「顧客ライフサイクル」の見える化のすすめ
こんにちは。Takayuki Suzukiと申します。
私は現在、ITサービス事業会社のデータアナリストとして、プロダクトやマーケティングのKPI設定支援・ダッシュボード構築・アドホック分析等を担当しております。
note初投稿となる今回、サービスやプロダクトのKPIを設定する上で絶対に欠かせない「顧客ライフサイクル」の見える化について書いてみたいと思います。
「顧客ライフサイクル」とは
「顧客ライフサイクル」とは、人が会社や商品を知り、比較検討して購入し、購入後もリピート購入してくれる顧客になってくれるまでの顧客のアクションや状態を流れで表したものです。
どんなビジネスにおいても、エゲージメントした顧客になってもらうまでに取ってもらいたい望ましいアクション(反対に望ましくないアクション)がいくつかあるはずで、それらのアクションを流れとして繋いでいくと顧客ライフサイクルが出来上がります。
具体的に顧客ライフサイクルを図示してみます。
上図は、フリーミアムモデルのSaaSビジネスを例にした顧客ライフサイクルです。わかりやすさを重視したためかなり簡略化しましたが、顧客の取りうるアクションや状態を矢印で繋いでいくことで、プロセス全体がサイクルとして循環するようになっています。
「顧客ライフサイクル」を見える化するメリット
1.部門や組織を超えて、顧客にフォーカスできる
事業が拡大するにつれてマーケティング・セールス・プロダクト等の機能毎の組織へと分業が進んでいくと、どうしても組織毎の最適化が進み、顧客の捉え方もその組織の守備範囲で考えがちになります。
しかし顧客ライフサイクルは顧客のアクションや状態がベースとなるため、組織の守備範囲や捉え方は全く関係無くなります。そのため組織を超えて顧客にフォーカスでき、他組織とコミュニケーションする上でも共通のものさしとして活用できます。
2.KPI設定が簡単になる
顧客ライフサイクルは、顧客のアクションや状態をプロセス化し、エンゲージメントしてくれた状態となっていただくまでを流れを見える化するものですので、それらのアクションや状態を数値化したものが自然とKPIの候補となってきます。
3.課題を見つけやすくなる
設定したKPIをモニタリングしていると数値が異常に上がったり下がったりするケースが発生しますが、顧客ライフサイクルを見える化されていれば、対象となる指標の先行ステップが明確になっていますので、要因特定の的を絞ることができます。
見える化のポイント
1.プロセスとサイクルを意識する
顧客のアクションや状態を過不足なくプロセスとして繋げていき、エンゲージメントしてくれた顧客がリピート購入や新たな顧客を呼び込んでくれるようなプロセスを組み込み、全体がサイクルのように循環するようにします。
プロセスとサイクルを意識するためのフレームワークとしては、佐藤義典氏が提唱する「マインドフロー」や、Dave McClure氏が提唱する「AARRRモデル」が参考になります。(記事末尾に参考図書を載せておきます。)
尚、顧客ライフサイクルと似た用語で「カスタマージャーニー」があり、こちらは顧客が辿るプロセスを旅(ジャーニー)に見立て、顧客の行動・感情・タッチポイントをそれぞれ流れとして記載していく手法です。「顧客ライフサイクル」を記載する際は「カスタマージャーニー」のエッセンス(顧客の行動とプロセス)は使いつつ、ライフサイクルの名の通りサイクルとしてアクションが繋がるようにするのと、望ましくないアクションも同時に記入していきます。
2.「箱」を数値、「矢印」を遷移率で表せるようにする
プロセスを見える化する際、顧客のアクションや状態を「箱」で表し、前後のステップを「矢印」で繋いでいくことになりますが、可能な限り「箱」を数値、「矢印」を先行ステップから後続ステップへ遷移した率で表現できるようにします。
これは見える化のメリットで記述したように「KPI設定を簡単にする」ためです。
3.全体を1枚の絵にまとめる
出来上がった顧客ライフサイクルは、全体を1枚の絵にまとめます。顧客ライフサイクルはそのサービスやプロダクトに関わる人全員が把握しておく必要があり、1枚の絵になっていれば共有や引用が簡単になります。
ステップが細かくなりすぎて1枚にまとまらない場合、一部のステップを簡略化してまずは全体が1枚にまとまるようにし、簡略化した部分のステップにフォーカスしたプロセスを別途見える化するようにします。
まとめ
今回は「顧客ライフサイクル」について書いてみました。
私も現職のサービスについて顧客ライフサイクルを書いてみましたが、顧客アクションのステップを抜けもれなく、1枚にまとめるのはかなり骨が折れました。ただ1度作ってみると、ユーザーのアクション理解に非常に役に立ちますし、自分の作った顧客ライフサイクルの絵を他部門のメンバーに展開してみたら「こういうの欲しかった!」と非常に喜んでくれました。
サービスグロースや分析に携わっている方々はぜひ顧客ライフサイクルを書いてみていただければと思います。
参考図書
6つのビジネスモデル(ECサイト・SaaS・無料モバイルアプリ・メディアサイト・ユーザー制作コンテンツ・ツーサイドマーケットプレイス)の顧客ライフサイクルが具体的に図示されています。
各ビジネスモデル毎にKPI設定のポイントもわかりやすくまとまっており、KPI設定や分析に携わる方は必読の書です。
マインドフローは、認知・興味・行動・比較・購買・利用・愛情というステップ毎に顧客に取ってもらいたい行動と、ステップを進まない理由を明文化し、顧客を次のステップへ進めるための打ち手を考えるためのフレームワークですが、本書はマインドフローの詳細な説明と事例が豊富に掲載されています。
AARRRモデルは、Acquisition(獲得)・Activation(活性化)・Retention(定着)・Referral(紹介)・Revenue(収益)というサービス全体をユーザーの行動に合わせた5段階のステージに分け、各段階の離脱率をファネル(ろうと)の形で整理したフレームワークです。本書ではARRRAモデルというAcquisition(獲得)を最後のステップに持ってきたフレームワークを推奨していますが、各ステップで設定すべき指標や施策が丁寧に説明されています。