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聴いたよ新譜2021 vol.13

お世話になっております

わたくしごとながら相変わらず忙しい日々を過ごしておりまして、お盆くらいからの記憶があんまり無いくらいです。自分が何を感じ、どう過ごしてきたのかを振り返る間も無く、目の前のことをひたすらに繰っていくような日々…そんな日々なのにも関わらず音楽だけは聴いていたんです。
文章化にむけて考えて噛みしめて聴くほどの余裕はなかったのですが、仕事に没頭する最中や外回りの最中に音楽を流しまくるということをしていると「おっ、この新譜すごい!この新譜すごいって思ったことをアピールしたい!」と思い立つような名作もしばしばありまして…ムラはありつつも月中で更新させてもらおうかと思います。

かつてご自慢のCDをビレバンで買ったウォールポケットに飾って後輩に見せつけるような僕でしたが、現在はサブスクリプションという文明の利器に完全に身を委ね、定額で新譜を貪り食う毎日。本当に感謝です。

そんなわけで今回は9月の新譜を…
と言いたいところなのですが、8月忙しくて聴けていなかった、もしくは認知していなかった作品もなかなかありまして…8月後半くらいならまだ新譜ってことでそんな作品も含めて僕がここ最近とても好きで聴いているアルバムをご紹介したいと思います。

01. Cleo Sol - Mother

イギリスを拠点に活動するSSW、SAULTのシンガーとしても話題になりましたが最近ですとLittle Simzのアルバムにて客演していたことも記憶に新しいですね。そんな彼女が8月にリリースしたアルバム「Mother」ですが、とても素晴らしい作品でした。

温かく爽やかなサウンドに耽溺しつつ
アットホームな聴きやすさもあり…
細部に至るまで「センス」と「愛」を感じる傑作でした

オーガニックな雰囲気漂うUKソウルの感触は70年代を思わせるような室内感のある録音で作られており、生感のある歌声と温かみのあるソングライティングが耳にやわらかく寄り添ってくれます。しかしながらサウンドの方向性はレトロライクに寄りすぎない絶妙な塩梅となっており、ビートの強弱やスッと抜けるような光のある音はしっかりと現在の音として響いており最高すぎました。気づいたら何周もしてしまうような素晴らしいアルバムだと思いました。

02. Indigo De Souza - Any Shape You Take

ノースカロライナのソロアーティスト。作品ごとにバックバンドは変えるらしいが今回2作目です。
禍々しいカバーアートからなんとなく敬遠してしまいましたが今回聴いて一気に好きになりました。

ドリーミングなミニマルさと潰れたギターサウンドがオルタナ・インディ好き好き欲をこれでもかと刺激してくれます

一曲目からアメリカらしいあたたかいメロディ、ドリーミングな演出、オートチューンなボイスエフェクト、これは良質はインディポップだな〜などと思って聴いていくと次の曲からはギャンギャンの潰れたファズギターが鳴るオルタナインディの空気感を持ったインディポップ。これは…!と思うとその後はローファイな楽曲なども絡んでいき…生っぽさと電子っぽさがインディロックの要素で綺麗にパックされている「インディらしさ」の最高に気持ちいいアルバムとなっていました。あの轟音とミニマルなサウンド。僕たちのあの頃熱狂したあのサウンドが、今の形で流れてくる。これこれ!が詰まったアルバムです。

03. My Little Airport - Sabina之淚

香港のインディポップユニット、実は今作で初めて知ってほとんど未知なのですがとても良かったです。

UKベッドルームポップライク
ソフトで寄り添うサウンドに広東語
この組み合わせがなんとも味わい深い

まずカバーアートがカッコいいっていうのを先に上げておきたいです。Dinosaur Jr.のGreen Mindと同じ理由でこの感じのジャケに弱いんです。内容はまさにカバーアート通りのソフトなベッドルームポップで、親近感が湧く温かい作りです。このミニマルなサウンドに広東語で優しく歌いかける感じがとても聴き心地が良く、新しいな〜なんて思いながら聴いていました。
アルバムの楽曲数は多いのですが、個人的には後半の楽曲はさらに落ち着いたトーンのものが多くより好みでしたね…全体通して残業中などに聴いていて、青さと親近感とあたたかさでなんだか泣けてきてしまった作品です。


04. SUUNS - The Witness

カナダ、モントリオールのネオ・サイケデリックバンドSUUNSの新譜です。あまりTL等で目立った盛り上がりはありませんでしたが非常に染み込んでくる作品でした

単調なギターもしくはミニマルなシークエンス
それらがどんどん溶けていき
電子ドラムがジワジワと前に出る
そんな不穏な気持ちよさがずっとある

パッと目立つ作品ではないかもしれませんが、楽曲ごとに音像がグラデーションのように変化していく流れが気持ちよく、記事等では「煙」をメタファーに用いていましたがかなり的を得ていると思いました。シンプルなシークエンスからドラムがジワジワと浮き出てきたり、また逆にタイトはドラムから最後はギターストロークがぐぐぐっと前に出てきたりとミニマルなエクスペリメンタルならではの音のグラデーションに酔っていく作品だと思いました。とても好きです。

MVも不穏で素敵でした…!


05. Spirits Having Fun - Two

シカゴのロックバンドSpirits Having Fun。バンド名の通り陽の雰囲気を纏うバンドではあるのですが今回初めて知りました。先に言いますと結果素晴らしいアルバムでした…

本来緊張感を産むリフ・ブレイク・転調
これをひたすらにユルく、楽しくしていて
この感じがとてつもなく気持ちいい
気だるい朝に聴きたいアルバムです


マスっぽいギターリフ・ブレイクの展開が軸となりつつそのテイストはlo-fiライクな「ユルい」テンションで行われており、アルバム通してソフトで聴きやすい印象でした。おっテクい…!と思わせてからの外しも絶妙でいい意味での緊張感を奪いただただ優しい空気と小技の効いたバンドサウンドを楽しむことができます。usインディらしい歪みやサイケな単音リフなど、これもまたインディ好き好きおじさんの心に刺さる素晴らしいアルバムでした。

MVも非常にユルくて最高です…

06. Little Simz - Sometimes I Might Be Introvert

もはやUKシーンを代表するカリスマであるラッパーLittle Simz。Hip Hopにも好き嫌いが多い僕としては最初敬遠しておりましたが、周囲の絶賛に押されて今回聴いてみたところ驚きました…バケモンアルバムすぎます。この作品に強いパワーをもらって月中でこのnoteを書く気になったと言っても過言ではないかもしれません。

圧倒的なセンスと技術
カルチャーを牽引する今を型どる作品
とにかく一聴して違いを感じる作品でした。

1曲目のスペクタクルな展開は物語のプロローグのようにドラマチックで、2曲目以降でも様々なアプローチを見せてくれるのですが、トレンドに迎合せずブラックミュージックに軸足を置きつつ最新のビート感を見せてくれて、そしてなによりlittle simzのラップがとにかく素晴らしい…全体的にラップミュージック然としていながらもしっかりと軸足が感じられて、ミニマルすぎずゴージャスすぎない素晴らしい立ち位置を得た作品とも言えます。

Womanという曲ではsaultのcleo solと客演し、プロデュースもsaultのインフローが務めたりとした背景もあり、sault同様ブラックミュージックを軸としたロンドン気鋭アーティストの凄みをこれでもかと味わうことができました。

先日upされたTiny Desk Concertでは生バンドでのライブも披露しておりこれもまた素晴らしい…
Little Simz本当かっこよすぎです。

07. Human Error Club - Human Error Club Day

前作の時点から本当に情報が少なくて未知すぎるのですが、LAのバンドで鍵盤2人とドラマー1人のトリオであるということくらいしかわからない。
それでも前作を聴いた時点でジャズを起点に様々なセンスが内包されたジャムセッションらしさに心底震えたのを思い出します.

より生々しく、
アンビエントやグリッチィに寄ったシンセサウンドを暴れ回るドラムが運んでいく2枚目
また新しいジャズとカオスを見せてくれました

前作は無機質ながらキメが多く、タイトなリフとブレイクで展開をつけるマスロックのような要素も感じられワクワクさせられたのですが、今作はタメやドローン的にシンセサウンドが鳴っておりエレクトロニカ的なアプローチの上物をタイトに暴れ回るドラムが展開させていく…毛色としては掴み所が少ない印象ですが、深く潜って没頭するのにはとても良いアルバムだと思います。
是非さらに活動の幅を広げてほしいです。

08. Low - Hey What

Lowの新譜を一聴した時、申し訳ない話笑ってしまいました。ピーキーなノイズとアメリカングッドメロディが明瞭に食い合わさった時のコントラストにやられてしまったのです。

美しい歌と禍々しいノイズ
そのコントラストが次第に気持ちよく
ノイズミュージックの新境地だと思います

Lowの作品は今作で初めて聴きましたが衝撃でした。ノイズそのものも歌を邪魔しない形で、ビートがあるようで無く、ノイズのカットアップで作られたビートに合わせるように美しい歌が聞こえてくるんです。その歌に関してもノイズにMIXしているというより歌単体で明瞭に前に出てくるような録音となっているのも妙で、歌っている人にはこのノイズが聞こえていないかのような。そんな空気感すら感じる作品でした。まさにノイズミュージックとしての新しい形…面白さとしても音楽的魅力としてもすごいところにいるアルバムでした


秋っぽい空気になってきましたね

とりあえず現状聴き込んで文章化可能な範囲で7作品選ばせていただきました。上半期にかなりパンチのある作品が集中しておりましたが、夏から秋にかけてたくさん雰囲気の良いアルバムがリリースされており今後も楽しみで仕方ない状況です。

僕の住む地域では気温差が日毎、時間ごとに激しく忙しい現状としてはとてもきついのですが…素敵な音楽を聴きながらまた過ごしていきたいと思います。

近いうちに2000〜2005年僕が聴き狂ったアルバム達という懐古企画をやりたいなあと思っています。20枚くらい。これは本当にやりたいと思います…たまには有言実行しよう。

そんなわけでいまだ混乱さめやらぬ昨今ですが、素敵な音楽をリリースしてくれているアーティストの皆様に感謝しつつこれからまた残業しましょうかね…ありがとうございました

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