Shiroinuma's STORE
https://shiroinuma085.stores.jp鈴江俊郎の戯曲などを販売するサイトです。岸田戯曲賞受賞作品ほか、1人芝居から16人の芝居まで、激しく動きまわる熱い芝居からせりふにならない沈黙を語る芝居まで、人の生理をひっかくような繊細な芝居から現代社会の矛盾を熱く撃つ芝居まで、多様なものをここでは紹介しています。pdfで全作品紹介できるように、順次整えてまいります。ノートは https://note.com/suzuetoshiro0208ウエブサイトは https://shiroinuma.wixsite.com/shiroinumaです。上演の際は、作者に上演許可をとるようにお願いいたします。こちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。
あさってのことなんか考えずにしみじみするのだと彼女は言う (出演者6人)
あさってのことなど考えないでしみじみするのだと彼女は言う オレオレ詐欺の集団が悩んでいる。上部組織から、あさってまでに七百万円持って来いと言われた。しかしそもそもやり方がへたっぴで成績の悪いこのチームには無理難題だ。持っていかないと、しめられる。どんなふうに?コンクリートに埋められて港に捨てられる?銀行強盗しよう、一発にかけて花と散ろう、いや長生きしたい、そもそも逃げて悪いことはやめよう、など議論が続く。世界に救いはあるのだろうか。彼らの心に平安は来るのだろうか。 2018年3月執筆 未上演・6人(男4・女2)ー18分ほかに・6人(男4・女2)ー12分、14分・5人(男4・女1)ー12分、14分のバージョンもございます。「問い合わせフォーム」からご注文くだされば、紙媒体で郵送いたします。送料は必要です。その際のお買い上げ方法など詳細は返信で説明いたします。
¥500
あたしと名乗るこの私 (出演者11人)
32階。ホテルの最上階、高級レストラン。コースを食べるのはちょっと勇気がいる。そんなとっておきの場所で、いろんな人がごはんを食べる。月に一度の自分にご褒美。一世一代のデート。長年のあの人に別れを告げ……。雲が下に見える。ビルがおもちゃみたいだ。電車は音もたてないでゆっくりでかわいい。むかいのビルの屋上の柵の外に人が立ってる。彼は飛ぶのか?あたしもあんなふうにちっちゃくて音もたてないでそこにいて、それでも、これは私だ。あたし以上でもあたし以下でもない、これは私の話だ。そしてきっとあなたの話だ。2009年3月 上品芸術演劇団 / 精華演劇祭vol.12参加公演90分11人(男3・女8)
¥500
家を出た (出演者12人あるいは14人)
12人(男5・女7)。1998年1月執筆/初演。110分。死んだはずの吉田が目を覚ますとそこは、ある「場所」だった。心を休めるため に用意された、場所。死者達はいったんそこに立ち寄り、そしてぷつっ、とすべて消えてしまおう、と決める。その気持ちがかたまるまでを過ごす場所なのだ。一日のうち決まった 時間だけ下界、現世のことを覗くことができるけれど、そんなことをしてどうなるというのだろう。日に日に友に母に父に恋人に忘れ去られていく私たち。人は必ず消える。そして忘れられてしまう。それを僕たちは受け入れられるのだろうか。さまざまな若者たちがそこでもがく。友達思いのバスケット部員たち、いじめに復讐した少女、永遠の恋を誓った青年。いのちっていうのは、いとおしく、そしてこっけいだ。1998年1月 京都府立文化芸術会館プロデュース公演にて初演。若い役者たちのワークショップ上演台本にも向いています。お送りするのは出演者12人のバージョンです。ほかに、14人(男5・女9)バージョンもあります。そちらはメールにてご注文ください。
¥500
いちごの沈黙。 (出演者3人)
ランプの宿に、会社からのご褒美旅行でやってきた男女。彼らはファストフードの店長たち。年に一度の売上コンクール全国大会の金銀銅メダリストだ。常連になっている彼らは、この自然を満喫するというよりは自然に負けそうになっているだけの悲惨な旅に右往左往する。三年連続金メダリストの男は苦労もしないでいろんなものが手に入ってしまう自分の現実に、なにか手応えのなさすら感じている。手応えもないまま、社長から「こっそり使え」と八千万円もの金を預けられている。彼の不条理な悩みは深まるばかりだ。その時、不気味な宿の主人に彼らは監禁されていることが明らかになる。トイレに行ったら猟銃で「部屋に戻れ」と脅されたのだ。不条理な悩みは現実的な危機の中でさらに迷走する…… 2004年3月 リージョナルシアターシリーズ「国道、書類。風呂桶。」のうちの一作品45分3人(男1・女2)
¥500
宇宙の旅、セミが鳴いて (出演者10人あるいは11人)
近未来、宇宙船の中。任務を終えて地球に帰還する途中、母国日本ではクーデターが勃発する。共産主義政権ができたというのだ。帰る? 帰らない? 帰れない? 混乱するクルーたち。共産主義政権が資本主義の申し子のようなこのエリート集団を受け入れてくれるか、議論が始まる。閉塞された空間での人間関係のもつれは一気にそこで爆発するようだ。極限の状況の中でクルーたちは、初めて生と死の意味、自分たちの生の意義を見つめなおし、何かを見つけることになる。出演者10人(男5、女5)上演時間90分の作品。2003年10月 京都ビエンナーレ演劇公演 文化庁演劇大賞受賞お送りするのは出演者10人のバージョンです。ほかに、上演の際に人数調整をした出演者11人(男5・女6)のバージョンもあります。そちらはメールにてご注文ください。【こちらの戯曲は文庫本としても出版されています。 →http://www.jpwa.org/main/books/21st-century】
¥500
海猫・雪・サボテン (出演者4人)
市立の植物園。池のほとりに東屋が建っている。幻の花が咲くという噂話にも多くの人は特に注目しているわけでもない。「絵描き」未満の絵を描く青年。彼にひそかに心寄せる市職員の女性は恋バナで友人と盛り上がるでもない。妻ある男と交際中の友人もそのことで深刻に悩むでもない。関西弁の口語で展開するうつろな日常は都会の若者の漠然たる不全感を背景に、間の抜けた不安を浮き彫りにするようだ。2001年3月、劇団八時半の試演会のために劇団員がエチュードで創作していったすじだてをもとに鈴江が脚色して完成した戯曲。劇団八時半 原作、鈴江俊郎 脚色。上演時間70分登場人物4人(男1女3)2001年 劇団八時半で初演
¥500
うれしい朝を木の下で (出演者4人)
過疎の村に移住してきた都会育ちの若い男女。会社勤めの退屈と不合理に安易に反発しただけの男なのに、由美は勘違いして追っかけてきてしまったのだ。どこにいても自分が自分でいられると感じられずに苦しんでいた由美。目の前で鮮やかに退職してみせた男を同じ心の傾きの持ち主だと勘違いしたのだ。けれどここでも挫折したらいよいよ行き場がない、と由美は自分を追い詰める。由美は頼りない男の農業経営を支えきれないでいる。苦しい暮らしにつけこんで肉体を弄ぼうとする地元の郵便局長。その苦しい暮らしを見舞いに来たまま都会に帰ろうとしない姉。一人一人がうれしい朝を望んでいる。破綻に向かいつつ彼らはもがく。希望は土にも山にも雲にもない。人の心にしかない、と彼らは知っているだけに容易なことではないのだ。。2001年11月 劇団八時半公演100分4人(男2・女2)…テアトロ2002年2月号掲載
¥500
王様は白く思想する (出演者6人)
ギタリストの卵、伊東は恋人と同棲している。彼はこのところギターが弾けないでいる。長年組んでいたバンドメンバーが数カ月前に全員事故死したのだ。演奏への動機付けそのものも失ったような伊東。死者たちはそれでもからかうように時折部屋に現れ、生前と変わらないにぎやかさで議論する。伊東はその時間をこよなく愛するようになっている。恋人は焦っている。立ち直れないでいる伊東を憎む気持ちはほとんど嫉妬に近い。人は一人一人王様で、ささやかな楽園を望むのに白い霧の中を進むような感触しか得られないでいる。王様は手応えをつかめるのだろうか。ささやかな期待をこめて、伊東は今日もギターに向かう。明日も、明後日も、そうやってもがくのは希望のためだ...1999年4月 文学座アトリエ公演100分6人(男4・女2)…雑誌「せりふの時代」1999年春号掲載
¥500
大きな青の音 (出演者4人)
会社の同僚が三人で一つ、部屋を借りた。目的を持たない部屋だ。一人になるための部屋。自分の部屋で一人になるのと、皆で借りている部屋で一人になるのとは意味が違うから、ということで始めた奇妙な遊びだ。だが、昔詩人を目指していたという江村は飽きてしまった。新しい仲間を引き入れようとしている。そして、自分の詩集をここで一緒に作る作業を始めよう、と提案した。つながりたがっている一方でひとりでもいたがるこの不自然なつながりを変えていかないときっと自分がだめになる、と始めたのだ。均衡が保たれていた三人の間に波紋が広がる。皆の孤独に青の音が響くようだ。。。。1999年1月 劇団八時半公演100分4人(男2・女2)
¥500
おつかれ山さん (出演者12人あるいは13人,14人)
高校教師の山口先生はクラス担任、柔道部と演劇部のかけもち顧問、忙しくて目がまわりそう。生きがいだった趣味の劇団活動も続けらなくなるかもしれない。妻との会話も不足ぎみ。モンスターペアレントに胃袋もちぢんじゃう。どこに心の安らぎがあるんだろう?そんな山口先生にさてさて救いはやってくるのか?出演者12人(男4女8)、上演時間70分の作品。 2002年3月(原案 桑本雅生/脚本 鈴江俊郎)シアターラボ2001 ※ お送りするのは出演者12人のバージョンです。13人、14人のバージョンもあります。そちらはメールでご注文ください。以下のような出演者数、上演時間の選択肢があります。・14人(男2・女12)(男3・女11)(男4・女10)(男5・女9)ー100分・13人(男4・女9)ー70分/(男5・女8)ー70分、80分、90分・12人(男4・女8)ー70分
¥500
お月様のために (出演者10人)
中道はゆみという恋人がいながら新たに女性とつきあってしまった。反省した中道はその女性と別れ、一人自転車で旅に出て頭を冷やそうと意気込んだら旅先で悲しくなってしまった。辛抱できなくなって帰ってきてしまった。どうしてだろう、ふってしまった女性ばかり思い出す。友達の下宿に転がり込んで泣く。一方ゆみは姉にマンションに転がり込まれて困っている。OLの姉は退職してオーストラリアに行く、と言って両親とケンカしてきたのだ。彼氏から求婚されたのに喜べない自分を持て余した揚げ句の奇行だ。姉の所属する「イメージで飛ぼうバンジージャンプの会」も押しかけてくる。若者たちは大変だ。皆が月を見上げてハッピーな日の来ることを祈っている。お月さまは眺めているばかりなのに。1996年8月C.T.T.公演80分10人(男4・女6)
¥500
おとこたちのそこそこのこととここのこと ~ソフトボールVersion 普通の顔して幸せをつかむぞ編~ (出演者7,10,11人あるいは14,20,22人)
社会人チームの廃部が決まったソフトボール選手たち。喪失感から立ち直らなくちゃ。婚期を逃しかけてる四十男は見合いの稽古だ。練習があったはずの夕方からの時間がさみしすぎるからつぶし方を見つけるのだ。女子力ゼロでは悲しすぎるからかわゆくなって普通の幸せをつかむのだ。なにもかもうまくいかない予感がする。いやいくのさきっと熱く、激しく求めてゆけば。 出演者11人(男2・女9)/22人(男4・女18)上演時間65分の作品。2012年12月 桐朋学園芸術短期大学 演劇専攻一年生のための書き下ろし。大人数でのワークショップでの発表会に際しては、3,4,5場をキャストAの11人,ほかの場を別のキャストBの11人が上演すれば、違和感少なく22人の役者による上演とすることができます。桐朋学園芸術短期大学 演劇専攻47~49期の学生たちとの稽古場のために、初演台本から物語の構造を借りて、登場人物の設定をそれぞれとする作品を、たくさん書き下ろしました。そのバージョンは以下の通りです。※ 以下のバージョンの台本ご希望の方はメールでご注文ください。このSTOREの「ホーム」の最下段にるメールの印(お問い合わせフォーム Contact form)をクリックしてください。そこからお願いします。その際は、<人数、男女比、上演時間>を明記ください。お返事いたしますので、その内容にしたがって段取りを進めていただけたら、pdfファイルをメール添付でお送りします。● 〜 腰を落として両手でキャッチ 編〜社会人チームの廃部が決まったソフトボール選手たち。呆然として行き場のない情熱はいろんなフェティシズムに走らせる。心切り替えて営業職に生きよう!だけど猛特訓しても英語がちっとも身につきそうにない。誰かに求められたくて恋もしないでエッチしたら妊娠しちゃった。どうするの?君たち、みんな!悩みは迷走する。けれど彼らは疾走する。 2012年12月 演劇専攻一年生のための書き下ろし。60分11人(男2・女9)/ 22人( 男4・女18) ●〜ソフトボールバージョン 僕らはもとには戻れない 編〜社会人チームの廃部が決まったソフトボール選手たち。悩みは暴走し、秘めていた恋も歪んで疾走する。禁欲してきたカラオケ、密着し続けてきた濃い人間関係……全てが我々の青春だった。 2013年12月 ミュージカルコース一年生のための書き下ろし。60分バージョン、 70分バージョンの二種類。出演人数はどちらも7人(男1・女6)/ 14人(男2・女12) ● 〜気づかれたくなくて元気なふりして疲れて 編〜 社会人チームの廃部が決まったソフトボール選手たち。悩みが過熱し、悩みすぎた熱はなにかを確かに変えてしまうのか。ジャンクフードが楽しめない禁欲的な習慣、先輩を独占したい感情、筋肉あってこその恋心、なにかを変えなければ。しかしなにも変わりたくないのが僕らだったりする。2013年12月 ストレートプレイコース一年生たちのための書き下ろし。60分 11人(男3・女8)/ 22人(男6・女16)● 〜ソフトボールバージョン 大丈夫受け止めるよ あなたはひとりじゃないんだ 編〜社会人チームの廃部が決まったソフトボール選手たち。喪失感に苦しむアスリートたちは様々にもがく。コーチに恋して頑張ってきた女子はふられたあとは魔性の女にかわっちゃうのか?男女交際なんて無縁だった男女はいっそなぐり合ってても結婚前提につきあおうか?かわいい服なんて着たことない筋肉ウーマンはふりふりスカートに挑戦できるか?のりこえよう!わかっちゃいるけど立ちすくんじゃうのが僕らなんだ。 2014年12月 ストレートプレイコース一年生の学生のための書き下ろし。60分10人(男3・女7)/ 20人(男6・女14) ● ~離れられないのは実はこっちなんだ 編〜 社会人チームの廃部が決まったソフトボール選手たち。選手生命が終わっちゃった。人生のほとんどすべてが終わっちゃったみたいに感じる。地域の子供たちへのコーチなんてやってられるか?眠りたいのに眠れないならいっそ眠らないで生きていくか?理不尽な上下関係なのに捨てられないのが自分か?なにかを変えなければ。しかしなにも変わりたくないのが僕らだったりする。 2014年12月 ストレートプレイコース一年生のための書き下ろし。60分10人(男2・女8)/ 20人(男4・女16)
¥500
顔を見ないと忘れる (出演者2人)
監獄の面会室。会いにきた妻に夫は無理難題のお願いをくりだします。窃盗をやめられず、監獄に出たり入ったりの生活を続ける夫。子育てをひとりでひきうけ、その負担のつらさのために新しい彼氏が生まれかけている妻。子どもは父の顔をしばらく見ないと忘れてしまうかもしれない。シャバに戻りたい。さみしい人生はいやだ。今、この面会室でチューしたい。愛を確かめるのだ。妻はどうするのでしょう。どこまでつきあうのでしょう。私はここにいていいのか?ここに来ていいのか?……ドラマは不思議に滑稽な味わいで展開されていきます。2007年6月 演劇ユニット昼ノ月公演90分2人(男1・女1)2009年、第9回愛知県芸術劇場演劇フェスティバルグランプリ賞受賞。
¥500
風と黙ってすわってて (出演者3人)
風と黙ってすわってて 事業を起こしては失敗し夜逃げし、を繰り返す兄がいつものように妹のマンションに転がり込んでいる。妹はいつもなにも言わないで受け容れる。そこへ妹の友・山形が恋愛相談に来る。変人で嫌われ者の山形との噛みあわない会話にいちばん困っているのは実は当の本人・山形なのかもしれない。激高した山形の残していった罵声は妹の心を傷つけた。妹は幼い頃から兄を慕って慕って、それは人の手触りを確認できない妹の不安の裏返しとも言えるのだ。兄は去ろうとする。あえて卒業するために。卒業するために人が必要とするのは風なのかもしれない。黙って座っていてくれる風さえそこにあれば、人は確かめられるのだろう。人の気配を。 1998年8月 劇団八時半公演70分3人(男1・女2)…LEAF8号掲載
¥500
髪をかきあげる (出演者7人)
髪をかきあげる畳の部屋、ガラステーブルの上に恋人が立っている。馬の真似をしている。トモヨは恋人を追い返す。勝手に門限を決めて、一人になる時間を作っているのだ。そのくせ一人になると「どうして帰るんだバカ」と呟くような孤独な心持ちがやってくる。そんなトモヨに新しく強烈な恋が訪れた。職場の先輩。妻との孤絶に苦しむ先輩はトモヨに問い掛けた。「心に空洞があるでしょ。」そして「髪がかきあげられるくらいになったらもっと素敵だなあ」反発しながらも髪を気にするようになってしまうトモヨ。彼女の出会う人たちはどうしてこうも淋しいのか。淋しさに悶えて夜の川をさまよう蛍みたいな現代人たちの心象はトモヨにちっとも希望を与えない。 1995年8月 劇団八時半公演第40回岸田國士戯曲賞受賞90分7人(男4・女3)…LEAF1号掲載。…戯曲集「髪をかきあげる」(白水社)掲載●同作品の英語版「Fireflies」…「Half A Century Of Japanese Theater1990's」 (紀伊国屋)掲載)●同作品のロシア語版「Конский хвост」「СОВРЕМЕННАЯ ЯПОНСКАЯ ДРАМАТУРГИЯ 1(現代日本戯曲集1)」に掲載
¥500
川底にはみどりの魚がいる (出演者3人)
近未来。戦争が始まっている。中島のもとに召集礼状が届いた。昔反体制活動家だった彼が生きては帰れない激戦の最前線に送られるのは確実だ。恋人が籍だけでも入れてくれと駄々をこねている。自分の死後の不幸を思うと受け入れられない中島。女心をくんでやれと説得に来る現役活動家の島之内だって実のところ中島の死を悲しむ女性の一人だ。死出の旅立ちを直前に控えた数日間は幸せの気配すら漂う穏やかな日々だ。恋人たちが淋しく眺める川の流れ。その川底には目の覚めるような緑色の魚がいた、ような気がした。神様が見せてくれた奇跡だったのかもしれない。1998年6月 劇団八時半公演90分3人(男1・女2)LEAF7号掲載
¥500
牛乳で夜を染めたい (出演者8人)
舞台は定時制高校の夜の教室。ここに来た動機や事情はさまざまだが、多くの生徒はなにか心に屈託を抱えている。書道部を全国一にしようとしている教師は教室でも若者たちの尊敬を集めている。この学校に出会えて救われた、という生徒が誕生日になにかプレゼントしよう、とクラスで討論を始める。定時制特有の感謝のパターンが恥ずかしい、と拒む生徒。恥ずかしがること自体が定時制を引け目に感じてるってことだ、誇りを持て、と反論する生徒。不登校による学業不振から定時制に入学してきた三人組は、やはり今でも学校生活になじめるかどうかのぎりぎりでそれどころではない。中学時代に不良と呼ばれ、あらゆる暴力沙汰をやりつくしてきた男子生徒。今は妻子を養いつつ通っている二十三歳の兄貴肌の彼は、生活苦のためにここに来た女生徒が、バイト先の店長と不倫のあげく妊娠してしまったことに気づいてしまい、相談に乗っている。皆、プレゼントどころではないのだ。一時間目が終わるともう夜だ。長めの休憩時間、あわててパンをほおばるその教室は、それぞれの屈託をただありのままに受け入れてくれる。いつものどにパンをつめて噴出してしまう牛乳。白く染められてしまう机、床。夜もまるごと染めんばかりの勢いの彼らの大慌ての青春模様を、繊細なタッチで描く。彼らはささやかにでも感謝の気持ちを表現できるのか?達成目標も繊細なのだ。 2005年12月 伊丹アイホール演劇ファクトリーのための書き下ろし作品上演時間 80分出演者 8人(男3・女5)あるいは(男2・女6)※出演者16人のバージョンもあります。ご希望の方はメールでご連絡ください。
¥500
区切られた四角い直球 (出演者8人)
高校生テルユキはある日学校をサボって部屋にこもることにした。特に目的もなく。普段目にしたことのない母の日常が新鮮だ。野球部員のテルユキは日々肩が強くなり、恋人もいて、楽しく青春を謳歌している、はずなのだが屈託した気分が離れない。ふりきろうと試みるシャドウピッチングではどうしてもストライクが入らない。固有の言葉を探すのにどうにも出口が見つけられないでいるのだ。1988年10月「区切られた四角い直球」劇団八時半公演第4回テアトロ・イン・キャビン戯曲賞受賞60分8人(男6・女2)…戯曲集「靴のかかとの月」(而立書房)掲載…雑誌「新劇」1989年8月号掲載90分8人(男6・女2)※この作品にはいくつかの場面を増補した出演者11人(男6.女5)のバージョンもあります。 ご希望の方はメールでご連絡ください。そちらは、このサイトのメールからご注文くださいませ。
¥500
久保君をのぞくすべてのすみっこ (出演者7人)
女性漫画家のアトリエ。若いアシスタントたちは日々忙しく原稿を埋めている。彼女たちは運動不足。睡眠不足。お菓子を食べる。太る。長時間労働で、男と会う時間がない。漫画家は二本連載が平行している状態で手いっぱいなのに、さらに三本目の依頼まで引き受けようとしている。引き受けないと不安に駆られる悲しい状態に陥っているのだ。「久保君」のために彼女たちは描いている。「久保君」はそこにはいない架空の読者であり、架空の親友であり、架空の神様なのかもしれない。彼女たちはそれでも描き続けるのだろうか。描くことは希望であり、描くことは祈りに近い行為だったはずなのに……2003年11月 劇団八時半公演80分7人(男1・女6)
¥500
黒い空とふたりと (出演者5人)
不登校、学業不振などのために高校中退した子供たちを教える大検専門学習塾に新しい先生がやってきた。塾の経営は利益優先でないため苦しい。理想にこだわり今でも引きこもりがちな女性講師を大切にしているリーダーは今にも折れそうな勢いのなさだ。子供たちも悩み多いが、講師たちも負けず劣らず悩んでいる。頼りない新入り先生の目にも危なっかしい内情だ。傷を抱えたもの同士支えあって生きることは可能だろうか。桃源郷を現代社会の片隅に築くことは可能だろうか。悩む彼らに、黒い空をひとりきりでなく眺める喜びに満ちる日が来るのだろうか。1999年11月 劇団八時半公演100分5人(男2・女3 )
¥500
これは白い山でなく (出演者10人)
山の中に立つ食品工場。その従業員の宿泊施設に、バイトの男女がいる。山登りに学生時代を費やし、恋人を失った傷心を引きずったまま、山で暮らしたい一心でその工場に婿養子に入ったような男が社長では、経営も順調とは言えない。バイトの男女もそれぞれが自分のことをうまく処理できないでいて、そのもめ具合、かばいあい具合は滑稽なほどだ。暖冬でちっとも白くならない山。皆が困りきって見上げる山は永久に白くなりそうにない予感すらする。そんな冬。若者たちはもがき、そしてきっと希望の種を拾うことはできるはずだ。2001年1月 近畿大学演劇専攻9期生卒業公演100分12人(男5・女7)
¥500
桜井 (出演者6人あるいは10人)
PKO(平和維持活動)の大義名分で海外派兵を策動する日本政府に反対する若き活動家・桜井。職場集会には弁当目当ての出席者しかいない。恋人はいるが活動で忙しい桜井に放置され、別れを予感している。運動に疲れた夜に彼に話しかけてくるのは幻想の中の孤児だ。天皇の軍隊に母を虐殺された中国の少年が心に住んでいる。誠実に生きようとする桜井の姿はあわれにおかしい。1993年2月 劇団八時半・創造集団アノニム合同公演KYOTO演劇フェスティバル大賞・脚本賞受賞100分10人(男6・女4)※ この作品は初演時60分 出演者6人(男4・女2)で書き下ろされました。そのバージョンの台本ご希望の方はメールでご注文ください。このSTOREの「ホーム」の最下段にるメールの印(お問い合わせフォーム Contact form)をクリックしてください。そこからお願いします。その際は、<人数、男女比、上演時間>を明記ください。お返事いたしますので、その内容にしたがって段取りを進めていただけたら、pdfファイルをメール添付でお送りします。
¥500
さくらみたいな恋のこと (出演者9人)
お見合いパーティにサクラを派遣するカンパニーの事務所。ただしここは単に営利が目的ではない。もともと真面目に出会いを求めていたパーティの常連の女性たちで作ったサークルだ。皆が出会いを獲得し、恋愛を獲得し、きちんと卒業することをめざしている。なのにここに集う女性たちは皆が皆それぞれの事情で恋愛に踏み込めない。自分たちの同性愛を認められずにいるカップル。お互いから離れることが辛い姉妹。女らしい体形であること、そういうことの全てを認められないでいる女性。結婚を欺瞞だとする男に恋をして、追い付こうとしてあえて第二第三の不倫相手を求める人妻。恋は彼女達にとって簡単ではない。そして人にとってそもそも恋というのは簡単ではない。生きることそのものへの望みをつなぎたくて今日も彼女達はお化粧してサクラに出掛けるのだ。2002年1月 近畿大学演劇専攻10期生卒業公演110分9人(女9)
¥500
山脈をのぼるきもち (出演者3人)
ギャンブルで借金を膨らませてしまった旧友が男を訪ねてくる。逃走資金を貸してくれと言うのだ。貸したくない男。そこへ旧友の恋人までやってくる。連れて逃げてくれと言う。恋とは理性では割り切れない情熱で、どう転んでも不合理な成り行きは予想できるのにそれを否定する気になれないという。男はわからなくはないと感じる。男は昔その女のことが好きだったのだ。心の中にある割り切れない情熱に手を焼くのは一人じゃない。けれどその情熱を信じたい、とも思うのだ。旧友は翌朝、一人で逃げた。残された二人は昔三人で行った信州の高原を思い出す。山脈は遠い。けれど歩いているうちにそれは近づかないとも限らない。登れないとも限らないのだ。1997年10月 劇団八時半公演70分3人(男2・女1)
¥500