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【⚽️日本サッカーを愛そう】【ジュビロ磐田】松原后を語ろう。

「ぬるい。」

と、帰国直後の藤田SDがそう言ったとき暗澹たる思いがこびりついて離れなかった。

「ぬるい」とは風土であり、風土とは一朝一夕には変えられないものであるから。
ジュビロ磐田はぬるくって、つまりそれ故にJ1では勝てなかった。


実は、そんなぬるま湯を一瞬で沸騰させる方法がひとつだけある。他でもない。そこに熱々の石をぶち込むのである。

熱々の石とは、
例えばドゥンガや闘莉王のような熱血漢だったり、中田英寿や本田圭佑のように調和より主張を優先する強烈な先導者だったりする。

この頃、ドゥンガの話題が出るたびに現場復帰を強く願う人が多かったように思う。それは多くの人が本能的にこのぬるま湯で風邪を引いてしまいそうな危機感を持っていたからに他ならない。
実は僕自身もそうであった。

しかし、

熱々の石の投入は一方でギャンブル的側面を併せ持つ。何かを大きく変える力がある代わりに、これまで積み上げてきたものを吹き飛ばしてしまう危うさがあるからだ。
故にこの手法はゲームチェンジャーになりたい(失うものが少ない)新興勢力が使う手段でもある。現に町田はこれによって悲願を達成した。

磐田は、どうするべきか。


結論から言おう。
この非常に難しい問題を解決した選手こそが、松原后であると個人的には思っている。



■磐田の漢

試合中に激しく相手選手に詰め寄る姿。あるいはゴール後のセレブレーションで味方選手を睨みつけながら手荒く祝福する姿。ベンチに下がった後もピッチ内や線審に向かって叫ぶ姿。
かと思えば痛すぎる敗戦で人目をはばからず号泣する姿。

これら真っ直ぐかつ熱過ぎる姿を見て、多くの人が彼を磐田の漢だと言った。

漢(おとこ)とは、熱血漢の”漢”を指す。
彼のいるピッチはいつだって沸騰しそうなほどに熱い。勝ちたいというより、負けたくないと言った方がしっくりくる。

強烈な負けず嫌いが放つエネルギーは、明らかにこれまでの磐田とは異質だった。


果たして彼は、熱々の石なのか。

個人的には、
待望のそれではあるものの、なるほどそう来たかと思わず膝を打つような少し特殊な”石”であったと回顧する。

キーワードは、「背中」

多くの人が松原選手を向こう見ずな熱血漢だとみているが、実は私の印象は違う。
彼は非常にクレバーで、策士なのである。


ジュビロ磐田 Xより



■上手くいかないとき

人は弱い生き物だ。
上手くいかないとき、自分の思い通りにいかないとき、原因を自分以外に認めてしまう。

本気で勝ちに行った部活を思い出してみる。負けず嫌いなチームメイトが叱責する場面が必ずあった。

「お前らもっと声出せよ!!」


気持ちはわかる。正しくもある。しかし、正論であったとしてもそれは事態をあまり好転させない。

部活であればその役は顧問がやってもいい。しかしそれが大人の仕事場(プロチーム)であったらどうか。海外では大人同士の衝突は日常茶飯事かもしれない。しかし日本は違う。
ドゥンガや闘莉王は本質的なメンタルが日本人のそれとは違う。そして日本人である中田英寿や本田圭佑は、結局日本に戻ってそんな姿を見せる事はなかった。

では、強烈な負けず嫌いという点で同質である松原選手はどうしたか。

彼は、
強い気持ちを外に向けて発することでチームを熱したと、個人的にはそう読み解いた。


相手チームの選手や審判に激しく詰め寄る行為が必ずしもgoodとは言えない。しかし、うまくいかない時 士気が低い時 そして、ぬるい時。

彼は率先してその悪役を買って出ていたように見えた。


人のふり見て我が振り直せ、ではないが人は怒っている人を目の当たりにすると逆に冷静になる。
ジュビロ磐田の選手は苛立ちや焦りを覚えた時、いつだって松原后の背中を見て冷静になり、そして自らも熱く戦わなくてはと再認識したはずだ。

チームの中に、彼の様な核弾頭がいるのは非常に心強い。

つまり彼は、
「お前らもっと声出せよ!!」と味方を叱咤(非難)するようなことはせず、”敢えて”外に向けて怒り発する姿勢を見せることで仲間を鼓舞していたと言える。

そして、
(あくまでも個人的な見解にはなるが)これは計算しつくされたタスクであったとすら思っている。
熱々の石は、自らをコントロールし仲間をコントロールする自我を持っていたのだ!

その証拠に松原選手は、今シーズンレッドカードどころか累積警告による出場停止すら受けていない。これは偶然なのか、必然なのか。


サポーターの我々も含め、まんまと彼の背中に熱せられた。

もう一度言おう。
彼は非常にクレバーで、熱い熱い策士なのである!!



■若手とのハブ役

2023シーズンを振り返るうえで、若手の躍進は触れずにはいられない。
てことで色んな事を回顧して、先日こんなnoteを書いた。


実はこの中に書ききれていない、もう一つ大きな要因があると思っている。
それが「松原会」の存在である。

松原選手を中心に若手が集ったグループ。芸能界にもありそうなそんなノリにも近いこの集まりが、実はチーム内における世代間のハブ役として大きな役目を果たしたのではなかろうか。


言うのは簡単だが「世代間の融合」とは実に難しいものである。そこにはいわゆる価値観のギャップがあるし、先輩後輩の関係もある。

中にはFC東京の松木玖生であったり、かつてガンバにいた堂安律であったりと、自らそのギャップを埋めていける強烈な若手もいるとは思うのだが、
磐田の場合はなかなかそういう選手はいなかった。

ヤットさん、山田キャプテン、大津社長、コースケ選手、大貴選手、雄斗選手ら錚々たる面々が輪を作る中、そこに割って入れる若手などなかなかいないだろう。

よってその輪は奇麗に分割され、試合に出ていない若手衆はオンでもオフでベテランとの融合とは真逆の世界にいたと想像する。



そんな若手衆の拠り所となったのが松原選手の存在。

彼の語りは、若手の意識向上のみならず試合に絡んでいくリアリティをもたらしたに違いない。


記事中のこのコメントがそれを示している。

「海外に行っていて、そこではみんな年齢なんて気にしてないんですよね。頻繁にコミュニケーションを取るし、壁がない。だから、磐田に来た時、思ったんですよ、若手が先輩に気を遣う必要はないのにって」

彼は27歳というちょうど間の世代であると同時に、チーム内でも替えの利かない主力であり、海外移籍経験者であった。
海外経験者の彼が言い、言うだけでなく頑なに若手を誘ったというのはどれだけ彼らの積極性を引き出したか。

(記事の中で)海音くんめっちゃ先輩に気を遣ってんじゃん!という突っ込みを抜きにしても、このことは本当に松原選手の功績だと言える。

ベルギーでの挑戦を失敗だという人もいるが、このことを踏まえれば海外移籍に失敗など無い。
心からそう思うのである。



■ドリブラー后

さて、
勝手な想像にてあれやこれや語ってみましたが、最後にずっと思っていた考察をこれまた勝手にしてみたい(笑)。
それは、

ドリブラーとしての松原后について!


ドリブラーと言えば、
一般的にはスピードであったり切り返しの鋭さであったりがフィーチャーされる。もちろんそれは大事な要素ではあるものの、個人的には優れたドリブラーとは、重心の外し方が圧倒的に上手い選手ではないかと強く思うようになった。

Abemaでプレミア解説をしている鄭大世氏は、三笘選手のドリブルを後出しジャンケンだと言っていた。

つまり相手の出方を見切って素早くドリブルの舵を逆に切れることを指しているのだが、これには言い得て妙だと激しく共感すると同時に、磐田で言えばそれは松原選手なのではないかと直感した。


松原選手のドリブルにはスピードも切り返しの鋭さも無い(失礼!)が、スルスルと相手の間を抜けていける不思議な間合いがあり、圧倒的に奪われることが少ない。
一時期、持ち過ぎだと言われた時もあったがそれは言い換えれば彼のドリブルが狩られていないことを指している。


クロス回数や中に入ってシュートやパスが出来ていることを考えると、主戦場がサイドであることを差っ引いてもそう言い切って良いのではないだろうか。

重心を見切った切り返し。


途中合流した2022年はあまりその点に着目することが出来なかった。
満を持してJ1舞い戻る来シーズン。ワンランク上の相手に対してどこまでこのドリブルが活きるのか。

個人的には非常に楽しみにしている要素だったりする。


そして、
磐田の誇るドリブラーと言えば忘れてはいけないもう一人。そう。松原会の若大将 古川陽介である。


古川選手が松原会で学ぶことは海外移籍への意識とそれから、ドリブラー后の天性的な”外し”の体得なのかもしれない。と、勝手に息巻く。

もともと持ち合わせているテクニックと、日々進化しているであろう体幹と脚力に、この”後出しジャンケン”が備わればいよいよ誰も止められない脅威となる日が来るかもしれない。

松原会の裏の顔は、ドリブル研究所かも知れない。
研究の成果でもってJ1の左サイドを制圧する日が来れば、こんなに熱い展開は無い。



とにもかくにも、
松原后と共に今シーズンのJ1に一石を投じようではないか!!

熱々の石を🔥🔥








本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!

※今回も素敵な写真を提供してくださった海の家(@uminoie_blue)さん。ありがとうございました😭!!






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