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NorthVoltが工場閉鎖/人員削減を主とする事業再編に着手

欧州のバッテリー開発/製造大手のNorthVoltが工場閉鎖/レイオフを含む事業再編に動いています。
創業から8年が経過してようやく供給網が整って公的補助金で事業拡大する素地が整ったように見えましたが、今年6月のBMWとの契約キャンセルで事業信頼性がダダ下がり…
中韓のバッテリー先行各社を模倣しての事業展開でしたが、基礎条件が違い過ぎて勝負にならなそうであります。

1;NorthVoltによる大規模リストラ

 欧州のバッテリー製造大手NorthVoltは9/23に事業縮小/レイオフを発表。スウェーデン北部の工場拡張工事を中止し、従業員1,600人(全従業員の20%)を解雇。同工場の拡張では年間生産量を30GW/hに拡大する計画で、正極活物質(CAM)を製造する予定だった

 先だって9/9にはスウェーデンの他CAM生産拠点も操業停止しており、NorthVoltはCAMの自社調達が不可能に…今回の事業再構築はEV需要の鈍化にそれに伴う自動車OEMによるEV投資消極化が背景にあるとする
 ちなみに、24/06に同社はBMWの注文を期限内履行できず、BMWは20億ドルの契約をキャンセル。この件も影響しているとみられる

2;NorthVoltの課題

 NorthVoltの直面する課題は大きく2点で、業界全体の関係者が同じ方向を向けなかったことや事業見通しの甘さに起因する
(1;大規模生産/量産への機能不足)
 バッテリーの機能(内部の化学反応)は複雑で外観ほど単純でなく、高密度/安全性/高速充電/耐久性といった機能を自動車内で担保するのは困難で、さらに大規模に安定生産することは問題の複雑性を増すだけ
 NorthVoltは中国/韓国のバッテリーメーカーがもつ大規模製造の仕組みを模倣しているが、自社単独で事業展開しており厳しい局面に。先行事業者は数十年かけて事業構築し、政府支援も受けてきた。一方でNorthVoltは設立からまだ8年で、ようやくEU/各国政府から支援を受け始めた
(2)自動車OEMのEVに対するスタンスの不透明さ
 多くのOEMは2020年頃には[EVへの全移行]を喧伝していたが、23年以降に積極目標を撤回…。初期の需要に対する楽観予測に加え、EV製造/普及に向けて必要な投下資本額を過小評価していた
 結局、現時点ではBEVシフトはあきらめてHV車/PHEV車(バッテリー利用量ははるかに小さい)の開発や製造強化に転換

3;その他

 EV需要自体は依然として残るがバッテリーの重量/輸送費などの課題を勘案すると地産地消でないと立ち行かない…。米国ではIRAが、欧州ではGreenDealが後押しするが欧州ではすでに中国メーカーが席巻しており状況は好転しなそう
 前例として米国で同様に事が起きており、[A123 Systems]がリチウム鉄リン酸バッテリーの生産に取り組んでいたが失敗していた…。同社は2000年頃に開発/製造を行い、当時は電動工具メーカー向けに展開して後に自動車メーカーに拡大。ただ、GMへの導入にあたってLGに敗れてFiskerのEVに採用されたが、試験段階で発火事故を起こして命脈を断たれた
 結局のところ、需要があっても供給網が整備されていない市場におけるプロダクト開発は容易でなく、既存事業者/ルートとの連携が重要とみられる

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