Mardi gras ~贅沢とは~
普段わたしたちはどんなときに贅沢をするだろうか。 ーボーナスが出たら、海外旅行に行く。仕事が一段落したら自分のご褒美に欲しかったけど高くて買えずにいたものを買ってみる。...などと、何かしら特別な意味を持った日に贅沢をすることが今日の日常ではないか。
今回取り上げるのはMardi grasーマフディ グラ (肥沃な火曜日)である。この日は謝肉祭(カーニバル)の最終日のことを指す。今年は2月16日がその日だった。
そもそも、謝肉祭(カーニバル)とは...元々、四旬節【復活祭(イースター)の46日前の期のことを言い、食事の制限つまり断食など、節制をし、自身の回心・懺悔をして復活祭に向け心の準備をする期間。】の始まる灰の水曜日の前夜の肉に別れを告げる宴から始まった。四旬節が始まると断食期間となり、動物性の肉やバターなどの贅沢な食事ができなくなる。そのため、フランス、フランスのみならず西方教会文化圏の多くはカーニバルの期間に断食前の最後の贅沢な食事を楽しむ習慣ができた。
そのため、Mardi grasでは現在でも、beignets (ベニエ)と呼ばれる揚げ菓子、クレープやワッフル、パンケーキといったお菓子が食べられる習慣が残っているのである。挙げたこれらの菓子たちは、材料はシンプルであるが、中世当時は貴重であった卵やバターなどの動物性の材料をたっぷり使った贅沢な菓子であり、どれも伝統的ものである。
Mardi gras のお菓子たちはひとつひとつのエピソードが大変多くなってしまうため、これから一つ一つ、紹介していこうと思う。
お菓子という存在は食事の栄養としては必要がない、逆に言えば、不必要なものかもしれない。しかし、こうして文化として人を支えてきた甘いものの存在を考えると、人間の精神面を支える重要なものであったことが見えてくる。贅沢は特別な日に特別なお菓子を食べること。それは今も昔も変わらないことである。
1800年代に実際に使われていたワッフル型(エーデルワイスミュージアム貯蔵)
次回はbeignets (ベニエ)について、書いていきたいと思う。