見出し画像

「将棋次の一手」初級者でも分かる!藤井聡太棋王の凌ぎ

(初めに)分かりやすくするため後からいろいろ気付くので、投稿してから数日程度は細かく加筆修正していきます。
2025年2月22日 第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局
主催:共同通信社、北國新聞社など観戦記掲載の21の新聞社、日本将棋連盟
特別協賛:コナミホールディングス
協賛:Calorie Mate
先手 増田康宏八段
後手 藤井聡太棋王

 下図は、先手の増田八段が4八にいた飛車を▲5八飛車と寄った局面です。飛車を一つ寄って3七の馬から逃げました。
 ここまで先手の苦しい展開が続いていましたが、▲5八飛車は増田八段の渾身の勝負手で、次に▲4七金~▲5一飛成の一気の寄せを狙っています。後手はこの▲4七金~▲5一飛成を許してはいけませんが、ここで藤井棋王のギリギリの凌ぎがありました。この凌ぎが今回の問題です。

<次の一手問題>
 後手、藤井棋王の3手一組の凌ぎを当ててください。

問題図 難易度は7冠

***

では解答です。

正解
「▲6五歩△4七金▲7三馬」

解答図

 一度△6五歩を入れて、▲4七金を指させてから「△7三馬」と引いたのが凌ぎの好手順。
 引いた7三の馬を5一の地点に利かすことによって、先手の狙いである▲5一飛成をギリギリのところで防いでいます。
 途中△6五歩(下図)と”攻めの手”を入れることによって局面を複雑化

これを▲同銀と取ると△9九角成り、または△8八成銀(下図)があるので(▲同金は同角成)、この△6五歩は取れません。

変化図

 そこで狙いの▲4七金(下図)ですが

その瞬間「△7三馬」(下図正解図)と自陣に馬を引き寄せたのが白眉の一手。

解答図

 この馬引きによって▲5一飛成を防ぎつつ、△6六歩と銀を取るプレッシャーも依然として残り、先手にとって不安の大きい局面になっています。
 以下▲2三歩△1二金(同金ではない!)▲6五龍(下図)と憂いの歩を取りましたが(とはいえ龍を引くようではつらい)

△4六歩▲4八金△5三桂(下図)が、5筋の飛車の利きを止めながらも、6五の龍に当てる攻防の自陣桂。ただ受けるのではなく、相手の攻め駒を攻める攻防の受けで絶えずプレッシャーをかけ続け

増田八段は▲5四龍△4三銀▲4四龍(下図)と龍を切って敵陣に攻め込んでいきましたが

藤井棋王の正確な凌ぎは一糸乱れず、最後は的確に先手玉を寄せ切り、藤井棋王の勝利となりました。

 棋譜は下記参照(無料)。

  棋王戦公式ブログから、本記事で参考にした、終局直後インタビュー記事の引用です。

(引用始め)

(藤井聡太棋王へのインタビュー)
―― 終盤戦に入ってかなり熱戦だったのですが、どのような感想をお持ちですか。
藤井棋王「時間がなくなってからは、どうなっているかわからなかったのですが、▲4七金(下図107手目)と寄る手を許してしまったので。あの辺りは、負けになる順があってもおかしくないかなと思いながら指していました」

(増田康宏八段へのインタビュー)
―― 終盤は反撃に転じられて、かなり追い込んだように見えましたが。
増田八段「▲4七金(107手目)と寄った手が、遊んでいた飛車を通して感触がいいと思ったのですけど。△7三馬(下図解答図)と引かれて、そのあとも手は進んだのですが、明快な決め手がわからなかったので。そんなによくなってなかったのか、自分が手を逃がしているのかはわからないですけど。うまくいけた、という感じはしなかったですね」

解答図

(引用終わり)

 勝負手▲4七金を境になにか事件が起きそうな気配を感じましたが、藤井棋王の正確無比な凌ぎは、増田八段の勝負手を実らせることはありませんでした。 

 ちなみに、この▲4七金を△同馬(下図)と取れば

変化図

▲5一飛成(下図)から後手玉は頓死(19手詰め)、大逆転で先手の勝ちとなります(おそらくプロは一瞬で詰みは分かるので取ることはないでしょう)。

変化図

(詰み手順)
▲5一飛成△3二玉▲4二龍△同玉▲3一銀打(下図)

変化図

△3二玉▲4一龍△2三玉▲2二銀成△同玉(下図)

変化図

▲3二金打△1三玉▲1一龍△1二金打▲同龍(下図)

変化図

△同玉▲2二金打△1三玉▲1二金打(下図)までの19手詰め。

変化図

(了)

 棋譜利用について、以下の棋王戦の棋譜利用ガイドライン
「営利を目的とする「棋譜の利用」については、第6項記載の要領でお申し込みください。
Q)「営利を目的とする」とは。
A)閲覧への課金や広告掲載を行うなど、棋譜利用により直接または間接に収益化を図ることは「営利を目的とする」ものとみなされます。」
を参考にしました。
 「閲覧への課金」(有料記事にする)や「広告掲載」など、この記事による営利を目的としない形で記事にしています。

(追記)
 本記事の投稿後に知ったのですが、「対局後」の棋譜利用に関して、知財高裁の判決(事実上囲碁・将棋チャンネルの敗訴)が出たようです。この前出た大阪高裁の判決(囲碁・将棋チャンネルの勝訴)では
・リアルタイム盤面有り放送は違法
・対局後の棋譜利用に関しては不明?
今回の知財高裁の判決では
・対局後の棋譜利用は合法?(棋譜利用ガイドラインはどうなるの?)

 今回(と前回)の棋譜の記事を書くにあたって、「棋譜利用ガイドライン」と「大阪高裁の判決文」を初めて読みました。とりあえず続報を待ちます。


いいなと思ったら応援しよう!

中学でもわかる浪漫数学
数学・物理をわかりやすく。チップは書籍の購入費用に使わせていただきます。 購入したい本「初学の編集者がわかるまで書き直した 基礎から鍛える量子力学 基本の数理から現実の物理まで一歩一歩」