2020年ドラフト会議・全体総括 ~"勝ち組"はあのチームだ!~
前置き
皆さまお晩どす。@suwaharu07 と申します。
すでに2週間が経っておりますが、ドラフト会議の感想はいかがでございましょうか? 私は事前予想や仮想ドラフトと贔屓チームの指名が結構違っていたので泣いていました。
ただ泣いていても仕方がないので、落涙の原因となった2020年ドラフト会議の分析でもやろうかと思い記事を書いています。
さてさて、『ドラフト勝者』の単語を借りた今回のnoteですが…、
"勝者"がいるということは"敗者"もいるわけでして、我ながら強い言葉をチョイスしたものでござぁます。
なぜこういう文句を使ったかといいますと、今年のドラフト会議は、
・事前の予想と大きく異なる選手指名
・各球団の独自路線に沿った指名
これが目立ったのではないか、と思うわけです。具体的には、あの球団とか、あの球団とか、私の贔屓チームとかですね。
私自身もドラフト予想をしていましたが、12球団どこの指名もファンの想像、各紙スポーツ評論家の予想に反する指名が多かったのかと思います。
「えっ! ここであの選手を指名するの!?」
「あれ!? この選手は指名されないの?」
ドラフト後に色々な掲示板で野球ファンの意見を見ましたが、こういう声が今年は非常に多かった。まあ、毎年のように繰り広げられる光景ではあるものの"予想外"のドラフト会議だったんだな、と思った訳です。
さて、ここからが本題です。
"予想外"が相次いだ2020年ドラフト会議。ある種ゲームともいえるドラフト市場が"荒れた"ということの表れであり、そこには"流れを読み切り利得を増やした勝ち組チーム"が生まれたといえます。
競馬でいえば万馬券を当てるような。ラッキーパンチか計算づくかは分かりませんが、各チームのファンが驚くような指名の相次いだドラフトにも「得をしたヤツ」がいるはずです。
てなわけで、以下の手順で"勝ち組チーム"を炙り出そうと思います。
①ドラフト指名を受けた選手の参照
②順位ごとに指名された選手タイプの傾向分析
③2020年ドラフト会議全体の傾向まとめ
①、②の分析を基に③の結論を見出し、これらに最も適合する指名を叶えた球団を"勝ち組"として評しようと思います。
なお結論から言ってしまうと、
"勝ち組"チーム→各紙スポーツ評論家から低評価気味の"あの球団"
"負け組"チーム→やっぱりスポーツ評論家から低評価気味の"あの球団"
こんな具合の分析結果になってしまいました。
前評判が低い2チームの勝因/敗因は一体どこにあるのでしょうか?
それでは、2020年ドラフト会議を分析していきまっしょい!!!
ドラフト指名選手の振り返り
まずは支配下指名を振り返ってみることとします。指名人数は計74人ということで、佐々木・奥川ドラフトの昨年から変化はありませんでした。
続いて、育成指名の一覧です。1球団の育成指名が画像からは見切れていますね。
三軍の試合を成立させるための"数合わせ"選手をクビにする……そのために育成大量指名ってバカじゃねえの!? と思いますが、私の個人的な感想は今回の分析に反映させておりません。
さて、ここからが分析のしどころです。まずは支配下から順に、
"1~3位の上位指名"+"4~6位の下位指名"+"育成指名の1位・2位"
と区切りを入れます。ドラフト指名を受けた選手たちを上記の3ステージに分け、彼らのポジションと年齢層に着目するという手法をとりました。
3位ごとに区切るのは、ウェーバー指名順がちょうど一周するためです。
4位以降の下位指名は、2人ずつ指名すると指名順が一周します。
ここは迷いましたが、全球団の支配下指名人数を見て、最も収まりの良い4~6位でまとめて考えました。育成指名は、球団によって指名数の差が激しいため1・2位のみの分析となります。
上位指名を受けた選手の分析
先ほど貼ったドラフト指名選手の画像をちょちょっと加工し、年齢とポジションで色分けをしてみたところ、こんな風になりました。
大学生のピッチャー多いな! という印象を受けます。
上位指名36人。年齢で見ると23人が大卒・社卒。13人が高卒です。
ポジションで見ると、36人のうち投手が21人となります。15人の野手について守備位置を細分化すると、捕手3人、内野手8人、外野手4人でした。
大・社卒>高卒、投手>野手の人数比となっており、多い方の分類を掛け合わせた大社卒投手は17人となっています。
つまり上位指名の約半数は大社卒の投手が占めており、
「即戦力投手へ偏ったドラフト」
になっていることが分かります。
大社、または投手へ偏るのは珍しくないことですが、大社投手がここまで重視されたドラフトはなかなか稀有です。1~3位を即戦力投手で埋めた楽天と広島の指名が際立っているという印象を受けます。
野手に目を移しましょう。
高卒野手は1,2位で3人が指名されています。17~19年ドラフトにおいて、高卒野手の入札が複数見られて1,2位だけでも5人以上の高卒野手が指名されたことを加味すると、2020年ドラフトは近年のトレンドに逆行したと言うことができます。
大社に関しては、社会人の野手が上位指名を受けないことに驚きました。走力・守備力が高い選手に比べ、打撃重視の大卒野手指名が続いたのも、例年の傾向から外れているように思われます。
小話:"2016年型のドラフト"
上段では『近年のトレンドと違う!』と書きました。しかし、4年前の2016ドラフト会議では今年に近い傾向を読み取ることができます。
2016年は、田中正義・佐々木千隼・柳裕也の大卒BIG3をはじめとして投手の評価が非常に高い年でした。
さて、この年もまた上位36人のうち17人の大社投手が指名されています。
「即戦力投手重視」の年ですが、このときは高卒投手も高く評価されて4人も1位で指名されました。
投手の大豊作年でしたが、大社野手も好調。センターラインを中心として走・守、そして大山・田中のように攻撃力をも備えた野手がザクザク出てきた一方で、高卒野手の1,2位指名がゼロという特異点になっています。
それではここで、近5年間の野手ドラフトを掘り下げてみましょう。
2016年ドラフトでは、即戦力の投手に加えて吉川・京田・石井のように大社ショートが高く評価されました。
2017年には清宮・中村らのスラッガーが出現。2位岩見、3位大城のように大社野手も長打力に評価を重く置かれています。
2018年は根尾・小園・藤原を筆頭にセンターラインが注目を集め、野手の上位指名が盛んになりました。近本・中山・伊藤のように「打てる大社野手」が予想より早いタイミングで呼ばれたように思います。
2019年のドラフトでは”目玉”の野手が不在でした。……が、そんな中で石川昂弥が入札公言され、まさかの3球団競合が起こり森の入札、小深田・佐藤の1位指名も相次いで「野手重視」の指名が続いたのです。
「3年ぶりの投手重視ドラフト」
2020年ドラフト会議は、こう表現することも出来そうです。
下位指名を受けた選手の分析
支配下指名の下位を見てみましょう。
全38人のうち投手が18人。年齢層では高卒/大・社卒で19人ずつとバランスがとれています。
投手重視は変わりませんが、大卒/社卒の投手は11人に留まります。高卒1年目の行木や高卒社会人の池谷もいるため、年齢的な比重はさらに若年寄りです。(上記画像中では、未成年の行木を『高卒投手』と同じカラーで括っております)
野手の方では社会人卒野手がかなり下の順位で初めて指名されています。
「素材型投手獲得と野手の穴埋めを目的とした下位指名」
そんな風に表現できると思われます。
さてさて次は育成指名です。チームごとに指名数の差が激しいため、折り返しウェーバーが一巡する2位指名までを振り返ります。
合計21人のうち15人が投手。野手の守備位置割合では、捕>内>外と支配下から大きく変わりました。
年齢的には高卒:大卒/独立リーグ出身がほぼ同数となっています。
企業選手の育成指名が禁じられていることもあり、即戦力の確保というのは考えにくいところ。支配下の下位指名で行われた「素材型の補充」が「投手寄り」で画策されたと見るべきでしょう。
全体傾向の総括
ここまでの全体傾向をまとめます。
1~3位指名:「即戦力投手重視」の流れ。大社卒指名・投手指名が多い。
4位~指名:「高卒重視と野手補強」の並立。高卒指名がやや多め。投手と野手はほぼ同数で、大社卒野手の指名が増える。
育成指名上位:「投手重視」の流れ。高卒・投手指名が多い。即戦力とは言い難いものの、大卒投手を中心とした流れは支配下上位と同じ。
"勝ち組"はどのチームなのか
と、いうわけで。以下のような指名に近ければ近いほど、その球団は「ドラフトの流れを読みきった」または「流れに乗った」と言えるわけでございます。
モデルケース
1位:大社投手/野手
2位:大社投手/野手
3位:高卒投手/野手
4位:高卒投手/野手
5位:チームに足りないポジションの大社野手/素材型投手
6位:チームに足りないポジションの大社野手/素材型投手
(※1,2位で大社投手を1人以上、5,6位で野手指名1人以上が更に望ましい)
ここで、全体指名をもう一度見回して……。『完璧に』とは言わないものの、上記の指名とかなり適合している上に育成指名を含めてもドラフトの流れを巧く掴んだ球団がありました。
発表します。2020年ドラフトで最も上手く立ち回った球団は"ここ"です。
唯一、くじを2度外したヤクルトが"勝ち組"となりました。
ここの指名ですが、ドラフトの流れうんぬん以前にどの球団に当てはめても悪くない指名であると思えます。木澤・山野と奪三振力に優れた大学生投手を獲ったことに加え、指名された野手に"個性の強い"キャラクターを揃えたことも評価できます。
「強打のキャッチャー」「強肩の遊撃手」「超俊足の中堅手」
と、全員センターラインであることも心強く、遊撃・中堅とチームにフィットしていることもプラスポイントです。
"流れ"のみならず"選出"も兼備したヤクルトスワローズこそ、2020年ドラフトで最も評価されるべき球団だと言えます。
巨人・中日・ロッテの上位ドラフト球団。そしてDeNAも近い傾向が見えます。
巨人は手術済みの大卒投手を、中日は即戦力との声が複数方面から聞かれた高卒投手を指名して「即戦力投手」+「準・即戦力投手」の組み合わせで1,2位指名を形成しました。ロッテ、DeNAは2,3位でセンターラインを補強しつつ下位指名で高卒強打者を獲り、これも2つ併せてドラフトの流れに沿う指名となっています。
コロナウィルスの影響だったのでしょうか?
最も手堅い補強点である大社投手を固めつつ、情報不足をものともしない「好素材の高校生」+「補強ポイントに手堅く刺さる大社野手」をどこかで併せて指名する戦略を採った球団が、結果としては2020年ドラフトを"読み切った"と言えることになりそうです。
というわけでおめでとう!!
アナタたちがドラフト会議の"勝ち組"です!!!!
というわけで結論。今回のドラフトで上手く流れを読み、指名したという点で12球団の序列を作るとこんな風になります。
◎ ヤクルト
○ 読売・中日・ロッテ・DeNA
● 阪神・楽天・広島・日本ハム
△ ソフトバンク・オリックス
▽ 西武
個人的には、●認定した4球団には全部◎をあげたいとも思います。
初回入札にみんな成功していますし、「大社野手固めを投手で支える」形の阪神・日ハム、「徹底して即戦力投手」の楽天・広島どれもテーマが見えて好感の持てる指名です。
しかし、この流れと逆行したのが高卒野手中心に進めたソフトバンクとオリックス。また、大卒野手を中心にする西武です。
とはいえ、これは"今回のトレンドに沿わない"という見方であって4球団が"負け組"ということではありません。指名した選手の評価が逆転する可能性は当然存在いたします。
特に、西武に関して。
低評価をしたものの『過去ドラフトとのバランス』という視点では良いドラフトだと思います。若手投手がある程度奮闘し始めたこと、近年のドラフトで1,2位投手指名が続いたことを考えれば十分納得できるものです。
この年だけで評価しても、そこそこ手堅い日本ハムと傾向の近いドラフト指名のように見えます。将来的に渡部、山村あたりがスタメン争いできるほどに育てば一気に評価も上がるでしょう。
おわりに
さてさて。以上のように"勝ち組"チームを判定させていただきました。
いかがでしたでしょうか? 今回は「ドラフトの流れ」という点を主として考察しましたが、くじを2度外したヤクルトがトップ評価へ躍り出るのは、我ながら驚いた所です。
ハズレ1位の木澤投手は、イニング間で乱れがちな(150キロを投げる)変化球投手です。ちょっとギャンブル気味なピッチャーともいえますが、地力としては入江・鈴木といった他の1位指名と同格評価の投手でした。
くじが外れても高評価に違和感がないのは、そういった大卒投手の豊作事情もあったのでしょう。
最後に、全体傾向をおさらいしてこの記事の結びとします。
2020年ドラフト会議は、即戦力投手へ評価が偏る特異傾向となりました。
この流れは16年ドラフト会議を彷彿しますが、当時ほど、高卒投手や大社野手が評価されたわけじゃありません。野手中心の14年や15年などとも異なり、ここ10年間でもかなり"特殊"なドラフトだったといえるでしょう。
投手は『東京六大学』『東都大学』『社会人投手』のように大都市圏で活躍する人材が評価されました。
野手は『若い高校生』『どこまでも飛ばす』『足が速い』『肩が強い』など、将来性と一芸が高く評価され、守備型や実績のある大社野手は前評判ほどの評価を受けませんでした。
"コロナウィルス下で開催されたドラフト会議" 最後に笑うのは誰か?
選手各人の奮闘と活躍を祈ります。お読みいただきありがとうございました!
引用
(※サムネ画像 https://number.bunshun.jp/articles/-/845607 より)
(※文中画像 https://baseball.yahoo.co.jp/npb/draft/tracker/ より)
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