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待った時間も含めて作品なんだってシン・エヴァ𝄇が教えてくれた。【ネタバレ無し】

2021年3月8日(月)、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』が遂に公開されました。

前作の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から約9年、新劇場版シリーズの第一作である『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』からは約14年、テレビシリーズのスタートから振り返れば約25年を経て、やっと迎えた完結編。

待った。長かった。本当に長かった。

僕が『新世紀エヴァンゲリオン』を知ったのは小学生のときで、最初のテレビ放映が最終回を迎え、世間で徐々に話題になり始めていた頃。
今なら親がNetflixとかに加入していれば小学生でも手軽にテレビシリーズを観られるけれど、当時はまだTSUTAYAでVHS(DVDじゃないよ)を借りるくらいしか観る手段が無くて、親がTSUTAYAへ行くときに着いて行っては「これが観たい!」とおねだりして少しずつビデオをレンタルしてもらっていました。
父親も少し興味があったようで、第壱話・第弐話が収録されているビデオを、実家のリビングで夜に二人で観たのを今でも覚えています。

けれど、小学生の僕にはまだエヴァの世界観が怖くて、第拾四話「ゼーレ、魂の座」くらいまでしか観る勇気がありませんでした。
続きを知っている同級生に「あの後どうなるの!?」と聞いたり、本来なら旧劇場版をリアルタイムで観ることができたはずなのに勇気を持てず、観に行った友達を「どんな映画だった!?」と質問責めしたりしていました。
(それから数年後にテレビシリーズと旧劇場版を観終わって、あの頃「どんな映画だった!?」と聞いても誰もちゃんと答えてくれなかった理由を後になって理解しました。)


あれから25年後の『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』、本当に待って良かった。
今回の映画に合わせて、初めて『序』から観てみたという人や、今頃Netflixでテレビシリーズを一気見している人も多いと思う。
けれど、ごめんなさい、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』は、最近エヴァンゲリオンを観始めた人よりも、25年前から観てきた僕らの方が楽しめる作品です。
そして、「これまでの作品を観てきた」というだけではなく、「この25年間でそれぞれがどれだけ人生経験を積んできたか」によって感動の度合いが変わる作品に仕上がっていました。


世間がこれだけ盛り上がっていてもまだエヴァを観たことがない人からすれば、なぜエヴァファンは25年も熱狂していられるのか、なぜたかが一本の映画のために有給をとってまで初日に駆けつけようとするのか、理解できないと思います。
エヴァファンが25年も熱狂していられる理由、それはエヴァンゲリオンが、次作に対するファンの期待を煽る仕掛けを常に発信しながら続いてきたシリーズだから。

例えば、本作『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』が制作された経緯を振り返ってみましょう。
2007年から始まった新劇場版シリーズ、その第一作となる『序』が公開された時点では、完結編のタイトルは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:?』で2008年公開予定とされていました。
ところが予定通りの2008年に公開されることはなく(長年のファンにとっては予想通り)、やっと2012年に公開された前作『Q』の最後に次回予告が流れ、完結編のタイトルが『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』に変更、公開日は未定であることが発表されました。

「シン」ってなに!?
なんで「ヱ」と「ヲ」が旧字体じゃなくなってるの!?
最後に付いてる「𝄇」ってなに!?
公開未定って……いつまで待たせる気!?

上記で紹介したのは、エヴァンゲリオンの歴史のほんの一部。
このようにエヴァンゲリオンは、制作の過程で企画案を変更することもいとわず、次作の情報を小出し小出しにしながらファンの期待と考察を煽ってきたコンテンツなのです。
※補足ですが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』の本編を観た今では、『Q』の最後に流れたあの次回予告は完全に企画段階のラフ映像で、まったくもって予告の意味をなしていなかったことがわかりました。これもエヴァあるあるのひとつです。

そしてエヴァンゲリオンの凄いところは、新作をリリースするたびに、必ず前作を超えて面白いということ。
だからファンは期待するし、何年も熱狂できるし、何年も待って来れた。

とはいえ、待たされてなお支持されている作品は、他にも数知れず。
『ガラスの仮面』しかり、『HUNTER×HUNTER』しかり。
エヴァンゲリオンについて特筆すべきは、2007年から始まった新劇場版シリーズ『序』の最終興行収入が20億円、『破』は倍の40億円、『Q』は53億円と、新作のたびに興行収入を10億単位で上げ続けてきたということ。

エヴァンゲリオンは25年間、新作のたびに百万人単位でファンを増やしながら続いてきた一大コンテンツなのです。
こんなシリーズが他にあるでしょうか。

25年を振り返れば、作品を楽しんだ時間よりも、新作を待たされた年月の方が圧倒的に長い。
けれど、完結編を迎えた今では、そんな待った時間すらも『エヴァンゲリオン』という作品の一部だったのではないか。
エヴァンゲリオンを知った日から今日まで、視聴者である我々がそれぞれ歩んできた25年を含めて『エヴァンゲリオン』という作品なんじゃないか
と、僕は思えてならないのです。


じゃあ、エヴァンゲリオンを最近知った、もしくはこれから観始めようとしている人たちは『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を楽しめないかというと、もちろんそんなことはありません。
ネタバレの無い程度に、それでもあえて断言するならば、エヴァンゲリオンは本作『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』で本当に終わってしまった。

さらば、全てのエヴァンゲリオン。
その言葉は本当だった、ということはネタバレ無しのこの記事内でも断言して良いでしょう。

つまり、25年もの間、新作のたびに百万人単位でファンを増やしながら続いてきた一大コンテンツ『エヴァンゲリオン』をリアルタイムで体感できる最後のチャンスなのです。

今からでも決して遅くはありません。
公式YouTubeで配信されている第壱話「使徒、襲来」を観てください。
面白かったら、同じく無料で観られる第弐話「見知らぬ、天井」を観てください。
それで面白かったら、Netflixで990円を払って、テレビシリーズと旧劇場版2本を観てください。
そして、AmazonプライムビデオやABEMAなどの都度課金で新劇場版『序』『破』『Q』を観てから、映画館で『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観てください。
仕事終わりに少しずつ観ていっても、1週間あればクリアできるでしょう。

過去の25年間だけでなく、今、社会全体が熱狂している現象そのものが『エヴァンゲリオン』という作品の一部。
僕は、小学生の頃に旧劇場版をリアルタイムで観れたにもかかわらず観なかったことを、20年以上後悔してきました。
みなさんには、同じ後悔をしてほしくない。


共に楽しみましょう。『エヴァンゲリオン』という作品を。
そして、さようなら、全てのエヴァンゲリオン。


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