【ジュビロ磐田⚽️】【雑感】温い(ぬるい)チームが生まれ変わるにはどうしたら良いか。
こちらのツイート。
半分冗談で、半分本気。
ここ数年間で昇降格を繰り返すジュビロ磐田。
黄金期とはもう20年以上も前の話であって、多くの若きプレイヤーにとってこのクラブはすっかりJ1強豪ではなくなてしまった。
ユニフォームに輝く3つの星はもはや「記憶」というよりは「歴史」。
いつまで経っても新たに追加されないのでポロラルフローレンのロゴぐらいどんどん大きくしていかないと存在が危うくなっている。
2040年代までには何とかしたい。
とまぁ冗談はさておき。
今回は降格危機に瀕するたびにまことしやかにささやかれるチームの雰囲気について。
弱いのではなく、ぬるい。
かなり個人的かつあまりロジカルではないけれど、ずっと思っていたことを書き起こしてみたい。
■それはカルチャー
まずはっきりさせておきたいのは、
「ぬるい」という表現が必ずしも選手やスタッフの怠慢を指しているわけではないということ。
これは擁護でも建前でもなく本音として言いたいけど、現場は絶対に頑張っている。全力を尽くしている。実際に練習を見に行ったこともあるが、ダラダラという表現は当て嵌まらない。
では、ぬるいとは何なのか。
それは一言で言えばそれはカルチャー。こんな経験をしたことがある。
その昔、出張でよく単身中国に行っていた。中国と聞くと厄介な印象が多いかもしれないけど僕の周りの中国人は皆とても優しかった。
特に相手先の人事の女性はとても親切で、食事中に僕が会話を理解できないでいると「中国では今こういうのが流行っていて、その話をしています」とか、先回りして説明してくれる気の利きようだった。
中国人と一言で言っても(当然ながら)きめ細やかな心遣いの出来る人はいる。これが僕が、国際問題は国と個人を分けて考えるべきと思っている所以なのだが、本題はここからである。
出張先に要望していた小包が届いた。
それを先ほどの人事の女性が「鈴木さん届きましたよー」と足早に持って来てくれたのだが、次の瞬間 包装を乱暴にほどきグルグルーとしてその辺にポイッと捨てたのである。
これにはさすがの私も横転した。
はっきりさせたいのはこの行動に彼女の悪意はないということ。なぜならそれがその国のカルチャーだから。
ゴミをオフィスにポイッとしてしまう彼女だが、その後も相変わらず異国から来た人物に対する心遣いは最高だった。
話を戻そう。
ぬるいとは怠慢ではない。悪気も無い。カルチャーなのである。
■カルチャーの変え方
カルチャーが怠慢や悪気とは異なる世界線に存在するなら・・。
そう。こんなに厄介な話はない。それならいっそ悪気があった方が良かったとも思える。言い換えれば、この変革が簡単なら世の中の組織はもっと簡単に結果を出している。
カルチャーとは何なのか。それはそこに集う人たちのマインドではなかろうか。
ユニクロの柳井さんの本に会社とは単なる人・モノ・金の集合体であり実態はない。と書いてあって、なるほどと納得したことがある。
つまり組織というのは、立派な自社ビルを保有する大企業であっても突けば倒れる集合体でしかなく、だから大企業病というのは起こり、どんなに会社が大きくても倒産してしまう。
つまり、その集合体を維持しているものは言い換えればそこに集まっている人たちのマインドそのものなのである。
では、ぬるいチームは果たしてどんなマインドになればカルチャーは変わるのか。
個人的にはそれは、
恥ずかしいと思う気持ちではないかと思っている。
■一時代を築いたフロンターレのマインド
対象の記事が探せなくて申し訳ないけど、一時代を築いたフロンターレに関する記事の中で僕が大好きだったのが、練習の強度に関する話。
熱いとか激しいとかではなく、
ボールを蹴るにしろトラップするにしろ、ドリブルするにしろ、相手のプレッシャーを受けながらキープするにしろ、出来ないと恥ずかしいといった内容だった。
これがプロだと思った。誰も悪者になってないのにも関わらず、圧倒的な説得力。
例えばジュビロ磐田の選手が単身でスペイン代表の練習に合流したとしよう。プログラムは2日間だ。
初日。最も印象深く心に残るのは、恐らく言葉の壁でも鋭い戦術眼でもない。
蹴るとか止めるとか、シュートを枠に入れるとか、超絶基本的なことの差に対して恥ずかしいと思う気持ちではなかろうか。
そしてその夜。
ショック。焦り。そしてそれを何とか闘志に代えて翌日を迎える。きっと初日とは見違えるほどの目つきになり、腹に力を入れてピッチに入るに違いない。
このヒリヒリとした感じ。
少々不健康な感じもするけれど、これこそがぬるいの対極にあるマインド。すなわちコンフォートゾーンを抜けた状態である。
強いチームには、良い雰囲気の中にも必ずこれががある。そしてこれの常駐こそが正しいカルチャーなんだと思う。
■恥ずかしいという感覚の作り方①
では実際にこういう環境を創り出すにはどうしたら良いか。
ここで間違えてはいけないのが、圧倒的に上手い選手を連れてきたところでそれは模範にはなるが、カルチャーは変えられないということ。
これはジュビロ磐田が最もよく理解しているはず。
カルチャーとは、習慣になること。気付かないほどに当たり前になること。それはすなわち、高い基準が組織のマジョリティになること。
つまり最も手っ取り早いのは大部分を取り替える。これである。
それを可及的速やかに実践し、結果を出したのが他ならぬヴィッセル神戸である。イニエスタやフェルマーレンなど世界的基準に加えて元代表選手をこれでもかと入団させ、あっという間に基準を上げた。
既存の選手、あるいは新たにやって来た若い選手が彼らに囲まれて「ショック」や「焦り」を感じてヒリヒリしたのは想像に難くない。
そして、まんまと成長した。
しかしながらこのやり方は、圧倒的に金がかかる。
ではどうすれば金を掛けずにこの「恥ずかしい」という感情を醸成する組織が作り出せるのか。
そんなロジックで必死に、半分冗談で、でも半分本気で考え抜いた策こそが、大量の大卒ルーキーと、ブラジル国籍選手という環境だった。
こうして話は、冒頭のツイートに戻る。
■恥ずかしいという感覚の作り方②
なぜ大学生に目を付けたのか。
それは他でもない。学生(というか若手)にありがちな「お前そんなんも出来ないの?」というやや残酷な、でももの凄く素直なこの感覚に他ならない。
何の競技でもいい。少しでも真剣に部活をやっていた人ならわかるだろう。チームメイトでもありライバルでもある仲間の成長ほど刺激の強いものはない。
絶対に負けたくないというライバル心が自分をまた成長させる。お互いの感情と感情が素直に切りつけあって、削りあって、そして遂には磨かれる。
これを我々は切磋琢磨と呼んだりする。
なんで負けてるのに走らねぇの?
なんでおまえシュート打たねぇの?
なんで前空いてんのにボール後ろに下げんの?
プロは部活ではない。
ただ一方で、部活の方がピッチ外も含めてよっぽど競技っぽい。僕の知っている限り、サッカーは興行である前に競技である。
部室から聞こえてきそうなこんな会話が、プロ選手同士の会話から聞こえてきて欲しいと思うのは余りにも稚拙だろうか。
そしてブラジル人。
彼らの場合はそもそものマインドが違う。冒頭で中国人の例を挙げたけど、要はそういう事だ。
良い人とか悪い人である前に、彼らのサッカーに対する情熱、執着はもはやカルチャーそのもの。
なんで負けてるのに走らねぇの?
なんでおまえシュート打たねぇの?
なんで前空いてんのにボール後ろに下げんの?
彼らはこれをプレーと態度で示す。もちろんこれが強いチームを創るための全てではないと思うけど、少なくともやらないと恥ずかしいというマインドの醸成には必ず寄与してくれるのではなかろうか。
■試合前のシュート練習
まぁそんな簡単じゃないよね。金も潤沢にあるわけじゃないし。ってはその通りで。
今回のまとめはあくまでも一例、というか考え方のひとつであって具体策ではありません。
しかしですね、個人的にはあまり間違っていないとも思っていて。
というのも前者の神戸式で昇格1年目を無難に乗り切ったのが町田ゼルビアであり、
後者の若手の素直さと勢いで残留を決めたのがヴェルディだから。
昇格同期との明暗は、このマインドの差、すなわちカルチャーの醸成の差かなと、割と本気で思っています。
最後に、
カルチャーという点で僕がずっと気になっていることを一つ。
試合前にシュート練習するじゃないですか。あれ、ほとんどゴールマウスに飛ばないんですよね。かといってあえて厳しいコースを狙っているとか、そういうのもあまり感じない。
ただ何となく、当たり前のようにいつも外れてる。
あくまでも僕が現地観戦した数回の感想ですけど。
試合前のアップなんだからそんなもんだよ。
という意見もあるかもですけど、例えばあの練習をしている10人中9人がバシバシゴールマウスを捉えるシュートを放ってたら、残りの一人は同じように「そんなもんだよ」と言うのかな。
これが今の磐田のカルチャーなのかな、と。
本来は恥ずかしいという感覚があって然るべきだと思うのは、いくら何でも酷なのだろうか。
これを書いている11/17時点で残留に対してかなり赤に近い黄色状態ですけど、神戸や町田のような圧倒的な資金が無いクラブってのは比較的時間に猶予を持ってこのカルチャーの醸成をしていかなくてはいけません。
チームビルドは3年がだいたいの目安。新監督に対して1,2年で結果を見切るのは一般的には酷かなと思いますが、横内さんにとって来シーズンはその3年目。
ここを高いレベルで過ごすか否かってのはチームにとっても本当に大きな意味を持つのだと思います。
クラブの成長は再び小休止してしまうのでしょうか。
本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。