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芥川龍之介・作「ピアノ」朗読表現についての考察

「ピアノ」作品背景

  • 作者:芥川龍之介 1892(明治25)ー1927(昭和2)

  • 発表:「新小説」1925(大正14)年5月

  • 人物:語り手(物語を進行させる一人称視点のキャラクター)

  • 舞台:横浜の山手、震災後の荒廃した景色

物語の構成(起承転結)

1.    起 : 物語は、語り手が雨の降る秋の日に横浜の山手を訪れる場面から始まります。このエリアは震災によって荒廃しており、その風景が詳細に描写されています。特に、壊れたピアノが象徴的に描かれ、語り手の注意を引きます。
2.    承 : 語り手は、ある人物を訪ねるためにこの荒れ果てた地域を歩きます。その道のりに、崩れた建物の跡地にあるピアノと、色あせた楽譜に目を留めます。この段階で、荒廃した中にあるピアノの存在が強調され、読者はその背景について考え始めます。
3.    転 : 物語の転換点は、語り手が夜になってその場所を後にするときに起こります。突然、ピアノの音が聞こえてきますが、誰もそこにはいません。この超自然的な出来事は、物語に神秘的な雰囲気をもたらし、語り手と読者の両方に不思議な感覚を与えます。
4.    結 : 数日後、語り手が同じ場所を再訪すると、ピアノは依然としてそこにありますが、今回は日差しの中で異なる印象を与えます。語り手はピアノに近づき、疑念を抱きつつも、再びピアノがわずかに音を立てるのを体験します。そして落ちている栗の実を見つけ、ピアノを覆っている栗の木を発見し、ピアノが音を出した理由がわかります。

これにより、語り手は物事に対する新たな理解や受け入れを示唆することで、物語は終わりを迎えます。

考察

この作品は、横浜の山手を歩く語り手の視点から、震災後の荒廃した景色を背景に、超自然的な雰囲気を纏ったピアノの音を中心に展開します。

物語の核心は、崩壊した建物の中で偶然見つけたピアノと、その不思議な音色にあります。

このピアノは、震災の痕跡として、荒れ果てた風景の中に放置されており、その状況が深い寂寥感を生み出しています。

語り手は、このピアノとその周囲の物語に引き込まれ、超自然的な出来事に遭遇します。

この出来事は、物語全体に神秘的で詩的な雰囲気を加え、読者に深い印象を残します。

物語の魅力は、詩的で美しい風景描写と、超自然的な要素が組み合わさった点にあると思います。


朗読表現における私の工夫


「ピアノ」は淡々としたストーリーで、台詞もひと言だけ。大きな盛り上がりなく終わります。

朗読するには難しい作品に感じられます。

しかし、物語の構成は「起承転結」もわかりやすく時系列もシンプルです。

語り手の心の揺らぎは起・承・転・結、4つのパートに分けて考えればよい、と思います。

朗読するには、どこで「盛り上がり」を作るか?

のみならず微笑の浮んだのを感じた。ピアノは今も日の光に白じらと鍵盤をひろげてゐた。が、そこにはいつの間にか落ち栗が一つ転がつてゐた。

ここで「ピアノの音の謎解き」がされます。

超常現象?ではなかったんですね。

謎が解けて一安心?な気持ちを込めて朗読しました。口角を少しあげるくらいです。



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