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口腔ケアの歴史と実際

口腔ケアの歴史と実際

わが国における口腔ケアという用語は、1970 年頃より看護教育のなかで使われ始めた。その口腔ケアという用語は、外国語の"Mouth care"から由来している。

1943 年に米国で出版された『The Pharmacological Basis of Ther- apeutics』(薬物療法学の基礎)で、"Mouth Care is an important nursing detail" "cleaning of the teeth and tongue"と紹介されている。

コロンビア大学歯学部の教授 Austin H. Kutscher(Oral medicine・死生学の第一人者)は、終末期患者における口腔ケアの重要性を説き、歯科医師・歯科衛生士の積極的な参加を呼びかけていた。

口腔ケアの重要性を初めて世に知らせ、それを定義した。それまで考えられていた健常者に対する歯科 治療の枠を越え、幅広い患者に対して口腔の健康を保つ方法を提供することが歯科専門職の使命であると提唱している。(『The Terminal Patient: Oral Care』、1973)

2015年に日本歯科医学会は「口腔ケアに関する検討委員会」を設立し、「口腔ケアとは、多職種がおこなう口腔健康管理の一つであり、歯科専門職がおこなう口腔健康管理は口腔機能管理と口腔衛生管理であり、歯科診療行為を含むものである」と提言した。

これは今まで曖昧であった口腔ケアについての見識を整理したものであり、歯科専門職が行う口腔健康管理は治療行為を含むもので、日常生活で行われる「整容・歯磨き」などとは一線を画することを明確に示した。

近年、口腔健康管理の重要性は広く知られるようになり、特に口腔衛生管理を行う歯科衛生士への期待は大きくなっている。

病棟に勤務する看護師に対して行ったアンケートでは、療養型の病院(医療療養・介護療養)に勤務する看護師は、約 8 割が歯科衛生士の病棟勤務を望んでいるという結果が得られている。(日本慢性期医療協会:看護師の他職種との協働に関するアンケート集計結果報告書、2017)

歯科診療室を出た後も、患者に寄り添う口腔健康管理をわれわれは提供し続けることが重要である。

論文

【掲載誌】老年歯科医学
【タイトル】口腔ケアの歴史と実際
【DOI】https://doi.org/10.11259/jsg.35.8

論文著者の阪口英夫先生(歯科医師)は、高齢者歯科医療、病院歯科の専門家であり、日本老年歯科医学会の理事・指導医・専門医です。医療法人永寿会陵北病院で副院長、摂食嚥下支援センター長をされています。


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