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海野十三「もくねじ」朗読表現についての考察

海野十三・作「もくねじ」の朗読をYoutubeチャンネルに投稿しました。
前・後編の2回に分けました。


「もくねじ」初出は、1943(昭和18)年1月「譚海」
   

真鍮製のネジ「もくねじ」を通じて、戦時下における忠誠心と運命の皮肉を描いています。
また、太平洋戦争まっただなかに書かれた作品。プロパガンダ的な側面も含まれており、戦時中の日本軍宣伝放送に焦点を当てて、賛美しています。

作者・海野十三について

海野十三(うんの じゅうざ)(本名:佐野昌一)
1897(明治30)年~1949(昭和24)年。徳島県生まれ。
「日本SFの始祖の一人」と呼ばれるSF、推理作家です。

早稲田大学理工科・電気工学専攻。
逓信省電務局電気試験所に勤務しながら、機関紙などに短編探偵小説を発表しました。
「もくねじ」には海野の勤務経験が反映されていると思います。

「もくねじ」あらすじ

前編:工場に仲間のネジたちと共に生まれた「もくねじ」
   いつか機械に取り付けられる日を夢見て工場の倉庫に眠っていた。
   「売れ残り品」だ、と若い工員に引き取られる。
   取り付ける段階で「できそこない」=不良品と発覚!
   ところが誤って放送機に取り付けられてしまう・・・

後編:各地の試験場を廻る「もくねじ」
   当面は異常が出なかったものの、穴から身体が抜けてしまう!
   地面に落ちて転がって、流転の日々が始まる。
   最終的に拾ってくれたのは、所長さんだったが・・・


時代背景と作者の意図

「もくねじ」は、大東亜戦争(第二次世界大戦)の時期に執筆された作品です。戦時下の日本社会や軍国主義の雰囲気と、作者の職歴(逓信省電務局電気試験所に勤務)が作品に影響を与えていることでしょう。

作品の魅力

真鍮のネジを擬人化しています。工場で生まれて日が浅いことから、少年を連想させる主人公です。
童話のような雰囲気を持っているので、朗読するには楽しい作品でした。

主人公である「もくねじ」は、工場で作られ、放送機械工場に納品される過程で幸運と不運を繰り返します。
孤独感や不良品だったために「ネジ」としての潜在能力が達成されなかった虚しさ・悲しみが、輝く真鍮のネジの美しさと対照的に描かれています。

朗読する際の表現の工夫

作品は5つのパートに分かれていますので、朗読するペースはパートが変わる際に変化が付けやすかったです。

地の文は主人公「もくねじ」の語り。青少年の設定で良いと思います。
セリフ有りで登場するのは、
・倉庫係のおじさん
・若い工員さん
・ベテラン工員の木田さん
・木田さんの相方(かん高い声の男)
・若い工員二人(それぞれキャラが違う)
・「もくねじ」を拾う7歳くらいの女の子
・女の子の友達
・所長さん

「若い男」「中年の男」の会話~などと、キャラ設定は割と容易。

あとは、どう、生き生きと読むか?

楽しんで朗読できました。

ラストの表現は迷いました。

喜怒哀楽、全部試してみました。

どう感じていただけたでしょうか?


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

須山里華(すやまりか)


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