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世界一の朝食(4)
隠居:「いいかい、八。お前ここに来るまでに用たしてないだろう。ここで洩らされたらこまるからな。便所でも行ってこい。」
八:「へ?はぁ、たしかに。わかりやした。お借りします。」
隠居:「いいか。適当な時間というものがあるからな。そう、5分くらいだな。しょんべんだけだぞ。変なことすんじゃないぞ。いいな。」
八:「へい」
…なにやら取り出す隠居…
隠居:「起動起動ヤホーヤホーと。世界一の、朝食っと。お、これか」
隠居:「なんじゃこりゃ。こりゃ飯か?おやつじゃねぇか。」
隠居:「うーん、これじゃわかんねぇなぁ…しょうがねぇ。」
八:「戻りやした」
隠居:「おぅ、八。朝食の件な、明日の晩にでも、教えてやるわ。」
八:「え?今じゃねぇんですか?」
隠居:「今は都合が悪いんだ。いいな、明日また来い。そしたら、教えてやるから。」
八:「へぇ、分かりやした」
…翌日早朝…
隠居:「しっかし来ない間にずいぶん変わったな東京駅も。えっと八重洲地下八重洲地下…あった、ありやがったな」
バビーズ!
隠居:「ここだな。ニューヨークで有名な、ニューヨーカーならみんな食べてる。パンケーキ、世界一、世界一、朝食ってか。」
隠居:「ごめんくださいよ」
店員:「いらっしゃいませ」
隠居:「ひとりなんだけど」
店員:「どうぞこちらへ」
隠居:「えっと…せかいいちをもらえるかな?」
店員:「はぁ?」
隠居:「世界一よ世界一…いや、その、パンのケーキを」
店員:「バビーズサワークリーム パンケーキ 苺アンドバナナ添え、ですね?」」
隠居:「え?あぁ、そのバビーちゃんを頼むよ」
店員:「今からお作りしますので、15分くらいかかりますが、よろしいですか?」
隠居:「え?ええ、構わん、構いませんよ。」
店員:「はい。」
隠居:「えぇえぇ、知ってますとも。いいパンケーキは鰻と一緒で、時間がかかると言いますからねぇ」
店員:「はぁ?」
隠居:「いやいや、なんでもねぇっす。じゃひとつよろしく。」
店員:「かしこまりました」
隠居:「いやしかし驚いたねぇ。ホットケーキ焼くのにそんなに時間がかかるのかい。まさか小麦粉刈るところから始めんじゃないだろうねぇ」
10分経過。
隠居:「…」
15分経過。
隠居:「…」
20分経過。
隠居:「ちょっと遅す…来た来た来やがった。」
店員:「お待たせしました。バビーズサワークリームパンケーキ、苺アンド…」
隠居:「わかったわかった。はいいただきましょう」
隠居:「しかし困ったねぇ。ホントにホットケーキだよ。いや、パンケーキか。シロップは蜂蜜?いやらしいねぇ。それは壇蜜か。こりゃメープルシロップ。」
隠居:「参った、バナナだよ!あたしゃバナナがダメなんだよ!あぁ、苺も!これも苦手なんだよ!」
隠居:「合わせれば旨くなるかな…うん、ならないね。そのままだね。」
隠居:「カリカリはしてるけどフワフワはしてないねぇ。なんで15分も作るのにかかるんだろ。いや、20分か」
隠居:「20分待って、5分で食べちゃったよ。しかし、これが朝飯とはねぇ。」
…あらためて、ネットを確認する隠居…
隠居:「あれ?世界一の朝食って、パンケーキはパンケーキでも、ビルズって店じゃねぇか!バビーズはニューヨークとパンケーキってとこしか合ってねぇじゃねぇか!」
隠居:「ビルズって横浜にあるんじゃねぇか。こりゃあたしの職場の近くだよ…トホホ」
…その夜…
八:「で、ご隠居。何なんですか、世界一の朝食ってのは?」
隠居:「あぁ、それかい。食べたよ。嫌いなものばかり乗ってた。最悪だよ」
八:「え~でも世界一の朝食なんでしょ?」
隠居:「とんでもねぇ。世界一の超ショック、よ!」
…おあとがよろしいようで。