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プリンセスになるために

「留学したいんだよね?将来海外に住むつもりなんだよね…
それなら、黒髪一重の日本顔の方がモテるけど。」
告げられたこの言葉は私の心に未だ深く、重く、残っている。

幼い頃、自分を''醜い''と思う感情は私にはなかった。
女の子はみんな可愛くて、誰でもプリンセスになれる!誕生日プレゼントに買ってもらったプリンセスのドレスのようなエプロンを身につけながら私はそう信じていた。

 だが、私のこの思考は数年後打ち砕かれることとなる。
幼稚園に入り、年長になった頃、私は軽度のアトピー持ちが由来し、口周りがよく荒れるようになっていた。特には気にしていなかったし、薬を塗れば痒くない、それだけだと思っていた。ある日、「きなみちゃん、おばけみたい!おばけくちびる!!!」と言われるまでは。
どう思考を動かそうと、お化けとプリンセスは結びつかない。私はおばけだったんだ、醜いんだ、という思考が頭を離れなくなり、その日以降どれだけ唇の調子がよくなったとしても、私は卒園までマスクをつけ続けていた。

 小学校入学から、中学卒業までは唇について言われることもなければ、ブスだからと言って少しの嫌味を言われる程度で特段大きないじめを受けたわけでもない。
何もない日常を楽しんでいたので、私は特に自分の顔を気にしていなかった。
そんな中、中学卒業の卒業式で私は好きな人に、第二ボタンを交換しよう、と言われ交換した。このことで舞い上がった私は彼に告白すると、なんとオッケーしてもらえたのだ。生まれて初めての恋人や、告白の承認にまるで世界中が私を受け入れてくれたかのような大袈裟な喜びに包まれた。
 しかし、その喜びも虚しく、29日後に彼から別れを告げられたのだ。後1日で1ヶ月だということを記憶していたので、この日にちはきっとずっと忘れないだろう。
その理由と言うのも、「お前みたいな化け物連れて歩きたくない」とのことだった。このとき私は初めて''心が張り裂けそう''という気持ちがわかった。彼にふられたことが苦しかったよりも、化け物呼ばわりされたことが苦しくて、しばらく立ち直れずにいた。お風呂に入るとカミソリで自分の顔をいっそ剥いてやろうかと思ったし、人と話すのが怖くなってしまった。
私がそうこうしている間に彼は、美人な同級生とお付き合いを開始していたが。

 ここから私は、自分の見た目を磨こうと言うことを決意する。彼に未練はないが、もう容姿のせいで辛い思いはしたくない。自分のことを醜いと思う気持ちから解放されたい。
その想いを胸に、ダイエットを開始し、化粧の研究を始めた。いざ始めてみると楽しいもので、「私の骨格的にこの服の形の方がいいだろうな」「今まで似合ってると思ってたけど本当は一重まぶた似合ってなかったんだな」「前髪は長い方がいいな」など、新たな発見がたくさんあった。

 そうしているうちに私は、二重埋没の整形をしようという思考にたどり着く。
毎日毎日アイプチを重ねていたが、アトピーを持っており敏感肌の私はたまに荒れてしまったり、まぶたが伸びてしまったりと言うことを危惧し、二重埋没を決意したのだ。
 当時は高校三年生、所謂受験生で、受験勉強もしつつ、アルバイトをしなきゃいけない環境にいた。
だからといって埋没を諦めたくはなかったので、文字通り身を粉にして必死で働き、必死で勉強し、こっそり端金を貯め…なんとか整形をしたのだ。
自分のお金でするから、自己責任だから、と説得したものの母親に言われたセリフが冒頭の
「留学したいんだよね?将来海外に住むつもりなんだよね…
それなら、黒髪一重の日本顔の方がモテるけど。」だった。

顔のコンプレックスを打ち消したくて、自分のことを好きになりたくて下した決断を「モテたいから」整形しようとしてると言うふうに受け取られたことが傷ついた。うまく形容できないけれど、なんだか馬鹿にされているような気がして、どうしようもなくやるせなくて当時はひたすらに腹が立った。

 整形とは、他人に強制されたことを除き、どこまで行っても自己満足だと思う。なので「整形したのに可愛くなってない」などお門違いでしかないのだ。
その人自身が好きで行っていることを外野が口出す理由も権利など毛頭ない。その人がその人自身を好きになれるなら、それでいいじゃないか。
現に私は、母の言葉に傷ついたものの、整形をし、今の自分に満足している。そのお陰で、もう風呂に入る度に自分の顔を剥こうだなんて思わないし、人の目を見て喋れるようにもなった。「可愛くないのに!」と外野は言うかもしれないが、私が整形したことで手にした自信の価値は大きいことは揺るがない。

 今、もし時を戻せるなら、化け物呼ばわりされて落ち込んでいた私のもとに行ってハグしてあげたい。
私以外にも、顔に悩みを持っている人全ての人をハグしたい。
自信がつくのならば、何を使ってもいいと思う。
ただ、ちょっとでもいいからいつもなるべく自分のことを愛することを忘れないでいてあげて欲しい。
とてつもなく醜く見えて、愛せるわけない!と思うかもしれない。
でも、哀しくも顔で人を判断する人がいる中で、自分のことを内面、好きな食べ物、短所まで全部わかっているのは、あなたしかいないのだから。
あなただけはあなたの味方でいてあげて。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
私は、心の底から自分のために努力する、自分を少しでも愛してあげられる女の子はみんなプリンセスだと思います。
すべての人が自分のことを心から愛せる世界になりますように。


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