力を構築することで単体事業の隆盛を狙うのかもしれません。
1;GMによるLiB部材加工新興への出資
10/16にGMの投資部門;GM-Ventures(GMV)が粉体ALDの開発/展開を進めるForge Nanoに1000万ドルの出資を実行
戦略投資の一環として両社は[Atomic Armor]と呼ばれるALM技術のライセンス供与/共同開発契約も締結、AtomicArmorを用いてGMのEVバッテリーセルのカソード活性材をコーティングして性能/寿命を向上させるべく協業を進める(カソード活性材を強化する薄膜コーティングを開発/実装する)
今回の出資はSeries-C(Ex)であり、前回ラウンドではHangfa/OrionInfra-Capitalなどが参加して5000万ドルを調達。それ以前にはVW/三井金属/LG-Tech Ventures/米州住友商事/SBIなどが出資している
今回の出資による資金はAtomicArmor-PFの技術力強化を行うとともに社会実装に向けた事業開発を進める
(既存)自社の活性材コーティング/外部デバイスの加工販売/バッテリー部材コーティング(AtomicArmor)の拡大
(新規)半導体製造分野への進出/事業拡大
GMの広報担当Directorは下記のように外部連携強化のトレンドを強調
-[今回の戦略投資はGMがUltiumブランドを廃止して"バッテリー製造に係るセル/化学品/フォームに関して、単一からマルチへ戦略シフトする中で行われた]
-[GMは常にEV効率化/バッテリー性能向上に向けた方策を模索しており、ALDによるLiB材料の化学組成/構造を原子制御する能力には高い価値を見出している]
2;Forge Nano について
ForgeNanoは成膜手法の1種である粉体ALD(原子層堆積法)を専門とするコーティング新興企業。独自技術で1原子層ずつの成膜を行い、ALD成膜でアノード/カソードの部材をコーティングして電池性能を向上させる
ALDは化学結合で原子の薄膜をオングストロームレベルで形成する成膜手法で、[20%以上の電池容量/電圧改善][寿命の2-10倍化][耐熱性][充電時間短縮]等を達成しうる
ミッションは[より良い世界のためにより良い材料を作る]とする。同社バッテリー製造部門であるForgeBatteryは生産能力拡大に向けてDoEから9月に1億ドルの補助金を獲得。
AtomicArmor技術を利用してバッテリーセルのプロトタイプの製造/出荷を開始、防衛/航空宇宙/特殊EV向けに製造を加速させる方針。米国本土でのサプライチェーン構築に注力し、国内のバッテリーエコシステム強化/海外サプライヤー依存を減らす
Forge NanoのCEO;Paul Lichty氏は下記の通りプロダクトの効用/価値を強調する
(安全性の向上)
-[Atomic Armor-PFは、火災に繋がる熱暴走を防いでセル安全性を高める]
-[Atomic Armorは超薄型セラミック層で製造され、材料を原子粒子段階までコーティングすることで安定/堅牢な効用を実現する]
(バッテリー機能の向上)
-[現状のセルはコーティングに課題があり、航空機や長距離車両に搭載しても十分な機能を発揮しえず、社会的な普及が広がらない要因となっている]
-[基本的に熱/利用によりセルは腐食が進んでしまい、機能劣化が不可避だが、AtomicArmorを用いれば極端な用途でも腐食を防げる]
(具体的な効用)
-[既存のLiBを使用して他社よりも多くのリチウムを抽出してカソードを製造、AtomicArmorを使うことでセルのエネルギー密度を20%高めた]
-[当社のコーティング技術はセル製造工程に直接組み込むことが可能で、最大20%のコスト削減が可能]
3;その他
GMのEV販売はFY24-3QにYoYで60%増加したが、会社/投資家の想定ペースは達していない…。EVは総売上高の5%弱で、会社としてもEV販売ガイダンスを20万台に引き下げた
GMVはGM製品の改善につながる戦略提携の可能性を念頭とした投資を実行している。電動化/バッテリー分野ではSoelect/MitraChem/SolidEnergySystemsなどのスタートアップを含む18社に、計1.67億ドル投資を実行