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また食べさせて。日常を崩壊させたフィンランドのチーズの存在。

あぁ、もうおわっちゃう…


夫の手元に家族全員の視線が集中する。

その食べ物は当初、高さ15センチを超える筒状の物体だった。それが今じゃ3分の1以下になろうとしている。

専用のスライサーで薄くそいで食べるレモンイエローの食べ物。

それは


フィンランドのチーズ、ケルマユースト。



お世話になったk-supermarketより



日本で待つ家族のためにいろいろなフィンランドのお土産を買ってきた。

ムーミングッズはもちろんのこと、フィンランド土産の定番Fazer のチョコレートマリメッコのペーパーナプキンや鍋つかみ、ジップロックに入れて密輸?してきたアアルトカフェのシナモンロールなど、有名どころは押さえたつもりだ。

アアルトカフェのシナモンロール。手のひらサイズの大きさ。


でも、ムーミンにも北欧雑貨にもあまり興味がない夫は


ムーミンしかないの?


と半笑いだった。
(もちろん、開き直って「そうだよ!!!」と鼻息荒く伝えました)


そんなムーミングッズを共に愛でてはくれない夫の心を鷲掴みにしたのは、チョコレートでもシナモンロールでもなく、チーズの塊だった。

友人の家で初対面。



Kerma Juusto ケルマユーストというこのチーズ。

Kerma はフィンランド語でクリーム。Juustoはチーズを意味する。

直訳するとクリームチーズになるけれど、日本で売られているクリームチーズと違って柔らかくはない。



ケルマユーストの食べ方はいたって簡単。

思い切ってかぶりつく!!

のではなく、専用のスライサーで上からそいでいく必要がある。

この専用スライサーは、なんとフィンランド国内でしか売っていないらしい。


「あんまりおすすめではないけど」と言いつつ、きゅうりもスライスしていた友人。





友人曰く、イタリア旅行の際、スライサーを自宅に忘れたのでイタリアで買おうとしたら売ってなかったらしい。

「他のヨーロッパ諸国でもきっと売ってないわ」と言っていたが、本当のところはどうなんだろう。


というわけで、ケルマユーストを日本で食べるには、専用スライサーが必要なので、フィンランドの老舗メーカー「フィスカース」のスライサーを買った。(フィスカースのハサミは切れ味抜群で、世界的に知名度が高い)



このケルマユーストとの出会いは、フィンランドに着いた翌日の朝ごはんだった。

友人が冷蔵庫からドンと出してきた1キロのチーズの存在感はなかなかのもの。こんなにでかでかとしたチーズが小分けにされずに塊で売っているなんて、さすが乳製品大国フィンランド。日本のスーパーではなかなかお目にかかれない。

チーズコーナー。どでかい塊、見えますか?



どうやって食べるんだろう?と見ていたら


円柱状のチーズの上のフタをとり、周りのパッケージを下に向かってはがしていく。

イメージとしては魚肉ソーセージをむく感じといえばいいだろうか。

(娘はスカートみたい!と言っていた。タイトスカートを脱ぐ感じにも似ている)

インスタで検索したらこんなリール画像が出てきた。

一種のパフォーマンスみたいで、食べる前からワクワクしてくる。




薄くそいだケルマフースト、きゅうり、ハムを黒パンの上にのせて食べる。どれもシンプルな味なのに、すごくおいしかった。


切ったチーズと輪切りのきゅうりと、ハム1枚と黒パン。料理というより、ただ切っただけ。それなのにすごく満足感があった。

料理は火を使って調理するものという概念があったからだろうか。


こういうシンプルなものが食べたかったんだなぁと、食べてから思った。





このチーズのおいしさを家族にも味わってほしいと思い、1キロのチーズを保冷バッグに入れて、帰国した。

そして、すでに書いたように夫も子どもたちも、なくなるのが惜しいという気持ちになるほど、ケルマユーストのおいしさにハマった。




しかし、ここで問題が発生した。



こんなに好きなのに、もう手に入らないのだ。

そう、日本では買えない。

フィンランドに行かないと手に入らないし食べられない。

あのAmazonですら売ってない。
(検索したらなぜかアウトドア用品が出てきた)

Googleで検索して出てくるのは、フィンランド語での紹介のみ。世界のチーズというHPを見ても出てこない。






なんて難しいものを好きになってしまったんだー!!









というわけで、あと3センチほどに減ってしまったケルマユーストをどんなふうに食べ切るか悩んでいる。



好きなものに出会えた幸せと、それを失う悲しみに挟まれながら、つい冷蔵庫を開けてしまう私たち。


ケルマユーストそのものは3センチほどまで減ってしまったけれど、その存在は反比例するように、ますます高くなっている。






これは最後の日の朝ごはん。ケルマユーストはないけど、ヨーグルトを食べた。乳製品の種類が半端ない。

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